286.友達? 家臣? 友達ですよ。
長い夏期の長期休暇も、残りが指折りが出来るようになった頃、旅行に出かけていたり、実家に帰っていたりしていた学習院生達が、次々と学習院の門を通るようになり、その中にはアドルさん達の姿も早々にあった。
「ぜぇー…、はぁー…、ぜぇー…、はぁー…、ぁ、ありがとう…ございます」
朝の日課の鍛錬をしていたら、久しぶりに見る顔に、この夏どうしていたかの話に華を咲かせる事もなく、いつものように遠慮なく私を扱き出した四人に、相変わらず鍛錬では容赦がないなと思いつつも、やっと日常が戻って来たのだとも感じてしまう。
「サボっていたのか?
あまり変わってないぞ」
「だな、まぁ、休みだし気持ちは分からない訳ではないな」
「そうそう、ユゥーリィは普段忙しいんだから、休める時はきっちり休まないと」
「でも、戻すのに大変だろうけどね」
ええ、戻すのに大変でしたよ。
そしてやっぱり分かっちゃいますか。
流石は、今年の学園の代表者候補だっただけはあるよね。
家の手伝いがあるからと断ったと聞いているけど。
うん、とりあえず地面に寝転がせて。
もう魔法なしじゃ立っているの限界。
ゴロンッ
緑の絨毯に、背中を預けて、浅い呼吸を何度もする。
深いのは、今は無理。
とりあえず酸素ボンベの魔法を数回。
周囲の大気の温度を魔法で下げて、微風を。
あぁ…、心地良い…。
そうそう、水分補給。
収納の魔法から皆んなの分も出して、こくこくとっ。
「ふはぁ〜〜…、やっと落ち着いた」
呼吸が落ち着き始め、冷たい自家製スポドリを口に流し込んだところに、そう大きく息を吐く私の姿に、周囲が笑みを浮かべる。
それが苦笑なのか、私の言動がおかしかったかは人によるかもしれないけど、そこは気にしない。
周りに笑顔が溢れてくれれば、私はそれで良い。
この後は何時もなら体術鍛錬に移るのだけど、まぁそこは久しぶりに会った訳なので、やっとこさここで夏季休暇中の話が出たりする。
「ポンパドールの領主と宰相閣下との会食って、……うん、誘いに寄らなくて正解だったわ」
「虹色双頭巨亀って災害級だけど、硬さは災厄級とか言われている奴だろ」
「それに魔物の群溢大暴走って、よく生きていたなぁ」
「えっ、撃退!? 嘘でしょ…。あっ、でもユゥーリィなら」
ええ、この夏の旅行中も色々あった訳ですよ。
陛下達の強行視察の件に比べたら、たいした事はないけどね。
あとギモル、幾ら魔物で巨大な亀と言っても、回転しながら空を飛んだりする訳ではないですから、【土】属性魔法で穴と山を同時に瞬間的に作ってあげれば、簡単にひっくり返りますからね。
後は穴の中でひっくり返った魔物の周りを、水を張ると同時に凍らせて動きを封じてあげれば、止めなんて刺したい放題です。
いくら甲羅で魔法が弾かれようとも、手足や尻尾の付け根から攻撃してやれば良いだけです。
あっ、これ、亀の干し肉。
スープの中に入れても良い味が出ますよ。
「「「「食べたのっ!?」」」」
そりゃあ食べるでしょう。亀って美味しいですから。
あと魔物の群溢大暴走と言っても人災級までの小さな規模の物ですし、発見も早かったので避難も早く、被害は村二つと町一つで済みました。
幸い渓谷に近い場所だったので、【土】属性魔法を使って塹壕と防壁を作りながら渓谷に追い込み、後は渓谷や防壁の上から只管弓打ちです。
ジュリは魔法で攻撃していたけど、速射性という意味では弓に敵う物はないからね。
なるべく傷がつかない様にしていたから、短時間で魔物の素材が文字通り山の様に大量ゲット。
問題はその後なんですよね。
領主の館に連れて行かれそうになったので、困りましたよ。
そんなくだらない儀式より、街の中を観光させてと言いたかった。
結局、壊滅した村や町から命からがら逃げ出してきた人達がいたので、その人達の怪我の治療を口実に逃げましたけどね。
むろん、口実にした以上は、キチンと怪我を治して、ついでに炊き出しまでしてきましたよ。
その後は申し訳ないけど、さようならをしてきました。
彼等の生活の責任なんて、とてもじゃないですけど背負えないですからね。
せいぜい、回収した魔物の中でお金になりそうな物を、幾つか置いてくる程度。
それ以外は、比較的順調な旅でしたよ。
追剝や野盗なんて身体強化の魔法を使えば走って逃げれますし、大抵は此方が魔導士だと知るなり逃げて行きますしね。
「ただ国の東側は、意外に治安が乱れているんだなって、つくづく思いました」
まぁ北上しきる前に紛争が広がっていると言う地区にぶつかったので、治安が悪かったのもそれが原因なのかもしれないけど。
「こっちはそれに比べたら平和そのものだよ」
「そっちに比べたら大抵の事は平和だろ」
「だよねぇ」
「どっちを選ぶかと言われたら迷わずこっちだよねえ」
別に私が原因で騒ぎに巻き込まれた訳じゃないのに、酷い言われようである。
と言う事は、そちらも何かあったんですか?
……三家とも、家を揺るがす騒ぎがあったと。
なんでも、四代前から三家で協力していた事業が、このところ不振だったらしいのだけど、冬ぐらい前から目に見えて悪くなっていて、その原因を探っていたら使い込みだったりとかで、三家がその事で喧嘩を始めていたけど、そこへ更には密輸が発覚。
いずれも商会員達が勝手にしていた事で、三家とも直接関わってはいなかったけど、責任問題は免れないらしい。
大変だったんですねぇ。
それ、こちらよりよっぽど酷いじゃないですか。
……町や村が滅びる様な危険は欠片もないって。
いえいえ、家と生活の危機でしょうがっ!
「まぁ、そうなんだけどさ。
家の貴族後見人と言うか、派閥の上の方の家が助けてくれる事になったらしいんだけど」
「事業の方も梃入れしてくれるとまでな」
「……それって、タダじゃないですよね?
まさかセレナとラキアが!?」
「ユゥーリィが心配してくれるのは嬉しいけど、それはないからね。
セレナはともかく、私のところはあるとしたらお姉様達からだろうし」
「ラキア、人ごとだと思ってそういう言い方はないでしょうが。
でも、私が言うのも何だけど、私達の実家と縁を結んでも旨味がないと言うのが本当のところでしょうね」
そりゃあそうだよね。
今の話を聞く限り、三家はどちらかと言うと落ち目の子爵家。
しかも四人とも相続権がほぼ無いと言えるほど、兄や姉が多いから、縁を結ぶとしたら、上からなのが普通。
「おいおい、俺達の心配はしてくれないのかよ」
「そうだぞ、そう言う事もあるからな」
「そっちはどうでも」
「「酷ぇっ」」
アドルさんとギモルさんが言っているのは、婿養子とか言う話ではなく、ツバメとか言うパターンの話。
歳若くソコソコ顔の良い貴族の末子息だと、偶にある話らしい。
子供を産み育てると言う貴族の女性の義務を果たしたため、愛の無い夫との夜よりも、遊ぶ相手や己が嗜虐心を満たすための相手として買われ、飼われる事は決して珍しい事では無いとも聞く。
うん、やっぱりどうでもいいや、男なら自分でなんとかしろと言いたい。
家が絡んだら、どうにもならないだろうけどね。
もっとも今の話だと、そう言う話じゃ無いみたいだからこそ、無責任に言えるんだけど。
「そこでユゥーリィに確認したいんだけど、ユゥーリィが動かした訳じゃ無いよな?」
「ん? 意味が分からないんだけど?」
アドルさんの質問の意味が分からないんだけど、……もしかすると、私がお世話になっている家の人が気を使って、三家の家を助けたとかかな?
いや、でも貴族は明らかな利害がなければ、そこまで動く事はないよね。
そうでなければ、貴族間の秩序が保たれなくなるからね。
むろん、後出しジャンケンで、私の知り合いを助けてやったから、何か利権を寄越せと言い出す輩がないとは言い切れないけど、その手の輩は無視するつもりだし、酷いようなら相談しろ、と後ろ盾になってくれている家の方々からも言われているので、そう言う輩を私が相手にする事はない。
「いや、使い込みにしろ、密輸の件にしろ、発覚がどうも外部からの密告だったみたいでね。
そこに上からの手助けや支援する申し出の話があって、その条件が条件だったからさ」
「ああ、条件が条件だから、俺達も家の人間に散々問いただされてさ」
「ユゥーリィがそんな事をする訳がないって言っても、信じてくれないし」
いったいなの事を言っているのか分からずに、キョトンとしていると、やがてアドルさんが四人の代表として事情を説明してくれる。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
【国王陛下、執務室】
「やあ、君の方から会いに来るだなんて、ついに僕への愛に目覚めたのかな?」
「そう言う、冗談は今はいいです。
ですが、まずは至急にお会いしたいと言う我が儘を聞いて戴き、深くお礼申し上げます」
アドルさん達の話を聞いて、すぐに王都に魔法で移動して、謁見の申し込みをし、流石に今回は約束していない日なので、何日後になるか分からないと思いつつ自室に戻って朝食を食べていた所に、コンフォード家からの使いが訪ねてきて、その日の夕方に会って下さると言う回答がFAXの魔導具を介して知らせが届いたと知らせてくれた。
忙しい陛下が私事に関して謁見を申し込んだにも関わらず、私みたいな小娘相手に、その日の内に時間を作ってくださると言う事は、最初から私がそろそろ訪ねてくると思っていたと言う事。
「まぁ君と僕との間だしね。
私事の相談でも受けるよ。僕は臣下に優しい王だからね」
「ドルク様より陛下に聞けと、伺いましたが」
「ちっ、やっぱりアイツ、僕を売りやがったか」
「お戯れを」
最初からそうなるように仕込んでおいて、何を今更。
この陛下の事だから、このやりとりを楽しんでいるのだろうけど。
私としては今は付き合っている気分じゃない。
「陛下、どのような事情があっての事か、是非とも御説明をお願い申し上げます。
これは陛下との信頼関係に非常に左右する問題です」
これ以上は、のらりくらりと遊ばせないと言うつもりの言葉だし、返答次第では陛下との付き合いを考え直したいとも思っているのは本当だから。
怒りを抑えつつも、脳裏に浮かぶのはアドルさんの言葉。
『その条件として、……家から俺等四人に命令が出たんだ。
君の、ユゥーリィの家臣になれって』
ええ、私は一切知らないし、関わっていない話だ。
彼等を家臣にしたいなんて思った事も、口にした事もない。
どこをどうやったらそうなるのかと思って、一番疑わしいドルク様に問いただしたら、陛下に聞くようにと返事が返ってきた。
陛下は、問い詰める私を困った子供を見るような目で見下ろし、深く溜息をついた後、ゆっくりと口を開き……。
「君、もう少し自分を理解した方が良いよ。
最近は一人増えたみたいだけど、従者一人に侍女一人、そんなのでこの先やっていけると本気で思っているの?」
「今までやってこれました」
「ああ、今まではね。
それは君が注目されていなかったからだけに過ぎない」
無論、そんな事は分かっている。
だからこそ私は警備のしっかりしている学習院に残っている訳だし、その後はあの研究所なり、安全な土地を買って、引き籠るなりすれば良いだけの話。
私は最初から、貴族として生きて行くつもりなんてない訳だからね。
ジュリやエリシィーの二人ぐらいの食い扶持ぐらいは稼げる自信はある。
と言うか、既に一生遊んで暮らせるぐらいの貯蓄は、余裕であったりするけどね。
「だけどね、君以外はどうかな?
あの魔導士の従者の子は歳の割にやるようだけど、所詮は人の枠に収まる程度の子で、幾らでも攫ったり殺したりできるし、もう一人の子なんて言うまでもないだろ。
君一人で本当に守りきれると思っているのかい? いないだろ?
それにね、コンフォードの庇護にしたって、何時迄もと言う訳にはいかないのも分かっているはずだよ。
君が力を示せば示すほど、その事に不満を言う人間は増え、コンフォード家への不満が高くなる」
「……」
その事はなんとなく気がついていた。
空間探知の魔法を見ても、リズドの街では私の知り合いには絶えず監視の目がついていたし、それが護衛も兼ねていると言う事も聞いている。
そしてそれを指示し彼等に給金を払っているのが、コンフォード家だと言う事も。
本来、その手の事はその家でやらないといけない。
私が貴族でない時は、申し訳ないと思いつつも支援者としての支援だと受け入れていたけど、貴族になった今では、その理由はいつまでも通用しない。
言うなれば、今はコンフォード家に甘えているだけの事で、私が作る魔導具を利用したい家からしたら、陛下の言う通り面白くないのは当然だろう。
本来、貴族の家と言うのは、独立した物でないといけないのだから。
それに今のような方法では、護衛としてはあまり意味をなさない。
「それに君、本気で人を傷つけれるの?
殺せるの?」
びくっ。
陛下の言葉に、身体が大きく震える。
自分の小さな手が、真っ赤に染まる光景を幻視してしまう。
「誰かを守ると言う事は、そう言う覚悟が必要だし、複数同時に襲われたら、いつまでも手加減なんて言っていられない。
殺すか殺されるかだ」
怖い……。
自分の手で誰かを傷つけるのが……。
したくない……。
誰かの命を奪う事なんて……。
もしそれをしたら、もう戻れない。
一歩踏み出したら、止まりそうもない。
私は、人でいたいから……。
人を気分次第で命を奪う、そんな存在にはなりたくないから……。
街一つ、簡単に壊滅できる自分の力を、暴走させたくないから……。
「でも、だからと言って」
「自分の手を汚さずに他人に汚させるのが嫌かね?
はっ、笑わせるね。それって、それを生業にしてる人間を全否定だよ」
「べつに、そう言う訳では…」
「護衛を生業にする者達は、その事に誇りを持っている。
恥ずべきは主人に手を汚させる事。
そして最大の屈辱は、己が護衛対象を傷つけさせてしまう事。
そんな者達はね、人を傷つける事を嫌い、それでもそんな者達のために心を痛める主人に信じてもらえない事ほど、悲しいと感じるものなんだ。
聞くけど、その子達、家の命令とはいえ、嫌そうに君に話をもって行ったのかい?
僕の予想だと、納得して君のところに行ったはずだよ。
君は守り甲斐のある主人だからね」
魔物を相手にする事を想定して鍛錬してきたから、鍛錬し直しだと嘆いてはいたけど、確かに不満そうな顔はしていなかった。
「君はね、そろそろ自分の足で歩くための準備を始める頃だよ。
望む望まぬに関係なく、それが貴族の当主になった者の宿命だ。
それでも嫌なら、全てを捨て隠遁するしかないけど、今の君にそれは無理だろ」
何も言えなかった。
全てを捨てるには、私は多くの人と関わり過ぎてしまった。
完成させ世に広めたい魔導具が出来てしまった。
なにより、やっと地獄から抜け出したジュリとエリシィーの生活を守りたい。
私のくだらない拘りなど、それ等の前にはなんの意味をなさない。
現実や周りは、そんな我が儘を私に許してはくれない。
結局、頷くしかないのだと。
友達を家臣にするだなんて、最低な事をしないといけないのだと。
「納得してくれたのなら何よりだ。
どうせ君の周りに置く事になるのなら、君が信頼する人間の方が良いと思って動いた甲斐があったよ。
むろん、彼等の家を嵌めた訳じゃ事だけは言っておくよ。
粗を探して、それを利用しただけだ」
抜け抜けと、アドルさん達の家で起きた事の裏事情を話してくれる陛下に、もう呆れ果てるしかない。
結局、この人は人を困らせ揶揄いたがる悪癖はあるけど、悪意がある訳ではない。
必要な事を、なるべく自分が楽しむ事で一生懸命仕事をしたいだけの事。
国王と言う義務や重責に正面から受け止めるために、自分なりに見つけた楽しみ方なのだと分かるから。
「それと、これ、この間の宿泊料」
そう言って机の引き出しから出したのは、複数の書類。
国が所有する王都の街屋敷の使用権利書?
リズドの街の敷地を含む屋敷の権利書?
えーと、意味が分からないんですけど。
「それだけ人数が増えたら、何時迄も間借りと言う訳にはいかないだろ」
「いや、そうかもしれませんけど」
「城下の街屋敷の管理は国でやっておくから、使いたい時だけ使えば良い。
警備も使う時は城に申請しておけば、即日に騎士団から派遣されるし、他にもそう言う使い方をしている貴族もあるから、君が特別と言う訳ではない。
あの街の屋敷の警備の人間は、コンフォードに言ってあるから、信頼のできる人間を君が雇うように。
多少高いだろうけど、新しく君の家臣になった四人を、護衛として鍛えれる人間を用意しているはずだ」
いえ、それはそれでありがたいのですが、宿泊代って、リズドの街の屋敷の名義が私の物になってますよね?
貸し出しとか賃貸ではないですよね?
「国王、王太子、宰相、国の重鎮を迎え、そのために君程の魔導士を何日も準備に当たらせ、その結果、僕も息子も大変に満足する内容だった。
少なくとも城や他の貴族の家では経験する事が出来ない歓待だ。
視察した施設の内容も含め、それだけの価値はある」
確かに前世でも国賓を迎えるにあたり、何十億も使ったりとか言う話は聞くけど、……あのう、民宿レベルの内容です、基本、放置でしたよ。
……それが良いと。
城や他所では放置なんて味わえないって、危ない性癖でもお持ちでしたっけ?
「あと、こっちは別件で、お仕事の依頼」
……入浴施設の設計と、できれば基礎の部分の制作依頼と。
あの温泉のような雰囲気を味わえて、なおかつ安く済む方が良いと。
いえ、それなら既存の建物を使うのが一番で、バルコニーか屋上を使うのが一番では?
無用心と言うなら、正面には白水晶を立ててれば良い訳ですし、可動式にすれば風も取り込めます。
白水晶も敢えて濁っている物を使っても良いですし、景色を眺めるために透明な物にしたって、二等品三等品でも、魔法を使えれば濁りや筋は消せますので安く済ませれますよ。
湯沸器の魔導具も、城なら魔導士も多いでしょうから大型の物を屋上に設置し、湯を貯めて、そこから各風呂に向かって配管すれば良い訳ですから。
貯水施設や湯船には軽量化の魔法陣を施せば、魔力さえ補充をしておけば、建物への負担も少ないでしょう。
と言うか、いっその事、魔法使いの執務室兼待機室全体に魔法銀の網を全面に仕込んで、魔力の供給源にした方が良くありません?
以前のクラーケンの魔石がまだあるなら、それを魔力貯蔵用の魔法石にすれば、余裕で保つと思いますし、照明の魔導具も魔力伝達コードで繋いでしまえば、各部屋での手間も減りますよ。
部屋の入口の壁に切替機を付ければ、魔力伝達コードを身につける必要もなくなりますから。
「採用。
後日、人を君の所に向かわせるから、同じ話をして進めてくれ。
話を聞くだけでもかなりの予算削減に繋がる上、利便性も上がる素晴らしい案だ」
なにせ、照明の魔導具のためだけに人を置いてある部屋もありますからね。
その人達は流石に解雇にはならないだろうけど、退屈な職務から解放されて、別の仕事に行くだけの話になるだけの事。
新規の採用が減るだけでね。
【豆知識】=========================
魔物の群溢大暴走。
魔物が数百を超える大群を成して、魔物の領海から溢れ出してくる現象を指す。
その群れの構成の殆どが、無害級から人災級と下位の魔物ではあるものの、大群となれば、それは下手な戦災級の魔物単体よりも脅威となる。
何よりも怖いのが、魔物が密集する事で殺意と狂気を含んだ魔素が濃くなり、余程の訓練を経た軍でなければ、その狂気を含んだ魔素の前に人は魂の奥底の根源から恐怖を呼び起こさせられ、心を折られ絶望してしまう。
故に、一度魔物の群溢大暴走が起これば、幾つもの街や都市が魔物の領域に飲み込まれるとされる。
ただ一説には、魔物の群溢大暴走は、魔物の領域の保護機能ではないかとされている。
何故なら、魔物の群溢大暴走が起きるその前に、魔物の領域である森を切り開こうとしたり、大軍で持って魔物の領域を荒らした後に起きているからだ。
それ故に、どの国も魔物の領域に軍を入れる時は、その最大数を二百とし、殆どは百未満の部隊で編成するのが基準となっている。




