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1-02 鑑定書無しでポーションを売り切ろう! 2/3

 それで迷宮はどうだったのかと言うと、これが露骨なものでした。

 ちょっと大げさな彫像が立ち並び、その先にポッカリと地下通路が広がっていました。


 前々から思っていましたけど、これって普通に何かの遺跡かなんかなんでしょうか。



 ・



「ではこれより第57号迷宮の探索を開始する。期待してるぞ新米」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 突入するみたいです。

 パーティーリーダーに軽く頭を下げました。


「大丈夫っス、先輩はどんな状況でもちゃっかり自分だけ生き延びるタイプっスから」

「アシュリー、その紹介の仕方はすごく感じ悪いから止めよう」

「はっはっはっ、そりゃ面白い。でもよ、月並みな話だが、勇敢過ぎるよかちょっと臆病な方がこの仕事は向いてるんだぜ。ま、がんばろうな新米」


 各員の覚悟がついたところで迷宮への地下階段を下りました。

 その内部に入場制限通りのパーティが入り込むと、待っていたと言わんばかりに灯火が点ります。

 暗黒の世界に奥へ奥へと松明の光が走っていったのです。


 何だこのケレン味。まあいいさ、さあ行こう。


「結構薄暗いっスよね。あ、先輩初めての本格迷宮はどんな気分っスか?」

「んー、普通。でもこんな多人数と潜るなんて新鮮かな。ほいウィンドカッター、バババっと」


 前衛と前衛の隙間から攻撃魔法をチョコチョコ発射します。


「あーそんなもんっスよね。むしろ最初は知らない年上冒険者と一緒に潜るってことに……自分、すごく緊張したっス」

「あーわかるわかるー。シュババッ、シュバババーッ」

「メチャメチャ余裕っスね先輩……」

「うん、アシュリーもね」


 さて目標階層は地下5Fです。

 最初の1、2Fは部隊を3つに分けてお宝探索を重視することになりました。


 3Fからはさすがに油断できないので合流して、一気に厄介になるモンスターたちをガシガシ撃破してゆきます。


 ここはなんかゴブリン帝国って感じです。

 ゴブリンとその指揮官、大型のホブゴブリンとかがウジャウジャウジャウジャと現れます。

 さすが多人数向け、この人数でぶつかり合うと何が何だかわからなくなってきます。


 なら後衛としては我が身を守りたいので、ゴブリンアーチャーを中心に狙ってバシバシ下級魔法を撃ち込んでいきました。


「しっかしやるなぁお二人さん! アシュリーはアカシャの家のエリート様だしわかっちゃいたけど……兄ちゃんもすっげーな」


 思わぬ戦力にパーティリーダーもご機嫌です。


「先輩も一応卒業生っスよ。全部で1年半しか在籍してくれなかったっスけど」


 結果、地下3Fを踏破していました。

 けれどそれだけ敵が多いと消耗もありまして、4Fへの階段部屋にて一度休憩をすることになりました。

 想定していたそうですが、ヒーラーのMPが半分を切ってしまったのもその理由です。


「へぇぇ~そりゃ強いわけだ! 強いっていうか的確っていうか……助かってるぜアレクサントの兄ちゃん!」

「いえ……皆さんが前を守ってくれるからですよ。さすがベテランは違いますね」


 予定では引き続き漂着した財宝を回収して、地下5Fにて帰還術を利用する段取りになっています。

 ヒーラーの余力がなくなった以上、ここからは回復剤を頼りに下ることになっていました。


 ……ええ、そうです。

 この時、この瞬間を待っていました。

 冒険も嫌いじゃないですけど、全てはこの時のために来たんです。


「あーー先輩って素でお世辞言う人なんで、ほどほどに聞き流した方が良いっスよ」

「水を差さないでよアシュリー、本心だってば」

「はっはっはっ、仲が良いんだな。何にせよガッツリ稼いで美味い酒にでもありつこうじゃないか。な、アレクサント」


 これはきっとアシュリーの人徳だろう。

 なんか気づいたらあっさりパーティメンバーと打ち解けていました。


 その浅黒い肌をした剣士リーダーさんがこっちに手を差し出します。

 拒むわけにもいかないですしそれに従うと、グッと力強く握り返されてしまったんですよね。

 うーん、体育会系。合わない。別世界。


「お酒は遠慮しておきます、まだ17ですので」

「自分も飲み会はほどほどにするっス。先輩とつもる話もあるっスから」


 ああうん。校門で別れてからまだ半月も経ってないですけどね、アシュリーさん。


「そうかいそりゃ残念だな、なら今度付き合ってくれよアレクサント。お前みたいなのは大歓迎だ」

「はい。それはそうと……」

 てかそんなことより営業だ、売り込みだ、宣伝だ、さあやろう!


「良い物を持ってきたんですけど、使います?」


 道具袋よりアルケミポーションを取り出しました。

 商業と貴族科で身につけたお世辞笑いというか、営業スマイルを浮かべて彼へと手渡します。


「おお気が利くな。俺は遠慮はしねぇ主義だ、早速ありがたく使わせてもらうぜ」

「ぜひ皆さんもどうぞ。……ほらアシュリー、キミも配るの手伝って」

「あ、先輩これって……。むふっっ、わかったっス!」


 12名分のポーションがそれぞれに配られました。

 ちょうど彼らも疲れていましたし、この奮発に感謝するなり早速飲みだしてくれます。


 するとこちらの狙い通りの結果になりました。

 彼らの疲労消耗が吹き飛び、口々に驚きや感嘆が飛び出します。


「お……こりゃなかなか上物じゃないかアレクサント」

「いいねぇ、俺だってわかるぜ。こりゃ良いもんだ」

「……なあこれ本当にポーションか? おいらぁあの独特の青臭さがないとどうも……いや飲みやすいじゃないか、いけるぜこれ、酒にも混ぜれる」


 ……好評です。え、酒?


 うん、錬金術で作ったポーションはほのかに甘いです。

 薬草調合で作ったポーションは苦くて不味いんです。

 飲み物として比べれば完全に別物でした。


「なあ兄ちゃん、コイツを一体どこで買ったんだい?」


 そう問われると嬉しいです。

 ついついニヤリとほくそ笑みます。

 やっぱりこうやって現地で実演すればうけるんだって、失われかけてた自信が戻ってきました。


「アレックスくんは錬金術師なんス」

「へ……? れんきんじゅつって……ああ、あれか、昔絵本とかで読んだ気がするな。へぇ~つまり、これ兄ちゃんが作ったってことだろそれぇ!」


「はいそうです。俺が作りました。普段はアトリエ……まあ薬屋みたいなものを経営してまして、もし気に入って下さったなら店の方もひいきにしていただけると。……同じお値段で2割り増しの効果を売りにしていますので」


 評判も上々なので、ならばとすかさず売り込みに入りました。

 お値段据え置きとのお得情報に、彼ら冒険者の注目がさらにアルケミポーションへと集まります。


 最後に職人街に店を構えていると付け加えると、必ず買いに行くとかなんとか口々に嬉しいことを言ってくれました。


「でも先輩、安いのは良いけど儲けの方は大丈夫なんスか」

「うんそれは大丈夫。実は鑑定屋のお墨付き貰ってないから、その分だけ安く提供できてるだけだよ」


 素材さえ調達出来ればほぼタダだし。

 じゃあここは全部鑑定屋のせいにしちゃおう、そうしよう、ククク……暴利暴利……たまりませんなぁ……。


「あー……な~んか悪そうな顔してるっスよ、先輩……きっと裏があるんスね……」

「気のせい気のせい、どっから見ても良心的なポーション屋さんだし俺」


 そうそう、持ってきたのはポーションだけじゃない。

 試作品だけどエーテル的なものを作ってみた。


 だからヒーラーさんの前に歩み寄って声をかける。


「お疲れさまですペルミさん、よかったらこれどうぞ。……ええ、毒とかじゃなんでぐいっと」


 それで試作エーテルを彼女、正統派ヒーラーのペルミさんに飲ませた。


「これは……。え、これって……あ……す、すごい……っ! 何なんですかこれっ、急に魔力がみるみる戻ってきました……!」


 結果はこちらも好評。

 魔法の使い過ぎでずっとしゃがみ込んでいたのに、ペルミさんったら元気に立ち上がっちゃいました。


「すごいです、これもっと欲しいです! お店に行けばいただけますかっ?!」

「うーんそれはちょっと無理です。在庫も無いし、試作品だから大量生産出来ないんだ」


 そう言ってくれるのは嬉しいけれど、でも今使ってる素材だとそもそも調達困難。

 何とか市場に流通してるものを買っても、それそのものが滋養強壮薬として珍重されちゃってるので、やたらに高くなってしまうのです。


「でも、もし仮にペルミさんが買うなら、コレいくらくらい出しますかね?」

「そうですね……出せる範囲で言えば……1200zくらいまでなら用意出来ると思います」


「え、ソンナニ……?」

「はい、仲間の命を失うよりずっと安いですよ。これは万一の時のためにぜひ常備しておきたいです。アレクサントさん、また作れたら連絡を下さい」


 うん、ごもっとも。

 ペルミさんは熱心に追加生産の要望をしてくれた。

 うーんなるほど、MP回復剤ってインベントリの肥やしとか赤字アイテムかと思ってたけど……。


 実は手元に存在していてくれるだけでありがたい切り札だったんだなぁ……。

 ほら、エリクサーとか使わずにゲームクリアしちゃうでしょ。


 え、俺だけ? だってほら、入手数に制限があるものだし、普通ケチるでしょ?


空改行をもう少し増やそうかなと思う今日このごろ。

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