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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第一章 〜幼少期編〜
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26.捻くれ魔導具師と封印されし魔導具。




「……確かにこれなら、誰かの弟子になるのが一番手っ取り早いか」


 ラウンジでアルベルトさん著書の本を軽く目を通し終えたところで、そんな感想を漏らす。

 冒頭であったように、魔導具のほとんど(・・・・)が希少な材料を必要としている。

 私が以前に捕まえたペンペン鳥の翼もその一つで、辺境都市リズドのお肉屋さんも言っていたけど、あれだけ大きな都市でも、年に数度程度しか入荷しないような素材。

 魔物の殆どは何かしらの素材になる物が多いらしいけど、その中で魔導具の材料になる物は限られている。

 それらを手にするためには、多くのコネや伝手が必要で、それは一代ではなかなか築けるようなものではないため、その伝手を持っている者を頼るのが一番確実であり、魔導具の作成や研究も早く進むと。

 確かに道理ね。

 魔導具は道具である以上、材料がなければどうしようもない。

 そしてその材料の入手が、素人では手が出しようがないレベル。


「でも逆に言うと、それだけの事なんだよね」


 魔導具の理屈そのものよりも、材料の入手経路を確立する事が一番の最難関。

 あとは魔導具を作る才能があるかどうかだけど、アルベルトさん曰く作る才能どうこうより、作れる才能があるかだそうだ。

 魔導具を作る才能そのものは、魔法使いの才能に比べれば、ぐんっと下がるらしいけど、高度な魔導具を作るためには、魔法使いの才能が不可欠だとも書いてある。

 逆に言うと、この世界と言うか、この国の基準で言う高度な魔導具(・・・・・・)を作る必要がないのであれば、比較的入手しやすい材料で魔導具を作る事は可能だともとれる。

 今の私には、それが分かれば十分であり、寧ろこの本を言葉の裏の意味を理解した上で読めば、丁寧な入門書であると思う。

 あと、これだけは言いたい。


「幾ら危険な情報だからって、難しい技術書に見せかけた暗号で書かれた技術書なんて、気が付くわけないでしょっ!」


 はぁっ、はぁっ、はぁ~~~……。

 思いっきり感情に任せて叫んだおかげで、全身の力が抜ける。

 なんと言うか、脱力感が半端ない。

 アルベルトさんが書いた入門書の最後の方にこう記載されていた。


『魔導具師の研究書や技術書は内容的に危険な物が多いため、安全性を配慮して暗号化された文章になっている事が多いから気を付けるように。

 旅行記風な物や恋愛小説風の物もどうかと思うけど、魔法の技術書風の物なんて紛らわしすぎて意味が分からない。

 まぁ僕の愛読書の中に似たような悪質な本があるけど、なんで魔導具師と言う人種はこうも捻くれた変人が多いんだろうね。僕には理解できない世界だ。

 これを読んでいる君は、そんな世界に飛び込むつもりだろうから、頑張って捻くれてくれたまえ』


 本当に最後まで挑戦的な書き方の書物だった。

 あとアルベルトさん、貴方も十分に変人の領域に踏み込んでいると思いますよ。

 ええ、間違いないです。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 秋の収穫ともなった人手の確保や作業の管理。

 収穫し終えたものから加工や保管、はては商人へと売却。

 そしてそれらに伴う収入や税金の管理。

 忙しくする寮内中の人間とシンフェリア家の中、相変わらず私は比較的楽をさせて貰っている。

 今の私に任された仕事は、基本的に帳簿の管理などの仕事で、数値の変化や整合性を見るだけのお仕事。

 計算が不得意な人達が多いこの世界では、大変な仕事かもしれないけど、数字に強いのが当たり前の前世の記憶がある自分にとっては、この程度は楽な仕事でしかない。

 そんな訳で、片手間に光石を粉にしながら、光石を使った魔力制御の練習を更に片手間に思案中。

 魔力循環制御を常態化に慣れてきた今なら、これくらいの事は可能になった。


「うーん」


 唸りながらも目を向けているのは、手の指に挟まって次々と色を変えて光ってゆく光石と、マイクロレベルまで擦り潰された光石。

 化粧品、装飾品、服飾品。幾つかの使い道はできたけど、あくまで贅沢品の類のもの。

 この鉱物には、まだまだ可能性がある気がする。

 魔力を通すだけで眩しくはない程度にほんのりと光る。

 米粒以下の大きさならば、肌に触れているだけで。


「うん、やってみるか」


 ラウンジから庭に出て、敷地の片隅の方に向かう。

 そのついでに花壇に使っているレンガの予備も拝借し、周りの安全を確認してレンガを適用に四方を囲むように組み上げる。

 中身のレンガに魔法で少しだけ窪みを幾つか作り、其処へ光石の粉を入れ。


「炎と風の輪舞よ」


 ぶっつけ本番の魔法だというのもあって、イメージの補完のために敢えて呪文を口にする。

 レンガで組んだのは、簡易的な炉。

 炉の入口の中で魔法の炎に一方向から風をぶつけ、更に炉の出口から周りの空気を巻き込むように上空へと風を送る。

 炉としては効率は良くないけど、実験だから魔力任せで炉の温度を上げてやると、あっさりと融点を迎えはじめた光石の粉は、液体と化した部分はプルプルとその表面を揺らしているのがレンガの隙間から窺える。

 それを観察しながら、慎重に力場魔法で融解した光石を操作し移動させ、温度を上げてはそれを繰り返す。

 やがて最初の窪みから、別の窪みに移動した四つの光石の融解液に、思いっきり魔力を込めて圧力を掛けた後、今度は分子の周りを激しく飛び回る電子のイメージを止まる間近にまでイメージしながら魔力を流し込む。

 夏に飲み物を冷やすのに便利な冷却魔法だけど、外気温など関係なく物質そのものを冷やす事ができるため、冷却割れを引き起こす心配が少ない。


「これで完成かな」


 目の前には、四個の光石。

 ただし、融点に差がある状態のものを、圧力をかけて無理やり結晶化させたもの。

 問題は、この状態で光石としての特性が、どう変化するのかだ。

 四つとも光石としての特性を失ったでも、それはそれで構わない。

 こういう事をしたら、そういう変化をしたと判れば、実験結果としては十分。

 そもそも一度で上手く行くとは思っていない。

 

「三つとも、特性はまったく失ってしまったと。

 こうなると四つ目も駄目かな」


 そう思った矢先、私は思わず目を瞑る。

 目に差し込む強い刺激に、瞑らざる得なかったからだ。

 刺激の正体。それは眩しすぎるほどの白い光。

 これは、まさかの成功?

 その石は一番最初に溶け出した部分だけを取り出し、圧力を掛けて結晶化させた物。


「ガス封入とか無しで、これとはね」


 光石の特性をもたらす物質だけを、自然鉱物である光石から取り出せないか。

 だけど結晶化には様々な条件や方法があるため、一番単純な方法を取り敢えず試してみよう。

 その程度の考えで始めたのだけど、いきなり当たりを引くとは思わなかった。

 光石の名称の割に、その結晶は魔力を帯びなければ、黒水晶(モリオン)の様にも見えるけど、やや透明度があるため紫水晶(アメジスト)の様にも見える。

 うん、厨二病心が騒ぐ。


「もう一度くらいは、確認用のための実験は必要だよね?」 


 理論武装完了。

 そんな訳で、先ほどより多い量の光石の粉を炉にセットし、今度は原子と分子が綺麗に梯子状に揃うイメージをしながら、限界まで圧縮をかけて完成させたのが六角柱型の水晶(クリスタル)

 ええ、某えふえふゲームに出てくるアレを模した物です。

 先程のが、指先程なのに対して一握り程もある。

 しかも光り方が格好いいっ!

 魔力の与え方によって、四方に伸びる光の線の端が、虹色に色を変えながら輝いている。

 光石の秘めたる力に感動がせざる得ない。まさか此処までとはっ!


「………封印だね。悔しいけど」


 感動が絶好調になった所で、ある事に気がつく。

 この水晶に見える結晶石には製法に問題がある。

 今の方法では領内では私しか作れないし、そうすると色々とバレる。

 私としては平穏に暮らしてゆくのが望みなので、それは嬉しくないし避けたい事態。


「なかなか、上手い事いかないな。

 はぁ……」







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― 新着の感想 ―
あとアルベルトさん、貴方も十分に変人に領域に踏み込んでいると思いますよ。  ええ、間違いないです。 この文章「変人の領域」ではないですか?
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