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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第三章 〜新米当主編〜
277/977

277.ヤンデル? えっ、普通ですよ。




「ふ〜ん、結局そう言う事になっちゃったのね。

 まぁゆうちゃんが良いなら、良いんだけどね」

「え〜と、軽蔑しないんですか?」

「なんで?」

「いやだって、その……」

「女同士だって事?

 それとも二股掛けているって事?」


 ゔっ……、その両方だって分かっているくせに。

 エリシィーが色々お世話になった件を含めて、あらためて彼女が私の侍女見習い兼、商会の仕事の補佐候補として私が面倒を見る事になった事を報告に来たのだけど。

 まぁ、私としては隠していたつもりのジュリの事がバレていたように、エリシィーとの件も、今日の挨拶代わりに言われてしまった訳で。


「まぁゆうちゃんは、貴族の当主だしね。

 力ある男性が、複数の女性を囲う事は珍しくはないでしょし、その逆だってない訳じゃないもの。

 私だって、旦那がゆうちゃんぐらいの権力と稼ぎがあって、それを求められたら、認めない訳にはいかないかもと思うもの。

 まぁ私の稼ぎも抜けないから、そんな日は来ないけどね」


 貴族を相手にした書店と、一職人では稼ぎの桁が違いますもんね。

 もっともライラさん、その辺りを鼻に掛ける事はしない人だし、旦那さんラブだからその辺りは私が心配するべき事ではない。


「まぁ、女同士と言うのは、結婚が嫌で家を出た事や、全然男の子に興味がなさそうな事から、なんとくそうだろうなぁと思っていたからね。

 そう言う人が、私の知り合いの中にもいない訳ではないし、本人が幸せなら良いんじゃないかなと思うくらい、その知り合いも幸せそうにしているから、普通に受け入れられたわよ」


 この世界の同性愛に関しては、前世の中世のように火刑に処せられるなんて事はないけど、表立って認められるような物でもない。


「……え〜と、そう思っていて、よく以前一緒の布団で寝ましたね?」

「別に、可愛い妹分のためってのもあるけど、ゆうちゃんが私に求めていたのは、半ばお姉さんの身代わりでしょ。なら、なんの問題もないじゃない。

 私とゆうちゃんは、歳が少しだけ離れた大切な友達同士で義姉妹。違う?」


 本当に参った。

 其処まで見抜かれていただなんて、ライラさんの人物に対する観察眼は本当に大した物だと思う。

 旦那さん、絶対に浮気なんて許されないだろうな。

 速攻でバレますよ。


「ただ、心配していたのは、ゆうちゃんの相手の二人の事よ」

「え、なんでです?

 二人とも良い子ですよ」

「はぁ……、本当、分かっていないのね。

 もう今更だけど、あの二人って危ない類の人間よ」


 はぁ?

 ライラさんの言っている意味が本気で分からない。

 別に二人とも、裏町の人間ていう訳でもないですし、身元も確かですよ。

 ……そういう意味じゃないと。


「執着が凄く強い部類の人間なのよ。

 私も似たような物だから分かるけど」

「ライラさんみたいな人なら、好きになられた人は幸せだと思いますけど」

「ありがとう、私もゆうちゃんみたいな人に好きになられても、幸せだと思うわよ。

 って、そう言う事じゃなくて、なんと言うか……、二人に対して怖いとか、黒い物を感じた事はない?」


 ……それは、……あるかも。

 でもそれは仕方ないと思う。

 二人ともあんな過去があったら、暗いものや、狂気染みたものを持つ事だってね。

 だけど二人ともそれを感じさせないぐらい、頑張っているんだもの。

 なら私はそんな二人を、そう言う部分も含めて受け入れるだけ。

 二人が私を受け入れてくれたようにね。

 ……そう言う意味でもないと。


「もう良いわ、其処まで想ってあげれるなら、心配ないと思うけど。

 多分、大変よ」

「人を好きになるんですから、それは当然ですよ」

「ふふっ、それもそうね。

 ああ、あと、これだけは言わせてもらうわ。

 幸せになりなさい。

 誰がなんと言おうと、貴女は貴女の人生を歩めば良いの。

 それだけ、ゆうちゃんはたくさん頑張っているんだから、幸せにならないと駄目よ。

 私はゆうちゃんを応援しているし、味方のつもりだから、何時でも愚痴や相談くらいはするわよ」

「はい、その言葉だけで、とても力強いです」




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【宿舎の自室にて】



 鉄の金型に沿って、銅管の渦を作ってゆく。

 この時、力加減を間違えてシワが寄る程まで折ってしまったり、形状変化の魔法を操り損ねて厚みに偏りが出ないようにしてやるのが大切。

 そうなると、厚さが均一の銅管を作り直すのが大変になる。

 大量に作るなら治具を作れば良いのだけど、まだ試作段階だから、ほぼ手作業と言うか魔法作業なので、手間ばかり掛かってしまう。

 そして、なんとか金型の所まで作り終えて、息を大きく吐き出したところで。


「また何を作り出しているんです?

 随分と大きな物みたいですけど」

「金属の渦が、たくさんね」


 夕食後、魔力鍛錬をしていた二人もキリが付いたのか、そう声を掛けて来るので、この間、試作を兼ねてエリシィーでも使える様にと作った、お風呂場の横に作った湯沸かし器の大容量版だと答える。

 要は、旅行中に頼まれたジル様からの依頼品です。


「それはともかくとして、ジュリ、魔力循環の安定度だけなら、エリシィーの方が上手いってどう言う事かなぁ〜?

 魔力の強さの差を考慮しても、恥ずかしいと思わない?

 魔力を扱う魔導士として」

「ゔっ」


 再会したエリシィーには、それなりの魔力があった。

 私がシンフェリア領に居た頃は、魔力を感知する事自身知らなかったから、仕方ないかもしれないけど、俗に魔力持ちと言う程の魔力の強さを持っている。

 エリシィー曰く、月の物が来た後に感じるようになったとの事なので、一般的な魔力の目覚め方みたい。

 外部魔力は無いらしく、光石は強く光らせれても、一番初歩的な灯の魔法は扱えない。

 ただ、なんとなく、それから力が強くなったと言う事から、無意識に身体強化の魔法を使っていたのだと思う。


「ユゥーリィの真似をしていたから、それが良かったのかな」

「そ、それですわっ。多分」


 光石を使っら魔力操作や瞑想による魔力循環は、シンフェリア領に居た頃にエリシィーにも何度か見せたり話したりしていたから、魔力に目覚めたエリシィーが、その時の記憶を元に鍛錬していてもおかしくは無い話。

 あと、単純に鍛錬の時間の差と集中力の差かな。

 話を聞くに、エリシィーが魔力に目覚めて、光石や瞑想による魔力鍛錬をし始めたのは、私がジュリに出会う前みたいだしね。

 エリシィーは魔導士では無いから、鍛錬に当てる時間が圧倒的にジュリと違うと言っても、その差と言うのは、魔力の溜めや、自在に魔力扱うための練習だったり、魔法の発動やその発動した魔法を制御するの練習だったりと、魔導士としての様々な鍛錬内容に充てる時間だったりする。

 体内における魔力操作と循環しかできないエリシィーは、逆に言うとそれだけを集中してやって来たと言えるので、その密度の差なのだろう。

 おまけに、私を見て来たためなのか、会った頃のジュリと違って、普段の生活をしながら魔力の鍛錬をする事に対する違和感がないみたいだしね。

 身体強化をきちんと使うにしろ、魔導具を使うにしろ魔力制御が出来るのと出来ないのとでは大きく差が出て来るので、ジュリと共に魔力鍛錬をやらしている。

 実際、魔力投入型の身体操作は、そう言った練習量と質の差で、魔導士よりも優れた身体強化持ちの人間と言う人は、それなりにいるらしいからね。


「でも、こうして見ると、ユゥーリィって本当に魔導具師なんだなって思えるかな」

「こんな大物、そうは作らないわよ」

「馬車よりは小さいですけどね」

「えっ、馬車?」


 ジュリ、うるさい。

 余計な事は言わなくていいの。


「あと檻もありましたわね。

 ちょっとした家ぐらいの大きさの」

「家ぐらいの檻って……」


 ジュリ、比較対象が悪すぎ。

 それに檻は魔導具じゃないし。

 魔法石で強化を掛けれるようになっているだけで……まぁ魔導具と言えなくはないか。

 とにかく、今、作っているのは其処まで極端な物ではなく、前世で深夜電力で湯を沸かす設備をもう少し大きくした程度の物。

 大量の水を沸かすために、吸水口と排湯口は一つだけど、中で銅管で幾つも水路を作って分けてあるため、部品数が通常の小型の物に比べてかなり多いだけの話。

 既に作り終えた銅管の渦の山が、机の高さぐらいにまで積み上げられていても、少しもおかしくない。

 これで毎分、八十リットルくらいの湯が沸かせるはず。

 このあと水を混合する水路と接続するので、これだけの能力があればお風呂には十分と言えるし、これ以上大きいと普通の魔力持ちには厳しくなってくる。

 ガスと違って魔法の炎なので、空気との混合もあまり関係なく、周りを断完全に囲って仕舞えば熱効率が良いし、薪やガスと違って煤などで痛む心配も少ない。

 ただ、水量調整や安全装置のために、中型の火の魔法石数個意外に、幾つか小型の魔法石を使う必要があるため、意外に高価な物になってしまった。


「そうそう檻と言えば、明日は朝から行くから、そのつもりでね」

「ユウさん、良いんですか?」

「うん、エリシィーはもう私の大切な家族だし、手伝って貰えるならその方が、ジュリも楽でしょ。

 無論、私は大助かりだけどね」


 魔物の繁殖に関してはともかく、普通の農業に関する経験は、私よりよっぽどエリシィーの方があるからね。

 この際、甘えさせてもらうだけです。





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