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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第三章 〜新米当主編〜
274/977

274.やっちまった〜〜〜、本当、どうしようか。




 ちゅんっ、ちゅんっ。


 そんな鳥の鳴き声に、ふと目を覚まして身体を起こすけど、重く疲れた身体と、まだしっかりと繋がれた手の温もりに、昨夜の事を思い出す。

 ……思い出すんだけど。


「……うん、どうしよう」


 一年半以上ぶりの親友との再会。

 そして明かされた親友の暗い過去。

 まぁこれはいい、欠片もよくはないけど、今更言ってもどうしようもない事だ。

 

「…ん、ん〜…」


 問題は、幸せそうに眠る親友での事で、……その、まぁなんと言うか、私も彼女も、ああ言う事の後なので、シーツの下は素っ裸な訳で……。

 無論、ただの女同士のスキンシップで、擽りっこの跡な訳ですけど。

 頭の中に浮かぶのは、【どうしよう】の五文字。

 これ、間違いなく、浮気だよね?

 誰がどう見ても浮気になっちゃうよね?

 仮初と言いながらも、なんや感やとジュリと付き合っている訳だし。

 最近では、…と言うか、旅行中にすっかりと慣らされてしまった夜の生活に、このままジュリと付き合うのも良いかと感じていたところに、此れですよ。

 自分の事ながら、呆れると言うか頭が痛くなると言うか。


「ん…ん〜……、ぁっ、おはよう、ユゥーリィ」


 そして一番の問題は、そんな彼女の笑顔に、私が心から喜んでいると言う事。

 二日前の朝にもジュリに同じようにされて、同じく心から喜んでいた事。

 二人とも私にとって、とても大切な人で、掛け替えのない人だと言う事な訳で……。

 幾ら悩んでいようとも、自然と口に出てしまう言葉を嬉しく感じてしまう。


「おはよう、エリシィー」


 当たり前で、大切な言葉を……。





 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 とりあえず答えの出ない事に、何時迄も頭を悩ます時間はないので、昨夜の痕跡を、大慌てで抹消。

 まずは、身体に残った痕跡は治癒魔法で消去。

 キスマークって一応は内出血の一種だから、治癒魔法で簡単に消せるし、甘噛みの跡も此れで消せる事ができる。

 寝具に使っているシーツカバーは、砂漠クラゲを使った防水布と言うか、真逆に使った浸透布で、水の流れを一方向に流す特性を防水布とは逆の方向に使って二重にしてやれば、あら不思議水分は、粗目のシーツにすぐに染み込んで、その中に封じられてしまう。

 下側に折り込んである、滑り止めシートで固定してある部分を解せば、吸い込んだ水はきれいに滑り落ちて排水できるし、当然洗う事もできる。

 ……まぁ、色々あって以前に急遽開発した物です。

 洗濯も乾燥も魔法で一瞬だけど、後で干し場に干しに行くとして、予備をエリシィーに渡してベットメイキングをお願い。

 その間に、私は私で朝食を準備。

 昨夜の影響か、足腰に力が入らないけど其処は其処、身体強化の魔法でこの場を乗り切る。

 朝食は、簡単にパンとスープとサラダにヨーグルトのテンプレ朝食だけではなんなので、フルーツカットの盛り合わせ。

 種類は豊富でも一口サイズなので、無理せずビタミンもミネラルも豊富。

 余りは、また後日に再利用って言っても、これ自身が再利用なんだけどね。

 鮮度も乾燥も関係なしで収納しておける収納の魔法、本気で神の御技だと思う。

 私の中では、結界の魔法の次に、一番使用頻度の高い魔法だからね。

 そんな訳であっという間に朝食タイム。


「まずは、エリシィーに紹介したい人がいるんだけど、私の従者で、今、王都にいるから朝食が済んだら迎えに行くから、少しだけ待っていて欲しいんだけど」

「ええ、もちろん。その間にこの部屋の掃除でもしておくわ。

 部屋の外は、まだ私が一人で彷徨いていたら色々不味いんでしょ」


 うん、まぁそうなんだけど、そんな事態は今日か明日には何とかするので、そう言ってくれると嬉しい。

 そんな私に、エリシィーは何かを思いついたような笑みを浮かべ。


「でもちょっと会うのが楽しみかな」

「うん、良い子だよ、色々と素直じゃない所があるけど」

「あの人の話だと、そう見たいね。

 ただ私が楽しみだと言ったのは、私の事をどう説明するつもりなのかなって、ユゥーリィの彼女さんに」

「ぶほっ!」

「……ユゥーリィ、汚い」


 口元は手で押さえたわよ。

 と言うか、知っていたのっ?

 まてっ、その前に聞いたって、ライラさんに?

 と言うことはライラさんにジュリとの事もバレてるってこと?

 うわぁ…、次どんな顔して会えば良いのよ。

 うん、違う、今問題にすべき事は其処じゃなくて。


私は(・・)いても気にしないわよ。

 ユゥーリィにとって、いないと困る人なんでしょ」


 うん、何か言葉の節々に何かが含まれている気がして、背筋が寒くなる。

 と言うかエリシィー、何か怖いよ。

 怒ってない?

 ……怒っても仕方ない事では怒らないと。

 其れって怒っている事と一緒では?

 ……しつこいと。

 はい、もう言いません。


「私は、ユゥーリィの側に居られれば其れで幸せだから。

 ただ、お世話になりっぱなしと言うのは、私が気に食わないから、ユゥーリィの力になれる事をしたいとは思っているの。

 ……駄目?」


 いえ、駄目じゃないです、むしろ嬉しです。

 でも、その何と言うか、なにかグルグルと身体に巻き付けられたと言うか、首に何かが巻きついているような感じがするのは、私の気のせい?




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 その日は、何とか無事と言えるかどうかは分からない、ジィリとエリシィーの挨拶を終わらせ、お世話になっている服飾店にエリシィーの下着やら普段着を急ぎで発注。

 サラの家具工房で、出来合いのチェストと寝具を買おうをしたら、どれも高位貴族向けの豪華なものばかりだったので、知り合いの家具工房を紹介してもらって購入。

 エリシィーの部屋は、案の定ジュリが私と相部屋など断固反対し、それならジュリが部屋を半分提供すると言ってくれたけど、其れだとあんまりなので、ほぼ使っていないジュリの台所を撤去して床を張り、エリシィーの部屋に魔改造。

 部屋の入り口から短い廊下を作った分ジュリの部屋が、狭くなってしまったけど、其処は問題なしと言ってくれたので、お言葉に甘える。

 まぁ其れでも実質的な私室と言う意味では、広いウォークインクローゼットがそのまま残っているジュリが一番広いんだけどね。

 私の場合、ウォークインクローゼットは半分はお風呂と脱衣所になっているし、台所は三人の共有スペースだし。

 そして夕方には、急いで作ってもらったエリシィーの下着と、おしつけ服を手直しした物が到着。

 きちんとした物は後日改めてだけど、少なくともこの仕事着(めいどふく)ならば、この宿舎の周りを出歩く分には問題ないし、学習院を出て街に行くのも問題はない。

 以前の服だとやっぱり、貴族の子女が暮らすこの学習院では問題があるからね。

 無論、悪戯防止の魔法石を、要所要所に嵌め込んでいると。


「……これ、凄いわね」

「ええ、胸があまり邪魔にならないでしょ。

 これもユウさんが作り出して世に広めた物なんですよ」


 さっそく下着を試すエリシィーに、ズレ防止テープ加工を施した胸当ての素晴らしさを語るジュリ。

 彼方此方では、非常に有難がっているらしいのだけど、あいにくと私はその恩恵を受けた経験がないので、其処まで熱弁されても、はぁ…としか思えない訳なので、適当に聞き流しておく。

 それよりも私としては、仲が良さそうに話しているのが何よりと言うか、その光景を見ながら、本当どうしようかと頭を悩ますばかり。

 何せ、ジュリには親友を面倒を見る事になったとだけで、其れ以外は何も言っていないし、何を言って良いのかも分からない状態ですから。


「世間ではこの下着を齎したユウさんを【巨乳の女神】と称えているそうですわ」

「うるさいよっ」


 ええ、だからと言って、どう見ても側から聞いたら、憐憫の目で見られるような二つ名を黙って聞いていられる訳ではない。

 百歩譲って【巨乳を救った女神】ならともかく、今の私の体型に【巨乳の女神】はあんまりだと思う。

 本当、私の約束された勝利の胸(エクスカリバー)は、どうなったんだろうか。





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