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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第三章 〜新米当主編〜
295/977

295.秋の味覚も危険もいっぱい。





「♪〜〜♫〜〜」

「ご機嫌ですわね」

「そりゃあね。これだけ大量だもの」


 今日は秋の味覚を求めて山歩き。

 メインは狩猟ではなく採取だけど、出会ったらその限りではない。

 キノコ♪ キノコ♪


「ジュリ、それアウト。

 似ているけど毒キノコだから」

「えっ?」

「ほら、ここみて、ちょっと違うでしょ。

 あと生えている場所も違うの。

 いーい、ジュリが採ったのは地面からで、私が見本に出したのは倒木から」


 この一年でジュリも大分覚えたけど、所詮は一年だし、回数も少ないので、まだまだ経験不足。

 私も最初の頃は採って来ては、見て貰って散々指摘をされて覚えたから、あの頃が懐かしいな。

 解毒の魔法を覚えた時に毒感知も覚えたから、今やスーパーキノコ採取職人ですよ。

 プロ顔負けの精度です。

 魔法と言うドーピングのおかげですけどね。


「解毒の魔法を施して、無理やり食べると言う手もあるけど?」

「そこまでして食べたくありませんわ。

 だいたい美味しいんですの?」

「さぁ? 食べた事ないから知らない。

 中には毒キノコを食べる事に、快感を感じて食べる強者もいるらしいけど」

「い、いるんですの? そんな奇特な方が?」

「それがいるみたいで、態々そのために治癒術師を雇い入れるような貴族が」


 当たり前の美食に飽きた人間の奇抜な行動なのかはともかく、どこの世界にもそう言う変人はいるらしい。


「んっ、ジュリそこを掘ってみて、良いのが出てくるはずだから」

「此処ですの?」

 ボコッ!


 私が指で示した木の根元近くを、土魔法で掘り起こしたジュリが見つけたのは。


「コレってもしかして…」

「そう、森の黒ダイヤと言われるあのキノコ」

「凄いですけど、よく分かりましたわね」


 そこはそこ、地中レーダの魔法を、一部のキノコや自然薯等に特化して張り巡らせていますからね。

 ちなみに空間レーダーでも同様で、探知内容が複雑な分、探知範囲が狭くなるのが欠点だけど、魔法を多重起動してやれば危険に対する警戒も問題はない。

 おっとノビルが群生しているので、半分ほどゲット。

 ジュリあっちに栗があるはずだから、拾って来て

 アケビに、サルナシ、マタタビ、ヤマボウシ、ナツメ。

 ぼこっっ!

 うん、なかなかに長くて立派な自然薯。何年物だろう?

 とにかく周りのムカゴも回収。


「クルミもありましたわ」


 それ鬼胡桃だから美味しいけど、中の実は小さいし剥くの大変だよぉ〜。

 まぁウチの子達は、全員身体強化持ちだから関係ないけど。

 あっ、白いダイヤも発見。


「ジュリ〜っ、そろそろ移動するから」




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・



「へぇ、こんなに種類が豊富に採れたんだ」

「しかもどれもパンパンに実ってるじゃない。

 私もついて行けば良かったなぁ」


 食べたいのが在ったら言ってねと告げてから収穫物を机の上に並べていると、セレナとラキアは早速、どんな料理ができるか分かる辺り、やっぱり女の子だなと思う。

 その点、男共は収穫物その物には興味があまりないみたい。

 多分、果物系が出ると少し興味が出るんだろうな。

 なので、リンゴに、梨に、ドラゴンフルーツに。


「なんか美味そうだが、山にこんなに実ってたのか?」

「ああ、そうだよな、確かに普通はないよな」


 興味は持ったみたいだけど、別の方に向いたみたい。

 確かに普通の山には、こう言う果実は滅多にないし、ここまで立派なものはまず無いからね。


 大鼠に、鹿に、猪。

 もっとも此れ等は解体済みなので、ブロックだけどね。

 そして……。


「「ひっ」」

「げっ」

「…おい」


 蜂の子数匹と、蜂蜜の詰まった幾つもの大樽。


「ユゥーリィ、コレって?」

「サイズは大きいけど蜂の子だよ。

 こっちは蜂蜜だけど、エリシィーも散々料理で使っているでしょ」

「ああ、あの赤いの、こう言う大きな蜂のなんだ」


 見ての通り、たっぷりあるから気にせずに使ってね。

 蜂の子は早速今夜使おう、トロッとしてて美味しいから。

 生はすぐ痛むから、一度しまうね。


「ユウさん曰く、魔物の領域は美味しい物が沢山あるそうですわ。

 実際、よく探すと、見ての通り多いんですけどね」

「前言取り消すわ、魔物領域なんて命が幾らあっても足りないもの」

「私も流石に無理」

「やっぱ普通の山歩きじゃないと思ったんだよな」

「ユゥーリィだしな、警戒はしてたんだよな」


 酷い言い掛かりだ。

 アドルさん達の件や、この屋敷の件、他にも湯沸器関係の仕事で忙しく、本当に久しぶりの山歩きだったのに、その言い草はないと思う。


「そう言う事言う人達は、【死の大地】産の果物をあげないぞ」

「「「「ぶぅ〜っ、ぶぅ〜っ」」」」

「ぶぅ〜っぶぅ〜っ言うな、もうっ」


 冗談に冗談を返してきた辺り、アドル達も私に染まって来たと言うか、私に合わせてくれている辺り、なんとなく嬉しい。

 何方にしろ【死の大地】産の果物や山菜は、他の魔物の領域とは比べ物にならないほど美味しいので、私も楽しみにしているんですよね。

 ただ、彼処は本気で警戒していないと、本気でヤバイ奴等が闊歩しているので、間違っても今の(・・)アドル達は連れてゆけない場所でもある。

 基本、あの領域は走って駆け抜けるのが鉄則で、あの森を知ってからは、空間移動の魔法の展開に必要な時間が半分になる程鍛えた。……逃げきれない時のための逃亡用にね。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【深夜】



「……」

「……まだ怖い?」

「……ん」

「……そう」


 昼間の事を思い出したのか、まだ僅かに震えているジュリの手を広げて、私の手と重ねあわせて、やさしく握ってあげる。

 私の手も、先程までのジュリの甘えの結果に、力が入らず震えているけど。

 そんなのは、ジュリが今耐えている震えを思ったら気にならない。

 もう一度ジュリ優しく抱きしめる。

 互いに汗ばみ、気持ち悪いけど、それ以上に心地良さがあるのも本当。

 ただ、ジュリが一人ではないと、その震えを打つける相手がいると教えてあげる。


「……もう、大丈夫だから、ね」


 最近は、私の山歩きに無理にでも付いて来るジュリだけど。

 まさか天狐に遭遇するとは予想外すぎた。

 なんとかジュリの手を引っ張って逃げ切ったけど、天狐から受ける圧は、半端じゃなかったなぁ。

 流石はクラーケンよりもランクが二つも上の災厄級の魔物だと言わざるを得ない。

 彼女の心が夜まで持ち堪えたのは、この一年で大分魔物に慣れたり、私の【威 圧】【咆 哮】の魔法に慣れさせてあったと言うのもあるけど、ジュリ自身のプライドだと思う。

 後から来た人達に、みっともない姿を見られたくないと言うね。

 うん、がんばったね。

 ジュリは、一杯、意地を見せれたね。


「ユウさん、ユウさん」

「うん、いいよ。

 ジュリが好きなだけ甘えてくれて」


 それでジュリが怯えなくなら、幾らでも甘えてくれればいい。

 私が辛い時、それでも立っていられたのは、ジュリがいたからだもの。

 ジュリが夜まで耐え切ったように、私もジュリの存在があったからこそ耐えきれた。


「ん。んっ」

「ぅ…ん…」


 だから何度意識が飛んでも、ジュリが抱える不安と怯えを受け止めてあげる。





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― 新着の感想 ―
[一言]主人公も何気に愛深めだな、まぁ身内限定だからかもしれないけど
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