2-02 兄と妹の公都での市民生活 1/3
今日は昼過ぎまでだらだら寝て過ごす予定でした。
でもアクアトゥスさんの前でそんなことしたら、自明の理ってヤツでえらいこっちゃです。
しょうがないので一緒に洗い物して、外が暖かくなるまでお茶をして、妹君(仮)の話を聞かせてもらいました。
なにせ俺と違ってアクアトゥスさんってば個性的です。
だから友達が出来ないんじゃないかと、兄(仮)相応に心配していました。
でもそれも杞憂だったみたいです。
彼女が冒険科に移ったのはこれ正解で、聞く限りじゃとても面倒見の良い女の子がペアになってくれていました。
とってもすばしっこいスカウトさんらしいです。
スカウトの知り合いは少ないので、将来有望そうなら紹介してもらおうとしましたが……それはなんかダメらしいです。
「アトゥは兄様のことが大好きですが、どうしても一つだけ許せないところがあります。兄様は天然の女ったらしです。そんな人に……お、おともだちを紹介なんて、で、出来ません……」
「あーはい……なるほどね。……いや、いやいやいや、いやちょっとソレおかしいし、俺だってほら、貴族科にいた頃はアルフレッドとロドニーさんとの間で[輝くホモの大三角形]とか呼ばれてた頃だってあるしー?」
そりゃまあ……他の科での生活を振り返ってみれば……振り返れば女、女、女の子だったのも認めるけど。
そ、それは友情だし!
「それに……それにもし、もしあの子が兄様のことを好きにでもなったら……アトゥは……」
なんか大変な妄想に発展しちゃたみたいです。
片手でテーブルクロスを握りしめて、もう片手でティーカップをカタカタ震え鳴らします。
ああなるほど、一歩しくじればヤンデレルートみたいな……や、シャレにならんし!!
「日も暖かくなってきたし、そろそろ出かけようかアクアトゥスさん」
危ない結論出す前に話題をそらします。
イスから立ち上がってアクアトゥスさんの手を引いて、一番大きな窓からうららかな陽光輝く休日の姿をお見せします。
「兄様とデート……」
「そうねー、そうかもねー……まあその、買い物に付き合ってよアクアトゥスさん」
うん、今日も妹(仮)さんってば乙女回路全開っすな。
まあいいやそういうことにして出かけましょう。
「はいっ、どこまでもお供します……! 黄泉の河原の果てまでも……」
「うん、なんか怖いからその表現は止めようねー」
キラキラと陽光射し込む休日世界。
俺とアクアトゥスさんと買い物に出発しました。
・
買い物といっても雑多です。
食料やら日用品、雑貨をあちこちで買い込んではアトリエとの間を往復しました。
新生活がテーマなので、ほうき、ちりとり、雑巾など清掃道具も調達します。
店を始めておいてなんですけど、ああそういえば持ってませんでした。こーいうの。
つまり一度も掃除してません。
だってほら、道具無かったんだししょうがないよねー。
あとはカーテン。
あの老夫婦が残してくれたものも二組のみで、いくつか増やさないとちょっと生活しづらいです。
それとカゴやら、深鍋やら、フリルのついたかわいい枕やら。
え、枕?
なにちゃっかり自分の分追加してんのアクアトゥスさん?
あれー、歯ブラシ二組もいらないしー!
あ、うん……ああ……おっかしぃなぁ。
兄妹生活前提の生活雑貨がドシドシ増えていきます……。
あ、ヤバイ、生活乗っ取られる……。
でもまあさすが女の子です。
俺一人であれこれ街をさまようより、ずっと的確で素早く買い物が進んでいきました。
……まあ、余計なものも増えてくんですけど。
あっ、アクアトゥスさんソレ止めてっ、ペアのマグカップとか絶対店の人に誤解されるからっ!
「大丈夫……兄妹ですから……」
「あら若いのねウフフフ……兄妹でかけおちかしら~♪」
ってこの店、この店主……。
「ハハハ……どうしたらそんな最悪の憶測が飛び出すんですかね……お久しぶりですフランソワ婦人……」
ここ雑貨屋・キルトじゃん。
リィンベル嬢と一緒に刻んだトラウマスポットじゃーん!
「兄様は……私を愛するあまり、実家を追い出され……記憶すら失い……。今はその抑え切れぬ渇望のままに妹を求めるのです……」
「あらあらあらあら……はぁ、若いわぁ……♪」
何ですかその微妙にドラマチックな設定は……。
「もうどうにでもして下さい……」
「あら、いいのぉ~?」
「やっぱり止めて」
たち悪いですコイツら……。
ペアのマグカップを購入して、逃げ出すように店を出ました……。




