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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第一章 〜幼少期編〜
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61.秋の実りは身の実り。えっ、私には無縁の話ですよ。





「今日は一人なんだ」


 お店に入って奥のカウンターに行くと、ライラさんの方から声を掛けてくれれるのだけど、私としては少しだけ御機嫌斜め。

 ええ、前回、エリシィーを連れて来た時に散々揶揄(からか)ってくれましたから、多少ムクれるくらいは許してほしい。

 そう言う訳で意思表示でムクれてみます。

 ぷく~と膨らんでみます。

 ええ子供っぽくて結構です。

 意思表示ですから。


「あらら、今日は御機嫌ナナメなのね。

 ごめんね〜、だって嬉しくなるじゃない。

 この店に連れて来るだけの、仲が良いお友達がいたんだって」


 どうやらボッチ確定で心配されていたらしい。

 それでも、あそこまで人をネタに揶揄(からか)ったりした挙句に、お説教になるのはあんまりだと思います。

 ……え? 後半は自業自得?

 いえいえ、別に私は着替えは森の中だろうと気にしてないし。

 見られてもさして気には……、ならないと言ったら嘘ですけど。

 別に知り合いでなく、通りすがりに偶々見られてしまうくらいの事なら、気にならないのは本当。

 でも約束した以上はやらないつもりですので、まじめなお話第二弾は御遠慮いたします。

 ええ、真面目にやりませんから。また泣かれたくないし。

 そっちなのかって、それ以外に何か?

 本気で呆れたように溜息を吐かないでください。


「それにしても今度はずいぶんと新作が早かったわね」

「ちょっと夏に色々あって、屋敷から出れなくなったお陰で、しっかりと書き溜めれてたので」

「……なるほど、詳しい事は聞かないけど、それで夏は一度も顔を出さなかった訳ね」


 気分転換と現実逃避に頑張っちゃいました。

 ええ、色んな意味でキツかったので、結果的に溜まっちゃいましたよ、色々な物が。


「何にしろ、ゆうちゃんは色々と飽きないわね」

「そうですか?」

「男装して弟の振りしたり、化粧の腕が専門家なみだったり、実は魔法使いだったり、書いてくる本の内容は斬新だったり。

 でも内容的に少し書くのは早いなぁと思っていたら、実は見た目通りの年齢じゃなかったと」

「ライラさん、凄いですね」

「ゆうちゃんの事なんだけど」

「他人事のように言ってみます」

「……貴女がそれで良いなら良いけど。

 で、実際は幾つなの? まさか私より上とか言わないでよ」


 中身は遥かに上で、しかも男です。

 とは流石に言わなかったけど、素直にこの冬で十二だと伝えておく。


「それでも、やや早い内容ね。

 確かに、お友達には言えない内容だから分かるけど」

「その件では素直に感謝します。

 なにか目新しい本でもと思って連れてきて、あんな事になるとは思ってもいませんでしたけど」

「自業自得。

 と言うか分かってあげなさいよ、面倒な事になる前に」


 面倒な事?

 確かに本の事はバレたら、後々面倒になるかもしれないと思うけど、流石に当分は無理かな。

 ええ、無理。

 そもそも自分の趣味で書いている本じゃないし。

 ええ、本当ですよ。

 心の奥底で誰かが凄く喜んでいる気がしますけど、それはそれです。


「まぁいいわ、ところであの娘、貴女の本を読んだ事は?」

「残念ながら腐化が進み、ついに全巻揃えられました」

「ふ、ふか? なにそれ」

「ああ云う話に嵌り始める事を指す造語ですので、気にしないでください」

「言い得て妙な言葉ね」


 その後は幾つかの雑談をした後に店を出てから、山へ狩りへと行きましたけど、今日は狩猟と言うよりも採取で、キノコや果実系をメインに収穫。

 むろん、たくさん採れましたよ。

 空間レーダーと地中レーダーを駆使して、籠の中はウハウハ状態です。

 むろん、毒キノコには気を付けているので問題なし。

 ええ、何年もやっているので、既に素人の域は出ていますからね。

 しかも今回は例の高級キノコが白と黒の両方が取れました。

 お父様達も大喜び間違いなしです。

 え? 最近お土産にキノコ類が多いって?

 ええ、乙女の事情です。

 私ではなくて、親友の乙女の事情とだけ。

 ああ、でも鴨か鹿くらいは狩っていっても良いかもしれませんね。

 脂肪分が少なくて、比較的ヘルシーなお肉ですし。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




「……今日も、お肉決定ね」

「そ、そうなの?」

「ええ、神父様、このキノコをスライスしてお肉に振り掛けたり、ソースを作って掛けた物が大大好きだから」

「……パスタとか、マスに掛けても」

「そうしたいわね。

 それで神父様が不機嫌にならなければだけど」

「……」


 なんでも神父様、お肉愛が溢れすぎて、このキノコのを使った肉料理にアッサリした肉質のお肉はあり得ないそうです。

 ごめん、エリシィー。

 そんなつもりは欠片もないから、知らなかったが故の事故だから、そんな絶望の眼差しで明日を見ないで。

 希望はあるから、希望は……え、今の私の体重?

 き、聞かない方が……、ほら私とエリシィーだと、体格が全然違うから参考にならないというか……ね。

 明日、全身を使った運動を一緒にする約束をするのが精一杯でしたとだけ。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




「あぁぁ……疲れた」


 此処まで疲れたのは久しぶりな気がする。

 精神的疲労は度々あるけど、肉体的疲労で此処まで疲れたのは、かなり久しぶりな気がする。

 ええ、地面から起き上がるどころか、腕を上げる気力もないです。

 まず間違いなく明日は筋肉痛です。

 しかも一日で治らなそうなキツイやつ。

 何時もの日課の筋力と体力トレーニング中に、約束通り来たエリシィーに付き合って、多めの全身運動。

 ええ、よくあるダンス風の奴です。

 前世で元カノに付き合わされて、幾つか覚えました。

 結果は、私だけ痩せて喧嘩の原因になったとだけ。

 

「……全然違ったなぁ」


 改めて今世における体力と筋力のなさを痛感した。

 何時もは三分保たない所を頑張って四分近くは保たせましたよ。

 しかも二セットじゃなく、三セット。

 ええ、本来は十分前後のを三回に分けているんですが……、私がダウンしている横で彼女は汗だくになりながらも、余裕でフルバージョンを二セットやってました。

 おまけにその後に、最後にってフルバージョンを突き合わされましたよ。

 無理っ、限界ですっ、と言う言葉を無視して。

 なんでも覚えて、今夜から小母さんと一緒にやるそうです。

 そっかー、小母さんもかーと思いつつ、情報漏洩は良いの? と言ったら、漏れるとしたら私しかいないからとスケープゴート決定です。

 酷いです、冤罪です、……怖いから言わないけど。

 しかも薄情にも、疲労困憊の私を放っておいて教会に戻っちゃうし。

 屋敷の庭だから問題ないけどね。


「……筋肉痛は嫌だなぁ」


 半日ぐらいならともかく、数日がかりのは本気で勘弁してもらいたい。

 そんな訳けで、治癒魔法。

 ええ、自分に掛ける方法も覚えましたよ、擦傷とか直すのに便利だしね。

 でも、筋肉痛防止で治癒魔法だなんて、教会の人が聞いたらお説教コースになりそうだけど。


「……でもゲームと違って、疲労や怠さは回復しなんだよね」


 うん、身体が重い。

 地面に根が張ったように重いです。

 それでも、そろそろ体を起こさないと冷えてしまうので、我慢して身体を起こすと。


「……お兄様」

「……運動かい?」

「……ええ」


 短い会話。

 それでも、こうして顔を向き合わせて話をするのは、いつ以来だろうか。

 実際にはそう長い期間ではなかったはず。ほんの二か月程だ。

 だけど、それが物凄く昔のように感じてしまう。


「……見ておられたんですか?」

「……少しな」

「……呆れられたでしょ。不甲斐ない妹に」

「……それでも、幼い時に比べれば、見違えるようにはなったのかな。

 ……すまん、実はよく覚えていない」


 反射的に何だろう、お兄様は謝罪の言葉を口にするけど、そんな必要など最初からない。

 ただ、今の私から兄の行動を否定したくはない。


「あの子、また来てくれていたんだな」

「ええ、良くしてもらってます。

 お兄様、知ってましたか? 私と彼女、実は同い年なんですよ」

「……言われてみれば、確かにユゥーリィぐらいの年と言うと、アレぐらいだよな」


 お兄様が、此処に何故いるのか、それは問う気はない。

 本来、此処にいるはずのない時間帯にいる事が、お兄様の答えなのでしょうから。






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