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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第三章 〜新米当主編〜
276/977

276.私の答え? ……何か違う気がしますが。





【商会、森の滴、リズド本社】




「どうやら基本は出来ているようですね。

 庶民であの年齢と言う事を考えれば、なかなかの逸材かと」

「ゼルガディス、お世辞はいいから冷徹な判断での評価をお願い。

 私だと、どうしても甘く評価しちゃうから」

「真面目な話、読み書き計算はできるし、一般的な礼儀作法も身につけている。

 大人相手にもハッキリと喋れるし、物怖じしない性格で、顔を作る事もできるのなら、鍛え甲斐はありますね」

「其れはどの程度での話で言っているの?」


 結局、エリシィーは私の側で働きたいと言ってきたので、彼女の要望に応えれるようにするつもり。

 でも身の回りと言っても、さしてやってもらう事はないのだけど、その事で、コッフェルさんやドルク様、そしてヨハンさんからも物言いがついた。

 私が疲れて気分が乗らない時や、ちょっとした時間が欲しい時に何時でも変わってもらえる相手がいるといないのとでは、だいぶ違うのだと。

 まぁそう言われればその通りかな。

 疲れていたり、いつかの時の様に具合が悪い時に、ジュリの面倒を任せられる人がいると思うと、だいぶ心の余裕が違うだろうし、お世話になっている人達が口を揃えてそう言うのならば、そうした方が良いのだろう。

 なによりジュリと違って、家事を安心して任せられるからね。

 でも、そうだとしても結局は、今の私の生活では、やって貰う事など少ないし、料理にしたって、一緒にエリシィーとやって覚えて貰うまで、まだまだ時間が掛かる。

 なら、いっそのこと、私の一般的な方の仕事を手伝って貰った方が、よほど私としては助かる事に気がついたので、私の商会【森の滴】の副商会長であるゼルガディスに彼女を紹介し、少しばかし試してもらった。


「会長の補佐と言うなら、形にするのに一年はください、中身は其れからになりますが」

「そう、方法は任かすけど、遣り過ぎは駄目よ。

 あの子は私のとって大切な子なんだからね」

「多くの貴族を預かり鍛えてきましたゆえに、その辺りはお任せください」




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【商会、女神の翼】



「ドルク様には既にお渡ししておりますが、これが最新の調査結果です」


 ヨハンさんの言葉に、随分と早かったと思うのだけど、もともと私の関係者は殆ど調査対象だったとの事。特にエリシィーに関しては、私と特に仲の良かった人物として、定期的な観察対象になっていたとか。

 その事に思う事がない訳ではないけど、言っても仕方がない事だと納得しておく。

 とにかく渡された紙の束は、何時ぞやのジュリの時の物よりも分厚いのは、地域が別れていたのと、教会が絡んでいるためらしい。

 正直、親友の身元調査した書類なんて見たくもないけど、彼女の雇用者と言う立場的に見ない訳にはいかない。


「彼女自身は、これ以上ないくらい真っ白ですね。

 ただ、問題がない訳ではありません」


 エリシィーの父親は傷害で服役していたけど、春先に模範生として刑期を終えて出所。

 ただ、その元になった傷害事件その物が、教会が絡んだ冤罪らしいと言う事。

 たかが腕の骨折程度の傷害で、九年も労役刑を受ける事自体が不自然。

 まぁその辺りは、教会だけでなく貴族が相手でもよくある話。

 言い方は悪いけど、運が悪かったとしか言いようがないのが、この世界のあり方だったりする。

 とにかく、今はお父様の商会のある支部で、夫婦共に下働きをしているとは言え、教会と関わり過ぎていると言う事。

 実態はともかくとして、教会はエリシィーの父親に仕事を与えていたのに、迷惑を掛けた。

 そんな父親とは別として、路頭に迷う母娘に救いの手を差し伸ばしたのは事実。

 そして、私がエリシィーに出会えたのは、お父様が教会に依頼したとは言え、その教会があってこそ。


「都合の良い事実のみを前に出して、何か言ってくるのは間違いないでしょうね」

「でしょうね。

 研究中ですが、教会向けのネタがない訳ではないので、時間を稼いでもらえれば」

「よろしいので?」


 教会に力を与える事は、陛下も、私に力をお貸しして下さっている方々も、良い顔をしない事は知っている。

 ただ、私が研究している物の中には教会向けの物があり、ある意味、水の魔法石と同レベルの物であり、話の持って行き方次第で、陛下達も納得してくれと確信がある。

 もともと私自身も教会に思うところはあるけど、シンフェリアに居た時の事を思えば、感謝をしていない訳ではないし、恩を売っておけば、馬鹿な狂信者達も押させつけてくれると言う考えもある。

 もっとも、其方はまだまだ時間が掛かるし、魔物の繁殖の方を優先すべき事だから、取引材料としては今のところ無理と言わざるを得ない。

 ただ、私が他の家の人達に技術譲渡しているレベルの物なら、数ヶ月レベルでなんとかなる物がある。

 まぁこれも扱い方次第なんだけどね。


「陛下に相談した上で決めます」

「それならば、私から何かを言う事はありません」


 我ながら卑怯だと思う。

 陛下の考えの結果に、口を挟める訳がないと知っていて言っている訳ですからね。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【宿舎の自室にて】




「うんうん、可愛い♪ 可愛い♪」


 前世のゲームの知識から図案から起こした、エリシィー用の侍女服(めいどふく)の出来栄えも良かったけど。

 追加で依頼した下着も素晴らしく似合っていた。

 やっぱり、こう言う下着は若くて可愛くて子に似合うよね。

 俗に言う、猫ランジェリー。

 胸の谷間に、猫の顔型に切り抜かれ。下の方にも耳の部分がぴょっこり出ているんだよね。

 まぁこの時代の下着なので小さいショーツではなく、ハイウエストなんだけどね。

 丈の長いボクサーショーツやドロワーズが当たり前のこの世界では、ハイウエストだけでも斬新な意匠らしい。

 それなのに、猫ランジェリー。

 ええ、お店の縫子さん達も大興奮でしたよ。

 無論、私も大興奮。

 ジュリとエリシィーが、恥ずかしそうに着てくれながらも見せてくれる姿が、特にね。

 そんなのを目の前にして、興奮しない訳ないじゃないですか。


「ユゥーリィは?」

「二人があれば十分でしょ♪」

「何時も、こうなんですよ。困った事に」

「ふ〜ん。そう、じゃあもう着ない」

「……えっ?」

「ユゥーリィが作ってくれた服を着る条件として、ユゥーリィの分の服も作る事」

「それは良い考えですわね」


 まって、まって、まって!。

 なんでそんな話に、と言うかジュリは何時ぞやの約束の結果でしょ。

 ……十分約束を果たすだけ、服を作ってもらったと。

 ……着ないと言っている訳ではなく、この中で立場的に一番服に気を付けないといけない人間が気にしていないのが問題と。

 いや、だって、まだ着れるのにもったいないし。

 ……それを言うなら、侍女服と寝巻きと普段着があれば十分だし、下着も拘る必要はないって。

 そんな酷いっ。

 せっかく沢山ある意匠図の中で、まずはと思う物を選んて作らせたのに。

 ……選べって、私、そう言う可愛いのは……。




「流石は、ユゥーリィの店だけあるわね」

「ちゃんとユウさんの分を作って、こっそり渡してくれる辺りが分かっていますわね。

 それに細かい所の意匠も、一番熱が入っていますわ」


 ……うぅ、恥ずかしい。

 なんで、中身がオッサンの私がこんな可愛い下着を着けないといけないのかと、本気で泣けてくる。

 それでも、二人がお揃いとか言って喜んでくれるのを見ると、恥ずかしいのも我慢も出来る訳で。

 結局、ジュリとエリシィーに関しては、そのなんと言うか……、二股状態?

 私が、必死に悩んでいる間に、何時の間に二人は其処まで仲良くなったのか、なんと言うか押し切られた。

 前世で、彼女に浮気されて信じられないと言っていたのに、こう言う事になって本当に自分が信じられない気持ちで一杯なのだけど、かと言って何方かを選べるかと言えば、とても選べそうにない自分がいるのも確かで……。

 そんな私の悩みを吹き飛ばすかのように、押し切られました。

 ええ、ベットの上で二人掛かりで。

 一人でも、いい加減おかしくなるのに、二人掛かりだなんて、……もうね、無理、抵抗すらできない。


「言っておくけど、数を増やしたら、どうなるか分かっているわよね?」

「次は三人掛で攻める事になりますわよ」


 翌朝、朝食の席での二人のそんな言葉に、私は心底震えた。

 ……無理。

 二人でも死ぬかと思ったのに、三人掛かりとかになったら、本気で死んじゃいます。

 と言うか、そんなつもりも予定も、欠片もありません。

 でも、この状況って、なんと言うか、私が二股を掛けていると言うより、二人にシェアされている気がするのは気のせい?




 いえ、幸せかと言われたら、幸せなんですけどね。





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