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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第一章 〜幼少期編〜
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68.魔導具制作と、素敵なお爺様の小細工。





 お泊まり会の翌朝、朝食後にエリシィーを見送った後は、いつも通りの時間が流れ始める。

 そう言っても、お母様がいないので淑女教育はお休みで、それ以外のいつもの時間が流れ始めているだけ。

 読書としては、アルベルトさんが所有していた本の一冊、その暗号の解読化に最近成功したので、解読しながら分かる内容に書き写しの作業。

 内容的には、うん、危険。

 大量殺戮魔法の理論やその魔法形態の持論と効果の検証。

 ええ、効果の検証論文付きです。

 その時の背景は流石に軍事機密なのか書いてないけど、それ以外の結果の詳細が。

 他にも危険すぎる大規模魔法の理論が幾つか。

 大半は魔力不足で出来ないものばかりらしいけど、竜種などの一部の魔物の放つ攻撃魔法を自分なりに解析した物が書かれている。


「攻撃魔法その物には要はないけど、理論や考え方は非常に参考にはなるかな。

 多分、アルベルトさんも、そう言う意味で取っておいたのだと思うけど」


 理論や形態の説明がとても丁寧で分かりやすい。

 ええ暗号以外は、とても参考になる内容と言えます。

 ただ、本のほとんどを暗号のための無駄な部分で終わってしまっているので、実質的には二十枚ほどの内容でしかないのが非常に残念。

 これで、金貨五枚、………アルベルトさん、悔し過ぎて捨てられなかったのかも。

 その後はお庭に出て運動。

 ええ、最近は前より頑張ってますよ。

 エリシィーとの差を実感したので、少しでも追いつこうと、……全身運動のダンスを短縮版を二セットではなく、三回に分けてフルバージョンをやってます。

 最終目標、一回でフルバージョンを完遂する事!

 え? 最終目標が低い?

 いえいえ、今の私には遥か先の目標ですよ。

 三回に分けても、地面に座り込んで、しばらく立ち上がれなくなるんですから。


 こくこくっ。ふぅ〜……。


 水分補給をしてから、着替えて魔力制御訓練。

 基本ですから大切です。

 それにまだまだ課題もあるのも確かだけど、魔力容量の伸びが、最近特に良い気がするんですよね。

 伸びている時は、やり過ぎない程度に伸ばさないとね。

 お父様達の不在は十日ほどの予定。

 それまでは家族に気兼ねする事なくやれるのは有り難いと思う反面、少し寂しくも感じる。

 そんな寂しさを紛らわせる様に、魔導具の研究。


「と、言っても、後は制作するだけなんだけどね」 


 収納の鞄から取り出したのは、以前にコギットさんに魔法石を使った装飾品。

 エリシィーに渡した【絆の首飾り】の時に一緒に作った腕輪。

 後はこの腕輪に、魔導具としての仕上げとして魔法陣を刻むだけ。

 作るのは収納の鞄の超簡易版。

 って言うかレベル的にも内容的にも、全くの別物。

 これを収納の鞄と同列視するには、あまりにも収納の鞄と、それを開発したアルベルトさんに失礼と言えるほど違う代物。

 目的と能力が、それに近いと言うだけでね。


「うっかりで、収納した物を二度と取り出せなくなるのは避けたいからね」


 簡単に言えば、収納の魔法を維持するためだけの魔導具で、収納の鞄はあまり人前で使えないので、一時的用の魔導具。

 散々やっておいてなんだけど、できれば狩った獲物とかは此方の方に入れたいし、収納の鞄の欠点である収納する物の大きさの制限も、こちらは気にしなくても良い。

 使う技術の大半は今まで試作した魔導具でも使っている技術だから、思いつけばそこまで難しくない。

 基礎研究設計や前実験の検証に、結構な時間は掛かってはいるけど、結果としては上手くいっている。

 組み込む機能はそれなりにあるけど、腕輪型をしているので、魔法陣を描くスペースも十分に確保出来ている。


「一発勝負なのが、きついところかな」


 材料的に失敗は出来ない。

 魔石はまたの機会はあるけど、何度もコギットさんに同じ物を作ってもらうのは悪い。

 ええ、それくらい力を入れて作ってあるんですよ、この腕輪。

 日常品だからと言ったのに、意匠図以上のクオリティーでもって作られています。

 もはや別物と言いたいけど、元の意匠を軸に作られているため、豪華な作りになったぐらいとしか思えない辺り、コギットさんの腕と意気込みが感じられるだけに、一度で成功させたい。


「……生成(トレース)開始オン


 ノリです。鼓舞です。自己暗示です。ええ気に入ってます。

 組み込む魔法は、特定の系列魔法を発生させたまま維持するための魔法。

 それに必要な魔力を装着者から吸収する魔法。

 維持する魔法の安定化と固定化をするための魔法。

 魔法陣を繋ぐための回路は、腕輪自身を魔法石化して、その中に組み込む事で処理。

 機能は四つとそれなりに多いけど、基本的に装着者自身の魔法と魔力に依存するため、ペンペン鳥の魔石の半分程の大きさの魔法石でも可能。

 魔力消費そのものは少ない魔法ばかりなので、使っていなくても数時間くらいは魔法石は保つし、魔法石を魔力タンクにする必要が無いところが大きい。

 使わなければ、それこそ収納の鞄に入れておけば、魔導具としての寿命は関係ない。


「………ふぅ、完成」


 時間にして一時間程の作業。

 特定の魔法を維持するための魔法陣と、魔法の安定化と固定化の魔法陣がかなり複雑で神経を使った。

 魔法陣の焼き付けが終われば、見た目で見える魔法陣は同じ様な物なのに、この辺りは何度見ても不思議だ。

 魔導具を作った本人にしか使えない真の魔法陣と違って、現世にそれを止めるための魔法陣は簡単な物、むろん、真の魔法陣と比べればに過ぎないけど、その用途によって幾つかある基礎の魔法陣は、幾何学模様に見えて綺麗に思える。

 あらためて、魔法石に刻まれたその模様にある意味の芸術性を感じる。


「でも一番神経を使ったのは、必要以上に豪華になった装飾の邪魔にならない様に刻む事だとは、コギットさんには言えないかな」


 結局は、裏側を使ったのだけど、……裏にもね。目立たない様に施されているんですよ。

 職人の粋と言うか……、やりすぎと言うべきか……。

 とにかく、腕輪自身を魔法石化してあるとは言え、魔石から作った魔法石その物が魔導具の核である事には違いないので、気を付けないといけないのは確か。


「さっそく、試してみよう」


 服の上からつけた腕輪を固定。

 ええ、この腕輪、バングルアームレットでサイズが多少調整できる様になっています。

 しかも魔力で、……ええコギットさんやってくれました。

 主要目的だった首飾りの方は依頼通りだったので、気がつくのに遅れてしまった私も悪いのですが、この腕輪、魔法銀が少しだけ混じっています。

 銀に魔法銀を混ぜる隠し装飾だなんて、粋にも程があるでしょう!と突っ込みたくなる。

 はっきり言って、生成時に魔力を流すまで気がつきませんでした。

 ええ、後日、コギットさんの奥様と息子さんに言っておきましょう。

 材料費だけでも、絶対に赤字間違いない。

 私を可愛がる以前に孫を可愛がれと。

 それとこんな小細工させない様にと。

 流石に追加の材料費は受け取ってはくれなさそうだけど、言うだけの事は言っておかねばいけない。

 施された小細工の内容的に、コギットさんはコギットさんなりに魔導具の事を調べたのだと思うし、その小細工の内容は嬉しい内容ではあったのは確か。

 できれば次からは相談してからやって欲しいものです。


「うん、確かに軽く感じるし、サイズを合わせれば、着けている事も忘れそうになる」


 コギットさんの粋過ぎる小細工の結果に、頬が緩みそうになるけど。

 今、気にするべき問題はそこじゃないので、収納の魔法を発動させる。

 そして時空の穴を小さくして待機状態にした後、腕輪に施されている大きな窪みに移動させる。

 これで腕輪の魔導具が発動される。

 後は魔導具が勝手にこの状態を維持してくれるので、術者の意識から離れても中に収められた収納物を失う危険性はかなり減る。

 実際、収納の魔法から意識を離しても、維持されている所を見ると、上手くいっている模様。

 時空の穴は魔導具の核になっている魔法石と、隣あって腕輪に嵌め込まれている様に見えるため、一見すれば赤い宝石と黒スピネルを装飾された腕輪に見える。


「収納の魔法への再同調も問題なし。

 成功ね」


 毎回、収納の魔法を使う必要があるため、収納の鞄と比べてその利便性は問題外。

 あくまでその機能の一部だけを取り出して、自己流に再現させた物でしかない。

 でも、今はこれで十分かな。

 あくまで収納の鞄の隠れ蓑だから。

 残念なのは、コギットさんをはじめ、領内の人間には機能を見せれない事かな。

 精々が、着けている姿を見せに行く事ぐらい。

 ええ、色々と小細工してくれた件も含めて会いに行くつもりです。

 お説教です。細工が過ぎて危うく魔導具にできなくなる所だったんですから。


「でも、感謝はしているので、お粧して訪ねるかな。

 ついでにお菓子も焼いて行こう」




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




「感謝されながら、怒られるとは流石に思わなかったぜ」

「当然です」

「だがまあ、態々見せに来てくれたんだ。

 大人しく怒られはするし、次からは意匠図の範囲だけで凝らせてもらうし、改善点として此方の意見も言わせてもらおう」

「……そこは決定なんですね」

「あたりめえだ。

 お嬢さんに似合わねえ物なんぞ着けさせられるか」


 その熱意を、もう少しお孫さんの方に。

 ……え? やり過ぎて、もう止められていると。

 つまり、私はいい発散先だと……、また面倒臭い事を。

 ……あと、粧し込んだ姿をガイルさんに見せるなって、何故ですか?

 面倒臭いですし、今のところ態々見せるような予定はないですけど、ガイルさんが好きなのはミレニアお姉様だから私は関係ないし、流石にもう暴走はないと思いますよ。

 文字通り、骨身に染みるほど痛い目に合わせちゃいましたから。

 何故そこで深い溜息を吐かれるのかが分からないのですが?

 ……いいから言う事を聞けって、横暴です。

 ええ、経験の多い年寄りからの忠告と言うのであれば、素直に受けますけど。

 はい、分かりました。






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