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14-01 当主殺害事件、後日談

前章のあらすじ


 幼体のレウラを錬金術の力で小さき飛竜へと進化させる。

 ちょうどそこに軍のロドニーが来訪、アレクサントは普段とはまた変わった依頼を受けることになる。


 アダルブレヒト子爵家の当主が殺害された。

 容疑者は長男のデルムッド氏。しかし定かではない。

 急ぎ真犯人を特定しなければ内戦の引き金になりかねないのに、肝心の調査が行き詰まってしまっている。


 それから翌日、アレクサントとアクアトゥスを連れた馬車がその子爵家領に到着する。

 そこで一通りの情報をそろえ終えると、彼は裏技をもちいて事件の真実を調べ上げ、長男デルムッドを監禁先から救出した。


 その後はすぐに調査結果と証人デルムッド氏を抱えて公都へと逃げ帰り、ロドニーに報告する。

 こうして子爵家領はお家騒動をまぬがれ、平和を取り戻してゆくのだった。

―――――――――――――――――

 旅行話 竜を連れて西を旅します

―――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――


 ポロン公国は大陸中央高地に位置しております。

 地図から見れば東西を高山に囲まれ、北と南には未攻略の魔境が広がる、大陸の中心にして他国との往来不便な僻地も僻地でございます。


 この魔境を北に抜けた先がリィンベル様の故郷。

 東に山越えした場所がアルフレッド様の故郷。

 西にある一国が主人とアクアトゥス様の故郷にあたります。


 はい、このたびの物語は西側の物語でございます。

 そこには数々の小国がひしめき合い、強国と対抗するために小さな国々が強く結びつき合っております。

 その歴史は深く、古くはポロン公国と共に、東の連邦国からの独立戦争を戦い抜いた仲でもございました。名をフリスティア連合国と申します。


 それでは皆様、飛竜レウラとの旅物語、はじまり、はじまりでございます。

 レウラの翼は主人の翼。

 翼はまだ未熟なりとも、散歩感覚で海外旅行させるだけの魅力があったのでございました。


―――――――――――――――――――――――



 ・



14-01 当主殺害事件、後日談


 さていきなりですが経過報告になります。

 あのアダルブレヒト家の騒動ですが、長男デルムッドの救出により一挙解決の方向に押し流れていきました。

 彼は誠実で社交界のコネもありましたし、俺が提出した調査報告書も筋が通っていました。


 ただ自白剤の存在を明るみには出来ませんので、そこは盗聴という単語に置き換えちゃいましたけど。

 そんな悪用し放題の薬、もし作れると知れれば悪い人に誘拐されちゃいます。

 秘密のために、俺を殺してしまおうと考える人も出てくるでしょう。危険過ぎます。嘘が嘘であり続けることって大事です。


 ……話がズレました。

 結論から言えばお家騒動が収まりました。


 追加調査により鉱物横流しの物証が露呈して、悪徳姉弟たちが晴れて公国の裏切り者となったからです。

 そんな者たちを支持する勢力などどこにもなく、だから戦わずしてデルムッドさんが父の跡を継ぐことになりました。


 てなわけで、うへへ……。

 あちこちから謝礼がいっぱいなんですよー。

 軍からは経費含めた7万zが支払われ、デルムッド・アダルブレヒト新子爵からは錬金術に使えそうな鉱物を提供してもらえました。


 目玉は高い魔力を持つ大粒のエメラルド。

 後は大小のルビー、サファイア、色の無いコランダムが無数です。

 実はこれ子爵家のへそくりだそうで、鉱山から産出した逸品を家宝として私物化したものなんだと。


 地脈が超高密度に圧縮した石、それがルビーサファイアなどコランダム系鉱物です。

 よってどの石もそれにふさわしいだけの魔力を持っており、錬金術の素材として見ればついついよだれが出ちゃます。

 探偵ごっこの気まぐれが、こんなお宝を呼び込んでくれるとは思いもしませんでした。ラッキー!


 とまあ、それも今思い返せば半月前の話です。

 うん、ここまでは良かったんですよ。

 だけど余計なものまで付いてきちゃったんです。

 この国の支配者、つまり大公閣下がですねー。


 今回のてん末を大層お喜びになられて、俺を公城に招待するとか言い出したんですよ。

 そりゃ大公の代理として事件を解決に導いたのです。

 大公閣下とすれば鼻も高いですし、だから自然な流れとも言えるのですけど……。


 こっちの話も聞かず、なんか爵位の準備をしてるとか聞いたんですよね……ロドニーさんから……。

 そのロドニーさんが俺の希望通り、全て彼の手柄になるよう報告してくれるとは思っていません。


 なのでデルムッドさん経由でも、金はこっちに、恩賞はロドニーさんに、と伝言しておいたはずなのに……。

 あれおかしい、なんて人の話聞かない大公様なんでしょうか。


「兄様、襟首が緩んでますよ。ちゃんとして下さい、恥ずかしいお姿を社交界にさらすおつもりですか」

「大丈夫大丈夫、直前になったらちゃんと締めるし。ちょっあっ、だめっ、あっ!」


 で、そのご招待というのが今夜です。

 せっかく緩めた首周りがキュッ締め直されちゃいました。

 礼服はロドニーさんが貸してくれたんですが、これがまた……ああもうやだ行きたくなぁぃ……。


「馬車が来ましたよ、行きましょう兄様」

「あたた、お腹痛い、あーお腹痛い、超痛い、じゃトイレ行ってくるねっ」


「馬車でなさって下さい」

「はははご冗談を。……あれ、冗談だよね?」


 彼女は仮病を見破り、俺の手をやわらかに引っ張って馬車へと押し込みました。

 なんてことでしょう、あっという間に城の門が現れて中へとド平民の俺を飲み込んじゃうじゃないですか……。


「兄様、くれぐれも発言にはお気をつけ下さい。相手は大公です、失言をすればどうなるか想像出来ますよね?」

「それはまあ。わかるよ、ちゃんとわかってるよ」


 爵位いらない。

 けどこれ下手な断り方すればまずいことになります。

 公国は権力があちこちに分散しているといっても、君主は君主ですから。


 なにより公都の市民は大公様をメチャしたってるんです。

 ひんしゅくを買えばアトリエの客足そのものに大ダメージとなるでしょう。


 ああ……せっかく貢献してやったのに、なんて恩知らずな大公様なんでしょうか。

 こりゃよっぽど上手く切り抜けないと……。


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