表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第二章 〜少女期編〜
80/976

80.闇盾の耳飾りと、内緒にすべき魔導具。





 前もって実寸大に書いておいた詳細な図面。

 その図に重ねるようにして、材料を形状変化の魔法で重ねて行く。

 魔法と言っても万能ではない、幾ら図面があろうと魔法の手助けがあろうと、それはあくまで補助でしかなく、やっている事は手作業と同じ。

 もし手だけで此れ等の作業をやろうとするのならば、それなりの設備と道具が必要となるうえ、とても私には出来ない。

 魔法があるからこそ、私にも形だけはなんとかできるに過ぎない。


「ゆっくりと捻じりながら銀線を少しずつ流し込んで」


 やっているのは、形状変化の魔法を利用した装飾品づくり。

 むろん魔導具ではあるけど、身に着ける以上は装飾品扱いになるし、それなりの意匠の物が求められる。

 今、作っているのは自分用のだから意匠に拘る必要はないのだけど、形状変化の練習も兼ねているため、それなりに凝った意匠の装飾品になっている。


 銀線細工。


 あいにくと前世で見た記憶にある様な物にはとても及ばないけど、それなりに細かな装飾。

 銀線で銅線を包む様に編んだ紐を軸に、その紐の間を銀線で編まれたレースで繋ぐ部分を、細かい図の線に合わせて銀線を流し込み、重なる部分を僅かに溶着させてゆく。

 そんな作業をゆっくりと丁寧にこなしながら、やがて最後の線を……繋げ終わる。


「あとは核となる魔法石を」


 ビー玉の半分くらいの小さな魔法石でハート・ブリリアントカット状にしてある。

 少しだけ恥ずかしいけど、この程度の大きさなら、よく見なければ分からないので私的には問題がない。

 すでに魔法陣の焼き付けは終わっているので、魔法石に銀線を意匠どおりに絡めながら、イヤリングの本体部分へと接続し、メタルレースのイヤリング本体で魔法石を大きく包むように円形状に変化させる。後は肌に接する部分を加工して終わり。


 魔導具:闇盾の耳飾り。


 などと厨二的な名前を付けはしたけど、魔導具の能力としては、ただ日焼け防止。

 幾ら魔法銀(ミスリル)より形状変化が簡単だと言っても、流石に此処まで細かい形状変化が出来るようになるには時間が掛かった。

 それに魔法銀(ミスリル)で網戸の網が作れる程の形状変化が可能であっても、意匠に合わせて細かな形状変化にするには、また別の技術がいるので、結局、そのままでは出来ないと断念。

 幾つかの魔導具製作用の道具と、制作方法の開発の方が早く出来たほど。


「へぇ、やっと出来たんだ」

「はい、まだまだ不満な所はありますが、形にはなってきました」


 お店のカウンターから、此方の様子を覗いていたライラさんにそう返す。

 銀線細工と言う割には立体感が無く、のっぺりとしている。

 形状変化をさせたい部分をより明確にするために、先の尖った指示棒や、図面と材料を挟むガラス板の型などの工具を開発したけど、やはり図面の上に乗せてという作業の特性上、どうしても平面的な物になってしまう。

 職人の人達なら、同じ条件でも立体的に銀線を編み込ませれるんだけど、私ではこれが限界。

 ちなみに指示棒は、胴体部分を部分を魔法銀(ミスリル)を通常金属の中では魔力を流しやすい金属であるチタンで包み、先端を魔力を流しにくい硬銅で、その芯に魔法銀(ミスリル)と相性が良く強度もある鉄との合金で拵えた物。

 硝子板の型は、以前トレース台の開発時に失敗した硝子板を再利用。

 一度融解してあげれば、魔法石化と失敗した魔法陣の悪影響をリセット出来る事に気が付いたので、ありがたく再利用させてもらっている。

 これのおかげで図面を汚す事なく製作出来るだけでなく、更に主要部分の受ける台などの治具になるため、素材を安定させられるので作業に集中できた。


「十分、良い出来だと思うけど」

「素人にしてはのレベルです。

 一流の作品を知ってると、どうしても見劣りはします」

「でも、これ以上となると専用の工房に頼んだ方が良いかもね。

 お値段も凄い事になりそうだけど、ゆうちゃんに似合う物を作ってくれそうよ」

「そう言うのはちょっと、別に一流品を身に着けたい訳じゃないので」


 正直、今作ったのでも、私が身に付けるには少し過度な装飾品だと思う。

 一流の物には惹かれはするけど、それを身に付けたいとか所持したい訳ではなく、只の憧れだし、見ていて楽しいだけの事。

 こんな作品を作れたらな、それだけの想いでしかない。

 そんな私の考えにライラさんは、変わってるわねと言いつつも、ゆうちゃんらしくもあるわねと、褒めているのか呆れられているのか、分からない返事をされてしまう。


「それはともかく、早速、着けて見せてくれない?」

「いいですよ」


 今回の魔導具には、小さな魔法石を使用している。

 幾ら薄く強度的には弱いと言っても、無属性と闇属性の複合魔法に加え、特定の周波数を決まった強度でしかも体を覆うように張るため、魔法石が必須となってしまった。

 それでも、この大きさの魔法石に収まったのは、魔法陣そのものを複層構造にして小型化を図れたおかげだ。

 しかもこの複層構造、私が今までに読んだ書物やコッフェルさんの店の魔導具でも見た事がないため、おそらくこの世界ではまだ無い技術なのだと思う。

 もっとも見た目だけでは分からないですけどね。

 そしてぱっと見で分からない技術としてもう一つ。

 実はこのイヤリング、ノンホールピアス構造で作りました。

 イヤリングは作るのが面倒くさいし、ピアスは耳に穴をあけるのが怖いので却下。

 そう言うわけで前世の少ない記憶を頼りに、再現に挑戦してみたのだけど、実際の使い心地はこれからなので、使ってみて具合が悪かったら変更する事も考えている。


「似合うじゃない、かわいいし」

「ありがとうございます。

 本当は赤じゃなく青の方が髪や肌に合うのですが、魔法石の色を変えられるかすら知らないので」

「別に変じゃないわよ。

 ゆうちゃんの目の色に合わせたと思えば全然おかしくないし、良いアクセントになっているわ」


 見た目は少し派手だけど、これなら邪魔にならないし使い心地は悪くない。

 私からの魔力を吸い出して、魔法も無事に展開済みのようだし、あとの心配は効果と寿命だけど、こればかりは使い続けないと分からないから、気長に待つしかない。


「それでどんな魔導具なの?」

「生まれ付き体質の弱いところを補う魔導具です」


 ええ、そう言う訳で効果も寿命も不明な物を、無責任に世に出せないので、正直には言いません。

 女性の肌の白さを求める執念は、知っていますからね。

 此処でポイントなのは、嘘ではなく本当の事。

 しかも突っ込みし辛い部分で説明する事です。

 ええ、例えライラさん相手でも、過度の期待を込められても困りますし、せめてひと夏様子を見て効果を確認してからでないと、とてもこんな中途半端な物を渡せません。




 効果の未確認な物を下手に世に出して、詐欺行為で捕まりたくありませんから。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ