288.私が選んだ道の行方……、今は幸せかな。
【ラキアラ・ドールゼン】視点:
私の名前はラキア、ラキアラ・ドールゼン。
ドールセン家の四女として生を受けた。
四女と言う事から分かるように姉が三人おり、更には兄が六人もいる。
妾の子を入れたらもっと沢山いるけど、正直、いい加減にして欲しいと言うのが本音。
ドールセン家は子爵家ではあっても、そこまで裕福な家ではないのに、ポコポコと作って経済概念がないのかと言いたい。
その辺りは兄妹全員の認識なのだけど、お父様はドールゼン子爵家の当主で、私達はその子供なのだから言ってもどうしようもない。
実際、運が良いだけと言う話もあるしね。
荘園持ちとは言え、武官系法衣子爵家としては、大きくなった子供が多い訳だし、二つ上のギモル兄さん以外の歳の離れた兄達も、誰一人欠ける事なくそれなりの年になっている。
武官系の家の子供は、大抵は半分くらいは欠けてしまうものだからね。
でも結局はその幸運のツケは、下の子供にのし掛かってくる訳で、……正直、私もギモル兄さんも縁故を使った士官も、婿養子や嫁に行く当てがない。
既に使えるツテは使い尽くしてしまったからね。
本当、計画性が無いとは、こう言う事だと思う。
『お前達二人は自分達で何とかしろ、なに、そのための学ぶ機会の場所は用意する』
だから物心つく頃から、そんな事は言われていたけど、ギモル兄さんがその場所に入れる歳になると同時に私も放り込まれたのだけど、幸いな事に、昔から家同士の繋がりがあって、なおかつ同じ境遇だったアドルとセレナも同時期に同じ場所に放り込まれたので、寂しくはなかった。
なにより、こう言う境遇に腐っていても良い事などないし、私も貴族の令嬢としているより、身体を動かしている方が性に合っていたので、自立するために自分を磨く事に疑問を抱く事はなかったというのもある。
『お前達の将来について、大事な話がある』
そんな私達四人に再び転機が訪れたのは、もう将来の設計を立て終え、後は私とセレナが成人して学習院を卒業するまで、勉強をしながら腕を磨くだけと言う段階になった頃。
正直、既に学習院を卒業したアドルとギモル兄さんと共に冒険者としての道を歩んでいたので、実家からの呼び出しは迷惑以外の何者でもない話で、そもそも私達を、家から放り出そうとしていたお父様に、何を今更、此方は予定があるんだから勝手な事を言うなと、かな〜〜〜り遠回しに、貴族の令嬢らしい言葉で伝えたのだけど無駄だった。
貴族の家に生まれた以上、家のために生きろ、それで終わり。
こっちの言う事なんて聞く耳を持たないお父様を、心の中でクソ親父と連呼しながら何度殴った事か。
結局、なんでこう言う呼び出しを受ける事になったかと言うと、私達四人が昔からの顔見知りである理由の三家で代々合同経営している事業。
これが私が生まれた頃から目に見えて落ち込んでいたらしいのだけど、ここ半年でその原因たる理由と言うか問題が発覚。
商会員達が使い込みをしており、その金の大半が裏社会の組織の資金として流出していたようで、おまけに御禁制の品まで商会を隠蓑に密輸していたのも発覚し、どれも三家は関わってはいなくても、商会そのものは三家の物なので、言い逃れができない。
『そ、それって、終わってるのではないですか?』
ギモル兄さんが、青い顔をしてお父様にそう尋ねるのも分かる。
それくらい密輸していた物はヤバイ物で、普通なら関わった者やその家を連座制で問答無用で打ち首になるような奴。
しかも文字通りそんな危険な船を渡っておいて、三家には一銅貨も入っていないと言う道化ぶりなのだから、もう泣くどころか笑い話にしかならない。
『ああ、普通なら当家は終わっていたが、幸い一切関わっていない事が認められてな。
条件次第で減罪の口利きをして貰える上、事業の方も助けて貰える事になった』
つまり親兄姉の生活どころか、命を守りたければ黙って従え、今まで育てて来た恩を忘れたのか、と遠回しに言われたようなもの。
そりゃあお父様、こちらの都合なんて欠片も聞く耳持たない訳だと納得。
はぁ……、残念な事に、私もギモル兄さんも、親兄弟や一族の命が掛かっているのに、そんな物は知った事じゃないと言えるほど薄情ではないし、家を出される件以外には大切にして貰った事は確か。
むしろ家に残る兄や嫁に嫁いだ姉達よりも、愛情を注いで貰っていた。
いずれ家を出て平民になるからとね。
『向こうが言う条件は、お前達の知り合いの護衛として家臣になる事だ。
辞める事も、一切の裏切りも許されない忠臣としてな』
まぁ、家臣なんて物は、一部例外はいるけど、普通はそう言う物だから命を賭けろと言われる事には問題はない。
問題はその私達が剣と槍を預ける相手。
ユゥーリィ・ノベル・シンフェリア子爵。
うん、思いっきり知り合い。
すぐに私とギモル兄さんは、アドルとセレナに合流。
二人共、既に同じような事を言われていたみたいなので話は早い。
ユゥーリィは昨年の春からの知り合いで、色々とお世話になると同時にお世話をしている子でもあり、知り合いと言うより、友達と言っても良い程の付き合い。
友達と言っておいてなんだけど、はっきり言って変わった子だよ。
色なしと言う事を差し引いても、あまりあるほどに変な子。
年齢の割に小さな身体と幼い顔付きだけど、基本的に綺麗な顔立ちの上、笑みを浮かべると可愛いと言う反則物の子。
まぁこれだけなら、あの学習院には他にもいるんだけど。
もう性格も、価値観も、考え方も変わっている上、魔法はもっと変わっている。
ああ、ユゥーリィって言うのは魔導士で、あの歳で魔導具師と言う変わり者。
もう、ヘンテコがいっぱい。
本人は冷めているつもりらしいけど、実際には中々に賑やかな子だよ。
そして、もの凄く良い子。
『なんでしたら、治しましょうか?』
もともと体術の講義の関係で、顔見知り程度ではあったけど、そんな言葉と共に、アドルの大怪我を一瞬で治してくれた。
涙を流すギモル兄さんの悔恨を、楽にしてくれた。
しかも治療費は自分の鍛錬に付き合ってくれるなら、無料で良いと言ってくれた程。
ハッキリ言って鍛錬とは名ばかりのお情けとは思っていたけど、ユゥーリィの望む鍛錬への意気込みは本気の物だったのは意外だったかな。
でも、正直に言わせてもらえれば、お話にならない体力と筋力の無さだったけど、本人は何処までも真面目。
怪我をする事もみっともない姿を晒す事も、全然気にしない根性のある子。
そんな事から始まった私達四人とユゥーリィとの付き合い。
『どう言う事? ユゥーリィが何か手を回したって事?』
『確かに、侯爵様とかお付き合いがあるから、出来ない話ではないだろうけど』
『ないな、あいつは色々と甘いけど、こう言う事は現実主義者だから、雇うならそれ専門に教育をしている家の人間を雇うだろうからな』
だよね、私もそう思う。
皆んなユゥーリィに疑念を浮かべた瞬間、ありえないと答えを出していて敢えて確認のために口にしたと言った感じだもの。
そもそも、ユゥーリィが護衛を必要とするとは思えない。
確かに体力も力もヘナチョコで、武術的センスがないユゥーリィが護衛をと言うのは分かるけど、それは生まれ持った素のままのユゥーリィを見た場合の話。
ユゥーリィは魔導士。
魔法を使って初めてユゥーリィと言える。
そしてハッキリ言って、魔法を使ったユゥーリィは手に負えない。
攻撃魔法を一切使わず、身体強化と盾の魔法だけで戦っても、私達四人掛かりで傷一つ付けられない相手。
以前に、アドルやギモル兄さんより、よっぽど腕が立つ二人組を相手に、もっと厳しい条件で戦っても、ユゥーリィは勝利しているような人だよ。
しかも攻撃魔法があれば、趣味の狩猟と言って、平気で魔物の領域で狩りをしてくるヘンテコを通り過ぎた変人。
戦災級どころか災害級すら狩れるだなんて、凄いとか英雄とかの言葉を通り過ぎた奇人変人。
だって戦災級とか言ったら一匹でも小さな町を滅ぼせるような相手だし、災害級なんて国が軍隊を動かすような相手だよ。
あらゆる犠牲を払う事も厭わない討伐対象としてね。
それを一人で、趣味の狩猟として狩るだなんて奇人変人としか言いようがないと思わない?
普通に考えたら、護衛など必要ないどころか邪魔でしかない。
うん、普通に考えたらの話。
『実際に本人に確認するのが一番だろうが、それまでに一応は答えを出しておく必要はあると思う』
『答えも何も一択でしょう』
『三家の一族が人質みたいな物だしな』
『いや、そう言う問題じゃなくてな』
『あれ、アドルはユゥーリィを信じていないの?』
『あれだけ世話になっておきながら、それはないだろう』
『お前等な、俺は皆んなの纏め役として言っているだけで』
でも、あの子、危なっかしい子なんだよね。
男子に対して警戒心がないと言うのもそうなんだけど、知れば知るほど、危うい子。
それにあれだけ体術を磨いて、対人戦を想定して必死に鍛錬をしているのに悪いけど、ユゥーリィは戦う事に向いていない。
実力が有るとか無いとかではなく、人と戦う事自体が向いていない。
いっつも、おっかなビックリで戦っている。
人を傷つけない巫山戯た形の魔導具を作った事を見ても、その事は明らか。
ユゥーリィは、人を傷つける事を恐れている。
その事で自分が傷つく事も恐れている。
幾ら、あんな魔導具で躊躇いのない攻撃が出来るようになったと言っても、相手を吹き飛ばす方向や、地面に叩きつける角度を気にしている時点で意味がない。
それなりに長い付き合いだからね、振るう拳や立ち向かう目を見ていれば、なんとなく分かってしまった。
『まぁ一人二人じゃ、どうしようもない場面もあるだろうしな』
『素直じゃないわね。守りたいと思える相手で良いじゃない』
『力がある事と振るえる事は別だからな』
だから、ギモル兄さんが言うように、ユゥーリィが拳を振るい難い相手には、私達が振るえば良い。
あの子と違って、私達はもうその段階を踏み越えている。
ならその段階を踏み越えていないユゥーリィを、踏み越えないように守れば良いだけ。
私達四人が選ばれたのは、多分そう言う事。
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まぁ休暇中、色々悩んだ事は、皆んな無駄だったんだけどね。
ユゥーリィは、全くその話には関与しておらず。
私達の話を聞くなり、此処の領主であるコンフォード侯爵家どころか、王城にまで乗り込んで陛下に理由を尋ねたみたい。
結局、ユゥーリィは逆に説得されて、私達は無事に職を得て実家も救われたのだから万々歳。
危険があるのはある程度仕方ないし、冒険者をやっていたって危険はある。
むしろ、こちらの方が、よほど快適な生活と言える。
「ぜぇ〜…、ぜぇ〜…、ぜぇ〜…、ひゃっぱ…き、きつ…く…ひゅぐ」
うん、何時もより厳しくなっていない? と言おうとしたんだと思う。
学習院の鍛錬場から、ユゥーリィが手に入れたばかりの屋敷の庭先に移った早朝鍛錬だけど、少しばかし気合いを入れ過ぎているのは確かかも。
ユゥーリィの体力と筋力の無さは、真面目な話で問題だと思うから、家臣としては何とかしたいと思うじゃない。
そんなふうに始まった新しい生活は、予想以上に厳しい。
別に生活が厳しいと言う意味ではないし、絶えず命のやりとりをしていると言う訳でもなく、単純に忙しいだけ。
それも当たり前か、狩り行ったり冒険者組合の依頼を受けたりとかが無くなっただけで、今まで通り学習院での勉強に加え、それが終わったら直ぐに護衛としての勉強が待っている。
なにせ、護衛と言うのは、唯戦えれば良いと言う訳ではないからね。
教官役として教えてくださっているのは、此処の屋敷の警備に就いた人達だけど、もともと侯爵様の護衛を務めていた程の人達。
もうね、求められる物が段違いな訳で、その厳しさに毎日四人して悲鳴を上げている。
アドルやギモル兄さんは、朝からずっとかと思いきや、私とセレナ同様と言うかそれ以上に座学の勉強もさせられているみたい。
護衛たるもの、幅広い教養も必要だと言われてね。
でも、その分、生活に関しては恵まれている。
「今日も美味いなぁ」
「これ、病みつきになりそう」
「あ〜ん、服が着れなくなっちゃう」
もうね、食事が毎回、超美味しいの♪
ユゥーリィが料理が上手で、美味しいのは知っていたけど、それが毎日なんだよ。
しかもジュリさんの話だと、夕食に同じ料理が出てくる事は月に一度か二度程度だとか。
おまけに、ユゥーリィと知り合ってから知ったお風呂と言うのも毎日入れるし、個室もちゃんと貰えた。
他にも服は下着まで全部支給だよ、私服までもね。
その服も、見た事はない意匠だったけど、格好可愛い服だし、下着だって可愛いもの。
全部ユゥーリィの意匠で、ユゥーリィの所有する服飾店で作って貰っているって言うから凄い。
お金持ちだお金持ちだと思っていたけど、本当にお金持ちだと思う。
詳しい事は知らないけど、同じ子爵家である私達の実家三家を合わせたよりもお金持ちなのは間違いないかと思う。
でも、別に羨ましくはないかな。
だって、ユゥーリィが自分の力で手に入れた物だから、羨ましがる方が失礼と言うもの。
あとユゥーリィが、許可あるまで絶対に外に漏らさないようにと貰った物が凄かった。
もうね、毎月、何日も必死に手揉みして洗わなくて良いと思うと、それだけで嬉しいのに、肌触りも良い上に動きやすいの。
しかも鍛錬していても漏れないから、腹痛と不調さえ我慢すれば、もう月の物なんて怖くない。
今までのは結構動きに支障があったんだよね、ゴワゴワするわ、動くわで。
「そんなに良いの?」
一つだけ年上だけど、月の物がまだなセレナは、この良さが分からないだろうけど、うんその内に分かると思うよ。
肝心の御給金は見習いだから相場より安いと言っても、こう言う環境だからハッキリ言って使い道がないので、貰い過ぎとさえ言える。
衣・食・住、そのどれもが以前に比べたら極上のもの。
教官達曰く、そう言う意味だけで見れば侯爵家よりも恵まれた環境らしい。
だから、その分、死に物狂いになって勉強をし、腕を磨けと言われている。
与えられた物と恩義を返せてこそ、初めて本当の家臣になれると。
うん、それは分かる話しかな。
でも、私としては、家臣としてだけではなく、友人としてもユゥーリィを守りたい。
私と私の大切な人の居場所を、作ってくれた人だから。
「ユウさん、今日は何を作る予定ですか?」
「手伝えば分かるわよ」
「部屋で鍛錬していますわ」
そうそう、そのユゥーリィなんだけど、変わった子ではあるのだけど、恋愛の趣味も変わっていた。
本人達は隠しているつもりだけど、私とセレナは直ぐに分かった。
ええ、この二人、女同士なのに付き合っています。
もともとユゥーリィって、男の子に興味がないなぁと思っていたけど、納得の理由。
以前は冗談で言っていたけど、本当にそっちの人だったんだから、それも当然ね。
かと言って、私やセレナをそう言う目で見ているかと言うと、見ていないので安心。
見ているとしたら寧ろ姉としての目だ。
もうね人の世話を焼きたがるんだよね。
ユゥーリィは私の母親か姉か、と思う時があるくらい口煩い時がある。
正論ばかりだから、何も言えないので仕方ないんだけどね。
まぁそれは置いておいて、ジュリさんを選ぶ辺りもユゥーリィは変わっている。
いえ、ジュリさん良い人ではあるんだよ。
美人でスタイルも良くて努力家で、ちょっと誇りが変に高い所があるけど、それは口だけで実際は優しい人だと言う事はすぐに理解できたんだけど、……もうねユゥーリィを見る目がヤバイの。
あれは執着が強い人間の典型で、相手を愛する事に陶酔する人間。
その辺りはセレナとも意見が一致している。
「ユゥーリィ、三枚におろし終わったけど塩を振って少し置くんだっけ?」
「うん、そしたら出てきた水を丁寧に拭き取って、そうするだけで大分臭みが取れるから」
「それだけで臭みがなくなるんだ」
「シンフェリアの川は清流ばかりだったから、魚に臭みがほとんど無かったものね」
そして、もう一人、エリシィーさん。
ユゥーリィの幼馴染みらしいのだけど、この子もユゥーリィと付き合っているみたい。
二股とは凄いねと思いつつ、それくらいならお父様よりはマシだと思っている。
少なくともお父様と違って、二人を平等に扱おうとしているしね。
そして、この子もヤバくて、ある意味ジュリさんよりヤバイと思っている。
よくジュリさんの事を許しているなぁと思うくらい嫉妬深い子だし、特定の相手に対して庇護欲の塊みたいな子。
たまに自室でセレナと、もしユゥーリィが実家を出ていなかったら、別の意味で行方不明になっていたかもねと巫山戯た例え話が出るほど。
どう言う意味かって、決まっているじゃない。
拉致監禁して、足の腱を切って逃げられないようにして、ず〜〜と二人っきりの部屋で相手を愛するなんて、事件を起こす様な人間。
たまに貴族の婦人や令嬢でもいるんだよね、そう言うの。
大抵は家の力で事実を握り潰されて、甘やかされて育った商家の娘とかがやった事が明るみに出るだけ。
「そう言えば、あの子達まだ元気なのかな?」
「相手もろとも元気らしいわよ」
私とセレナの脳裏に浮かぶのは、二人の共通する知り合いの子達。
ここにいる二人と同じ目をした人間だけど、そう言う事を引き起こしたある伯爵家の子達でもあるんだけど。
「二人とも親に言われるままに嫁いだらしいわ」
「よく大人しく嫁いだわね」
「先方の跡継ぎさえ産めば、自由にして良いと言う条件で。
お相手は薬で種無しにされたらしいけど」
「……つまり関係は続いているのね」
男女の差はあれ、嫁いだ先にまで本当の意味での恋人を、嫁入り道具として持って行くあたりが凄いと思うけど、ある意味貴族らしいと言えば貴族らしい話ではある。
とにかくそんな危険な目をしている二人を選ぶあたり、ユゥーリィはそう言う意味でもヘンテコだと思う。
でもヘンテコに関しては、私も人の事は言えないか。
私が最初に冒険者になる事を選んだのも、今こうしてユゥーリィの家臣になる事を選んだのも、結局は私が好きな人が、その道を選んだ事が最大の理由だもの。
そして、ユゥーリィ達のように私のこの想いが実ったとしても、周りに祝福されるようなものじゃないのも、ある意味一緒と言える。
「ああ、兄さんツマミ喰いしているっ!
もう、あと少しなんだから、ちょっとくらい我慢なさい」
「いや、あまりにも美味しそうだったから、ついっ」
「ついっ、じゃないのっ!
作ってくれる人に感謝を忘れちゃいけないの」
まったく、ギモル兄さんったら、私がちゃんと見ていないと駄目なんだから。




