21-2 真夜中は俺のターンなのです 2/2
「……手伝おうか」
セリフ悩みましたけどこのへんでしょうかね。
どんな相手かわからないので、牽制にちょっとキザったらしい響きになったかもしれません。
「ぁ……」
ところが。
「え……」
そのぶかぶかローブの不審者が振り返り、俺はどうしても呆気に取られずにはいられませんでした。
だっておかしいです。そんなはずないじゃないですか。
どうもボロっちぃ貧乏臭~いと思ってたそのローブが、実は俺のやつだったなんで。
そのフードの中にある素顔が、勤勉で不器用なあの、アインスさんそのものだったなんて。
思わず黙り込まずにはいられませんでした。
……あ、でもなんかこの姿は姿で似合うかも。
「ごめん、なさい……」
「うん、最初に謝罪を選ぶところがアインスさんらしいね。本物だ」
対話してみれば本当にアインスさんです。
そこは納得出来ましたけど他の疑問が多過ぎました。
「少し、でも、お手伝い、したかった……」
「なるほど。で、真似してみたら出来ちゃったーーみたいな?」
「はい、すみません……」
「マジか」
動機もわかりました。
錬金術使えちゃったもんは使えちゃったで事情も把握です。
正直そこが一番ビックリですけど……。
「すごいな……いや驚いた。出来ちゃったかー、わーすげーー……」
これ見よう見まねで出来るもんじゃないはずなんですよ。
俺が言うのもなんの皮肉か、自画自賛か、性格悪~い、ですけど。錬金術は真似して出来るもんじゃない。
「はい、すみません、ご主人様……」
「いや何で謝るし」
「勝手なこと、しました、から……」
相変わらず真面目というか不器用というか、めんどくさい性格してます。間違いなく本物のアインスさんです。
いやしかし、夜中にこんなことしてたら彼女だって疲れてしまうでしょう。
「でも昼あれだけ働いてくれてるんだからさ、何もここまでしてくれなくても大丈夫だよ。大変だったでしょ」
お客さんの数が数なんです。
しばらくすれば落ち着くと信じたいですけど、アインスさんだいぶ無茶してます。
「いいえ……それでも、お手伝い、したかった。好きなこと、して、欲しかった。もっと、お手伝い、いたし、ます。貴方のためなら、苦しく、ないです……」
アインスさんは良い子です。
でもその一言で片付けてしまうのを止めてしまえば、彼女の罪悪感を浮き彫りにしてしまいます。
彼女はいまだに遠慮しているのです。
しかしその罪悪感が結果的に、彼女に人間性を与えてるのも事実、それを取り払おうとしても無理というものでしょう。
そう考えると不憫なような、これそのものが不毛な感情移入にも見てとれました。
まあいいです、こうなったら共犯に引き込みましょう。
こんな真夜中に抜け出してきたのは楽しい趣味と実栄のためなのですから。
「じゃあ今後もサポート任せた。それよかさ、今からドロポンを進化させようと思うんだ。アインスさんも手伝ってくれるよね」
「……。あの子を……レウラ、のように、変えて、しまう……?」
「あ、やっぱダメ? 不満? だよねー」
アインスさんはどっからどう見ても不満で悲しげな反応を見せました。ドロポンと仲良いですから。
「でも大丈夫、その辺りはちゃ~んと考えてあるよ。大丈夫! ……たぶん?」
クレイゴーレムの性質についてはグリムニールさんからガッツリ根ほり葉ほり聞き込みました。
大丈夫です、たぶん大丈夫です、おかしな見た目にはならない。……と信じた~い。
「なら……はい……。お手伝い、したい、したいです」
よし共犯成立やったー。
アインスさんが期待を込めて提案に応じ、今宵の計画に優秀な助手が付くのでした。
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そうそう、錬金術師の資質は血と才能だそうです。
結果扱える者がろくすっぽいないからこそ、こんな腹黒い商売が成り立っているのです。
なのに、アインスさんはただの見よう見まねで才能を開花させてしまった。
そうなると、彼女が古なる者という古神に魅入られたのも、事故とか偶然じゃなかった可能性が浮上します。
だって錬金術が使える眷属が出来るんですよ。
味方にすれば超美味しく、敵に回せば恐ろしい相手になることは間違いありません。
「どう、されましたか、ご主人様……?」
「ああごめん、ちょっと目開けながら寝てた。さあ始めようか、ドロポンここに連れて来て。それが今日最初のお手伝い」
「かしこまり、ました」
素直に応じる彼女を見送り、俺は秘蔵の中和剤を釜に流し込みました。
そこにはまだまだアインスさん製のポーションがたっぷり入っていましたから、たちまち水面が淡い緑に輝き出します。
さ、ドロポン強化錬金の始まり始まりです。




