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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第二章 〜少女期編〜
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94.私、魔法少女をやります。ええ、数年前からやってますけどね。





「……派手過ぎません?

 それに足元が少し不安ですし」


 書店の休みの日に、ライラさんと二人で、以前お願いした服の仮縫いに来たのだけど。

 出来上がっている服は白をベースとした服に青のラインが所々入り、金糸による刺繍が施されていて、全体的に派手。

 下に着るのブラウスとベストはともかくとして、上着の丈は短いので腰のラインがはっきりと出てしまう。

 しかもスカートは膝上数センチの所と、この世界ではかなり挑戦的な意匠。

 一応ニーソックスみたいなものと、スカートは重ね着のようになっており、前以外は脛下までの長さはあるので其処まで足を強調してはいない。

 でも、それだけに正面から見た時は、余計に強調されているようにも見える。


「全然っ。凄く似合うわよっ。

 ゆうちゃんぐらい若いと、足を出していても健康的に見えるし」

「ならズボンでも」

「却下っ、これ見たら、そんな妥協案なんて惰弱でしかないわね」

「そこまで言いますか」

「だって似合っているんだもん。

 だいたい自分で意匠したんでしょ」

「かなり弄られていますけどね」

「格を引き上げただけよ」


 確かに自分で意匠しましたよ、でもそれは他人が着る事を前提の話です。

 ハッキリ言ってコスプレです。

 カッコイイ系の魔法少女です。

 ええ、確かにリアルで魔法少女ですよ。

 でもそれとこれは話は別です。

 しかも生地の色や細々としたところが、かなり弄られていて、私が着るには豪華と言うか派手です。


「今までに無い意匠で、凄く勉強になりました」

「普段着で足を出すなんてと思っていましたけど、全然そんな事無いですから驚きですよね」

「普通は足を出すのは娼婦か、夜用のドレスぐらいですもんね。

 なのにこれは全然卑猥さが無いどころか、毅然と品格があるし、どこか軍服を彷彿させます」


 お店の人や縫子さん達は、物凄く目を輝かせているけど、格があって見えるのは、金糸による刺繍やレースと貴女方の腕のおかげです。

 卑猥さが無いのはただ単に、私が子供で色気が無いだけだと思いますよ。

 それと軍服を彷彿させるのは当然です。

 魔法少女の服って、ある意味戦闘服ですから。


「往生際が悪いわね。

 なんでそんな地味に行きたがるのよ」

「だって地味ですから」

「……面白い冗談ね」


 ええ、分かってますよ。

 アルビノの私が目立たない訳ないって事は。

 その辺りはいい加減に受け入れてますけど、それはそれ(趣味で作る服)()此れは此れ(着たい服は別)です。

 自ら派手さを押し出したい訳でも無いですし、性格的にも地味なんですから良いじゃないですか。

 え? 性格も含めて地味じゃないって、……それこそ面白い冗談ですよね。

 あとは礼服と、部屋着に寝間着と、運動着に作業着。下着は別に今着なくても良いですよね。

 ええ嫌ですよ。

 幾ら同姓ばかりと言っても、こんな人目のある所で脱ぐ必要は欠片もないじゃないですか。

 そこは此処の人達の腕を信じていますからという事で、断固拒否です。

 そう言う訳で、もう良いですよね。

 え? 普段着はこれと色違いがあると、そっちは私好みの地味な色と、なら、ぜひともそっちを見せてください。


「……少しも地味じゃないじゃないですか」

「落ち着いた色合いではあるでしょ」


 黒を基調に赤色のラインと銀糸の刺繍、おまけに服の裏側には臙脂色。

 その癖して膝上数センチのスカートは白のままだから、ある意味白ベースの服より派手です。


「そんな訳で此の子の地味思考は無視しちゃって、このまま仕上げちゃってください」

「酷いっ、着る当人の意見は無視ですか」

「聞くに値する事なら聞くわよ。

 地味に持っていく以外で」

「ライラさん私を苛めて楽しいですか?」

「ゆうちゃんの可愛い恰好を見たいだけよ」

「……はぁ、もういいです、諦めます。

 ラフェルさんやギルドの顔もありますから、そこは腹をくくります」

「そう、良かったわ」

「そう言う訳で意匠の一部を変更で」

「ちっとも諦めてないじゃない」


 私の前言を覆すような言葉に、大げさにアクションしてくれるライラさんに、ノリと突っ込みが良くなってきたなぁと感心しつつ、真面目な話ですよ。

 それぞれの一部分に変更案を丁寧に説明する。

 少し派手方面への変更にライラさんは驚くけど、私としては有りの変更です。

 内容的には、各所に宝石による装飾を配置出来るように変更しています。

 むろん、意匠的なバランスを崩さずに。


「……ねえ、ゆうちゃん。もしかして」

「ええ、魔法石を埋め込むためです」

「……納得がいったわ。

 貴女が自分から着る物に装飾を凝らすだなんて、それ以外に有り得ないわよね」


 失礼なと思うけど、実際その通りかもしれないので敢えて口には出しません。

 え? どんな魔法石を埋め込む気かって、基本的には状態維持系の強化ですね。

 それなりに動くので破けたり解れたりしないようにですよ。

 他にも汗で濡れてもすぐに乾くようにしたり、他にも泥跳ねの防止の膜を張ったりします。

 太腿のバンドとかは、きつく締めなくてもずり落ちないようにしたいですね。

 あと、夏には涼しい空気を、冬には暖かい空気を纏うようにする予定です。

 ええ、普段魔法でやっているのを、魔導具に肩代わりさせようと思って。

 えーと、流石に魔法使いでない人向けの魔導具ではないので、……あくまで魔法の一部の機能を肩代わりさせているだけなので。

 将来的にはともかく、すぐに出来そうなのはずり落ち防止のバンドくらいしか。

 ……それで良いと言われても、私、此れから忙しくなる予定らしいので。

 売れるから、ぜひ試作してほしいと言っても、時間がある時に開発するという事ぐらいしか今は。

 ええ、それでよければ。でも本気で何時になるか分かりませんよ?

 大丈夫と、この手の物は何年たっても需要があるはずと。

 はぁ、其処まで言うなら、気が向いたら作ってみます。

 なんとか相手が納得した処で、早々にお店から脱出。


「ゆうちゃんは凄いわね」

「何がです?」

「だって次から次へと今まで聞いた事のない魔導具を作ってるじゃない」

「まだ作ってませんよ、あくまで作る予定です。

 それに、依頼された件も試作を作って終わりです。

 機能自身は凄く簡単なので、作ろうと思えばすぐ作れますけど、それ以上作る気はないですね。

 仕事としても引き受けませんから、他をあたってほしいと言うつもりです」

「なんで? ゆうちゃんがしたい生活のための魔導具でしょ」

「問題が多すぎます。

 ライラさん、いったいどれだけの人間が欲すると考えています?

 幾ら小さいと言っても、それだけの魔石が確保出来ないと思いますよ。

 ずり落ち防止のバンド全体を魔法石化すれば、機能は少し下がりますが魔石の条件はクリアできます。

 でも、魔石でない物の魔法石化は多くの魔力を使う、とコッフェルさんが言ってましたから、その方法では数を作る事は出来ません。

 確かに私なら気にせず作れますが、それだけを只管作り続ける生活だなんて、私はまっぴら御免です」


 私は自分勝手な人間だから、もう前世のような社畜みたいな人生を再び歩みたくはない。

 そうしなければ生きて行けないのならともかくとして、今の私は他に幾らでも選択肢がある。

 むろん今回のような問題は今後も出てくるはずだし、何時か何処かでその問題にぶち当たる時も出てくると思う。

 でも、それは今ではないし、そのために作っていかなければならない下地がある。


「ライラさん、今はまだ(・・)です。

 私はそう信じています」

「そう、じゃあ、そんな日が来る事を楽しみにしてるわ」






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