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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第三章 〜新米当主編〜
291/977

291.雀? 私の天敵なので、見敵必殺ですっ!





 くきぇっ。

 きゃこっ。


「と言う訳で、この場所で行っている事は、例え家族であろうとも他言無用。

 本気で国を敵に回す事になりますからね」


 うん、覚悟を決めてアドルさん達を秘密の基地に御招待。

 此処の事は他人には漏らしてはならない秘密だと言って、魔物の繁殖を見せたのだけど……、なんか反応が薄い。

 驚きすぎて反応ができないとか?

 それとも、やっぱり魔物が怖いとか?


「いや、十分に驚いているけど、まぁ、ユゥーリィだし」

「魔物は怖くても、あそこまで家畜化されてたらなぁ、あとユゥーリィだし」

「気をつけるべき事を気をつければ良いだけならね。だってユゥーリィだからね」

「必要な物ならばって言うのも分かるしね。それとユゥーリィらしいと言えるし」


 ……理解してもらって嬉しいのだけど、なにその私だからって言うのは?


「「「「だって、ヘンテコだし」」」」

「がぁ〜〜っん! アドル達にまでヘンテコ言われたっ!」


 なんで、皆んなして人をヘンテコ呼ばわり!?

 私、いろいろ頑張っているだけだよっ。

 魔物の繁殖だって、なるべく安全そうな子を選んでるんだよ。

 うぇ〜ん、エリシィー、皆んなが虐めるぅ。


「はいはい、でもユゥーリィ、ユゥーリィがヘンテコなのは昔からだから」

「ぐぁ〜〜んっ! エリシィーまでっ!」


 でも、甘えさせてくれるから許す。

 うんうん、この感触と温もりは癖になる。と言うかもう癖になっています。

 なのでエリシィーは、エリシィーなしではいられない身体にした責任を取ってくださいね。

 っと、冗談を言い終わったところで、とりあえず落ち着いたので、改めて繁殖のお世話と細かい注意点を説明。

 特に身体強化は必須で油断厳禁っ。

 必ず二人か、それ以上で此処に来る事。

 中では必ず互いを視界の端に入れておく事。


「身体強化はともかく、その辺りは大型家畜の基本だな」

「人手のない田舎とか、小さいところは別だけどね」

「小さくても、危険度は大型家畜の比じゃないしな」

「逆に言うとそれだけだしね」


 まぁ、いつ猪や熊に襲われるか分からない山奥とか、魔物の領域で魔物と遭遇する事を思えば、警戒しておくのは繁殖槽の中だけと思ったら、気は楽だよね。

 でもその気の緩みが死を招くから、気をつけてね。

 もしくは、私みたいに常時魔物の体当たりを受けても平気なようにしておくか。

 ……魔導士でもないのに真面目な顔で無理を言うなと怒られました。

 しかも魔導士でも私以外は平気な顔は無理とジュリに言われる始末。

 注意事項と対策を口にしただけなのに、……解せぬ。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・



 魔物の繁殖槽での仕事の説明を終え、本日の目的の稲刈りをするために、田畑を見せながら移動するのだけど……。


「なぁ彼方此方に大きく丸く無くなっているんだけど、あれってなんだ?」

「喰われました」


 ギモルの田んぼに対しての何気ない質問は、私にとっては腹立たしい事を無神経に聞かれた気分だけど、ギモルに怒ってもしかたのない事。

 ただ、その不機嫌さを隠す事なく声には出しますけどね。


「雀の奴にやられた痕です」


 まったくあの丸々した害鳥め、忌々しい。

 この区域にいる奴は、見かけたら狩っているとは言え、私が此処にいる時間よりいない時間の方が多いですし、奴等は群れで動くため数も多い訳でして。


「雀にしては変じゃねえ?」

「いえ、確かに雀でしたよ。

 現場を押さえて、狩りましたから間違い無いです」


 この辺りを警戒して近寄らなくなって来てはいても、数十匹単位で飛んで来ては稲ごと食んで行きやがりましたからね。

 まぁそれでも被害は三割ほどで済んでいるので、十分過ぎる程の収穫はあるんですけが。


「ああギモルさん、ユウさんが仰ってる雀は皇紅雀(でぼぽ)ですから」

「はぁっ!?」

皇紅雀(でぼぽ)ってあのお化け雀の?」

「確か、人災級よね?

 集団で空から襲って来るから、実質は戦災級と言うアレか?」

「まぁ、ユゥーリィだし」


 ジュリ、例え魔物でも、雀は雀ですから。

 それとラキア、まだそのネタ引っ張ります?

 流石に、もう飽きましたよ。

 とにかく、私とジュリでサクサクって刈り取って行きますから、皆はあの木組にどんどん稲架がけしちゃってくださいね。


「いや、刈り取るってこの広さを? 七人掛かりでも厳しく無いか?」

「何を言っているんです、私達は魔導士ですよ。

 そんなの魔法で直ぐに出来るに決まっています」


 はいはい、ジュリもこの際こう言うの覚えようね。

 【風】属性がなくても、道具があれば刈り取れるでしょう。


 魔導具:除草円月輪(くさかりき)


 フリスビー程の円盤で、真ん中に穴の開いたドーナツ状の刃物に真ん中に魔法石を填めた物だけど、これを力場(フィールド)魔法で操作して操る。

 切るために勢いをつけられると逆に危ないので、群青半獅半鷲ブルー・グリフォンの爪を使って切れ味を増大した上に、填め込んだ魔法石に紅血設定を施す事で、操作性と速度を飛躍的に向上させた物。

 まずは紅血設定をしないまま、私が作業の見本。

 刈った稲をそのまま浮かせて置いて、穂のついていない茎でお尻の部分を縛って、あっちの作業台のに乗せてあげるだけ。

 簡単でしょ、食器とグラスを力場(フィールド)魔法で運ぶのと大差ないからね。


「れ、練習……致しますわ」

「ゆっくりで良いから、怪我をしない、させないでお願いね。

 そう言う訳で、皆んな、ジュリは危ないから近寄らないようにね」

「言い方が悪いですわっ!」

「「「「「は〜〜い」」」」」

「み、皆さんまでっ!?」


 賑やかでよろしい。

 この手の作業は、楽しんでやらないとね。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・



 ぱしゃ〜。

 からんっ。


「此処って天国だわぁ」

「外でお風呂だなんて、どうかと思ったけど、これなら覗かれる心配もないしね」

「そもそも覗くような人がいませんですわ」

「今は二人いるけどね、油断は禁物」


 セレナもラキアも、此処の温泉露天風呂には気に入ったようです。

 元々使う予定もなくノリで作っただけの男湯も、一応は下の棚台で少し離れているし、脱衣所と屋根の関係で此方側から見れないのと同様に、向こう側からも見れない。

 そもそも高低差が結構あるから、女湯は横と後ろさえ塞いでしまえば、覗きようが無い構造なんですよね。

 そう言う訳で、エリシィー、そこは信じてあげようよ。

 崖をよじ登ってまで、覗きになんて来ないと思うよ。

 それにしても、はぁ〜〜、やっぱり温泉はいいなぁ。


「普通に考えたら、毎日、身体を清めるだけでも贅沢な話なんだけどね」

「それを毎日大量の湯に浸かるだなんて、もしかすると王族の方でもないんじゃないのかな?

 薪代とか、大量の水を運ぶ人間とか考えると凄い金額でしょう」


 今度、作りますけどね。

 あと魔導具だから薪代は掛からないし、水も城は元々風車で建物の上まで汲み上げているから、水路さえ作れば人手はさしていらなかったりする。


「お屋敷の魔導具で沸かすにしたって、買うと多分凄い金額だよね?」


 屋敷にある湯沸器は買っても金板貨(せんまん)一枚程と、貴族や裕福層からしたら意外にお買い得価格。

 しかも自分で作ったから、銀板貨(じゅうまん)一枚分の材料代で済んでますよ。

 アーカイブ家に最初に納めた大型湯沸器は金板貨八枚(はっせんまん)と、初物の御祝儀価格と言うべきかなのか、ぼったくり価格と言うべきか人によるかな。

 私はアーカイブ家から依頼を受けたドルク様の商会から依頼を受ける、と言う形だったのが価格が高騰した主な理由で、私の手取りが六割もあったから、申し訳なさすぎて胃が痛い。

 ちなみに、お城に納めるのは白金貨(おく)単位になると思う。

 私がお値段を決める訳ではないので、予想でしかないですけどね。


「そもそも、家に浴室を作る事自体、結構な金額が掛かっているんじゃない?

 エリシィーさん知っている?」

「聞いていない」


 脱衣所に置いてある家具類以外は、全部、この土地で自分で切り出したりした物だから、無料です。

 屋敷のリフォーム自体、かなり格安です。

 見た目さえ多少の目を瞑れば、DIYは正義です。

 便利だけど使った後は邪魔になる治具も、収納の魔法があるので、気にせず作れますからね。

 治具と魔法のおかげで、セミプロレベルの出来ですよ。

 ええ、あくまでプロっぽく見える素人仕事ですけど。

 まぁこの辺りが私の才能の限界といった所です。

 とりあえずお金の事が気になっているようなので、参考までにアーカイブ家の最初の浴室が白金貨一枚半弱(いちおくさんぜん)、今作っている庭園を巻き込んだ露天大浴場が、魔導具抜きで白金貨枚三十枚(さんじゅうおく)ほどの予算で作っている事とかを教えてあげる。


「ぷっ、白金貨(おく)単位って……」

「……流石は、公爵家ですね」


 コンフォード家が、一から建物を作る予定の施設は、高価な白水晶を石材としてふんだんに使った巨大室内露天風呂なので、白金貨百五十枚(ひゃくごじゅうおく)を軽く超えそうな勢いで話が進められていますけどね。

 まぁ高位貴族らしく色々と細部や装飾に拘れば、自然とそうなりますよね。

 屋敷のにしろ、此処の温泉にしろ、ウチは町の銭湯レベルですし、張り合う気は最初からありません。





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