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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第二章 〜少女期編〜
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97.アウトドア商品揃ってきました。え、娯楽用品じゃないんですか?





「とりあえず、心臓部である魔法石と伝達路は、これ以上弄りようがないですね」

「だな、魔法石を上下に挟み込むようにした金具が、そのまま台座と伝達路になるからな。このままぶん投げて壁に打つけても、壊れねえ頑丈さだし」

「太めのボルトで留めてありますから振動にも強いですしね、問題は……」

「嬢ちゃん担当の切り替え機の部分か。

 そうは言っても露出しているからなぁ」

「軸を太くするにしても限度がありますからね」


 コッフェルさんと二人で頭を突き合わせて、携帯(かまど)の試作品を眺める。

 構造を極力単純化した事で部品数を減らし、ユニット化する事で頑強さも得る事が出来た。

 フレームを太くしたので、側面が多少凹んでも本体は歪まないようにもしたけど、流石に露出する部品はどうしようもない。

 仕方ない、多少コストが上がって、使い難さも出てしまうけど……。


「正面の下部を出っ張らせましょう。

 両横にはコの字型の金具をつけてやれば、持ち手にもなりますし」

「僅かだが、結構大きく感じるようになるな」

「ええ、なのでスイッチ部を少し中に入れてやれば、多少は小さく出来ます」

「加工賃が上がるか」


 ほんの数センチだけど、体積で言うと結構な増加、…そして跳ね上がる部品代と加工代。

 

「ますます差が開くな」

「ええ」


 加工代はともかくとして、素材である金属に差が出てしまう。

 鉄を素材としたケースと、アルミを素材としたケースの同時開発。

 この世界では、アルミは信頼の無い金属という謂れ無き迫害で、かなり安い。

 それに対して量は採れるのに使用用途が多い鉄は、それなりに高価だ。


「これくらいなら、想定内ではあるがな」

「コッフェルさん一人で作る訳ではないですから、その辺りも考慮しています?」

「あたりめえだ、金で済むならそれで済ませちまうさ」


 今回の製作にあたって、魔導具としての頑強さの次に気にしたのが、製作のしやすさ。

 ええ、魔法石本体の部分以外は外注予定です。

 これ全てを作ろうとしたなら、作れない事はないですが、それは数台レベルの話。

 百台、二百台となると、とても個人では厳しいし、こう言ってはなんだけどコッフェルさんは年齢が年齢なので、そこまで無理は出来ない。

 トレース台の魔導具みたいに、全体を魔法石化しているのならともかく、魔法石以外は通常技術で作れるなら、そうしたいに決まっている。


「ちなみに一台幾らの予定なんですか?」

「ふん、馴染みの知り合いだしな、金貨二枚と言うところか」

「高っ! いったい薪代なら何十年分あるんですか!」

「こう言うのは荷を如何に少なくして、その分だけ機動性を上げるのが目的だから金には変えられん。

 一月掛かる遠征の場合、大体これが十台あったら、薪を積んだ荷馬車が何台減ると思っているんだ」

「あの、普通に暖を取るための薪も必要では?」

「そんなもの、そんなに量はいらん。

 調理に使わねえなら、そこらの生木でも十分だ。

 燃える程度に乾燥させるだけなら、大した魔力は食わねえからな」


 なんでも薪の節約で、それくらいの事はよくあるらしく、従軍する魔導士の仕事の一つでもあるらしい。

 それに多少の煙や臭いは、虫やダニ除けの効果があるので、そう言った半乾きの木を使う事は行軍中では当たり前の事らしい。

 なら、ああ云うのも役に立つのでは?

 そう思って、アルミを形状変化で幾つかの部品を作り、数か所を太いボルトで止める。

 これを作るときのポイントは、頑強さに合わせて、携帯(かまど)の大きさに合わせる事と、折り畳んだ時に嵩があまり取られない事。


「こいつは、もしかして」

「折り畳みの焚き火台です。

 半乾きにしても、火が付き出すまでは大変でしょうから、こういった物もあると良いかと」


 前世でよく見たアウトドア用品。

 この中に半乾きの木を入れて下から携帯(かまど)で炙ってやれば、かなり楽に火が着くはずはずだし、火が付いたなら、携帯(かまど)を取り出してそのまま使えば良い。


「此奴は確かにあると便利だな。

 水に濡れた後は、なるべく早く体を温める必要性もあるからな。

 こういった物があるなら、ますます此奴の必要性が出てくる」


 そういう事なら、火をつける道具があった方が良いかも。

 種火魔法を使えなくても、そこそこの魔力がある方も多いらしいので、以前に分離型の火力違いの魔法石を引っ張り出して、銅とミスリルの合金で周りを覆い、私の拳ぐらいの筒にする。

 これなら大人の男の人なら、軽く握れるぐらいの大きさだから使いやすいはず。

 魔導具で再現したライターですよ。


「これくらいなら、さして荷物にならないでしょうし、必要とされる方も多いのでは?」

「確かにな、魔力持ちの連中は欲しがるだろうな。

 よく、こんな物をぽんぽんと直ぐに思いつくな」


 別に思いついたのではなく、思い出したに過ぎない。

 前世では便利なアウトドア用品が出回っていたから、この世界でも再現できるものはいくつかある。

 例えば簡単なところだと、アルミを使った折り畳みの机。

 やや低めなところがポイントで、腰掛ける椅子にも踏み台にもなる。

 そんな感じで数個を、即興で作ってみるが、どうやらコッフェルさん的にはどれも斬新だったみたい。

 え? これ等も売り込むんですか? 魔導具とは関係ないですよ。

 ……別に構わないと。

 はぁ、コッフェルさんが良いなら別に構いませんけど。

 ちなみに、折り畳み机と折り畳みの焚火台で携帯竈を挟んでロープで結んであげれば、専用のケースもいらないですね。見た目的にはアレですけど。

 こっちは先方と検討事項という事ですね。


「色々と脱線はしましたけど、肝心な問題は残ったままですよね」

「まぁ仕方あるめえ、こっちは現状じゃあどうしようもねえしな」


 問題と言うのは、強化型の魔力伝達用コードの事。

 此処まで作り込みはしたけど、全部それが入手できる事を前提に進めてきたし、そちら関係の改良が何も進んでいない。


「これで断られたら……全部無駄ですよね」

「そん時は強硬手段を取るまでの事」

「……あのう、出来れば穏便に済ませて欲しいのですが」

「ああ、穏便に話し合いで済ませるつもりだ。

 貴族は貴族同士の話し合いでな。

 伊達に彼方此方に貸しは作ってねえさ」

 

 その貴族同士の話し合いって、脅迫とも言いますよね?

 なんで、そこで目を逸らすんですか?

 本当に穏便な話し合いですか?

 大丈夫、半強制的であろうと、相手にメリットがある話し合いになるはず?

 それって、話し合いに言った貴族の方にとっての、押し付け的なメリットとか言いませんよね?

 よくある話ですよ、相手は恩を売ったつもりでも、実際は迷惑以外の何物でもないって話は。

 ええ、此れでも元貴族ですから、その手の話はよく聞いています。

 噂は噂に過ぎないって、本当にそう言えます?

 私の目を真っ直ぐ見て、言えますか?

 え? それでもし嘘だったらどうするかって?

 無論、その目を突いてあげるだけですが。


「怖えよっ!

 とにかく、そんな心配は返事が帰って来てからすればいいからな」


 ええ、分かってます。

 コッフェルさんがそんな真似するはずないと…。

 余計な心配だという事は……。

 でも心配になるじゃないですか。

 だって知っているから…。

 上位貴族の要請の強引さを…。

 例えそれが幼い子供であろうとも、寄こせと言われたら頷かなければいけない事を……。

 その要請に、お父様がどれだけ苦悩したかを知っているから…。

 どうしても、心配になってしまうんです。




 そんな資格など、もう私には無いと分かってはいるのに……。






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