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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第二章 〜少女期編〜
169/977

169.王都での観光にはしゃぐ少年。見慣れているはずですよね?





「繰り返しになりますが、集まっていただいた皆様には申し訳ありませんが、今年の合同演習は中止となりました事をお知らせします。

 宿舎は予定通りの期日までは、使用していただいて構いませんが、許可あるまで本日の外出はお控えくださるようにお願いいたします」


 各地の学習院の代表者による合同演習の魔法部門。

 開催日当日に、まさかの開催中止のお知らせに、集められた会場の一つである広場での説明に、周りは騒然とする。

 それも当然だと思う。

 実際、この演習の成果を持って、自分を売り込もうとしている人達はかなりいると聞いているからね。

 自分の将来が掛かっている人達からしたら、係の人に喰いつかんばかりに説明を求めているのも分からない話では無い。


「これって、やっぱり貴女・」

「ジュリ」


 迂闊な事を言おうとする彼女を、私の声が強く押し留める。

 せめて周りを見て言って欲しい。

 今そんな事が周りにバレたら、周りの非難が私に集中してしまう。

 ジュリの憶測にはなるけど、今回の突然の中止騒動の原因の半分は、私ではないかなんて事を、声に出して貰いたくない。

 無論、誤解ないように言っておくけど、例えそうであったとしても、私は純粋な被害者であって元凶ではない。


「侯爵様、かなりお怒りだったから、こうなるのも当然かな」

「面子を潰されたような物ですからね」


 中止なら、此処に留まっていても仕方ないので、お世話になっているにシュヴァルト様の街屋敷に足を運びながら、先程の続きの話をするのだけど。

 なんの話かと言うと、昨日の明け方の事が発端では無いかという事。

 空が明るくなりかける少し前に、念のため睡眠中でも掛けておいた、空間レーダーの魔法に不審な反応。

 この魔法の睡眠中の展開は、まだ慣れないためか睡眠が浅くなるのが欠点なので、少しばかり手荒い歓迎をしてしまいました。

 でも仕方ないと思いますよ。

 中身は男だとはいえ、一応は幼くてもレディーの寝室の天井裏に潜んで来るなんて非常識な行動でしたからね。

 隣で静かに寝息を立てるジュリもいた事ですし、思わず天井裏に音響爆弾の魔法を打ち込んじゃいました。


「夜も空けない内に、あんな爆音を屋敷中に響かせてしまったから、きっと近所迷惑だったかなと反省」

「反省すべきはそこでは無いと思いますけど、大事(おおごと)になったのは事実ですよね」


 力加減を間違えた音響爆弾の爆音は、広い屋敷どころか、しっかりと敷地の外にまで響き渡っていたようで、王都に居を構える侯爵邸が何者かによって襲撃される、そんな噂が広まってしまう事を防げない原因となってしまった。

 これがシュヴァルト様の、侯爵としての誇りと面子に泥を塗られたようで、昨日の朝から大変ご立腹状態。

 ガスチーニ侯爵邸の警備は不審者の侵入を許すような甘い警備。

 しかもその不審者を客室まで近づけた挙句に、客人が撃退するまで誰も気がつかなかった。

 と言う噂が、……うん、拙いよね。

 侵入者の方が上手だっただけなんだけど、客観的に見たら、そう言う事実になるとドルク様もそう仰っていた。


「さらに拙い事に、私達が彼処に泊まっているのを知っているのは、シュヴァルト様の関係者と、その前に一晩だけ泊まっていた宿舎関係者」

「学習院関係者か、魔導士ギルド関係者、考えてみれば、其れどころじゃなくなりますわね」


 シュヴァルト様の関係者は、はっきり言って可能性は少ない。

 侯爵家に仕えるメリットを考えたら、裏切りはデメリットしかないし、関係者の護衛は簡易的でしかないと言っても、すぐさま動ける程の時間はなかったはず。

 なにせ、私とシュヴァルト様との接点なんて、つい先日まで無かったのだから仕込みをしようがない。

 そして、それは師団の方も同様。

 元々魔物の討伐という任務の特性上、危険が多いだけでなく部隊が全滅する危険もある仕事だと言う事もあって仲間意識が強く、裏切りは本人だけではなく家にまで波及する。

 地方はともかく、王都の師団は貴族で構成されているから、その辺りの意識は殊の外強いらしい。


「今頃、関係者全員拘束されて取り調べ中ですわね」

「たぶん学院生も、ある程度調べられるんじゃないかな。

 外出は控えるようにって、言っていたから」

「ああ、あれはそういう意味でしたのね」


 被害者である私達は取り調べ対象外ではあると思うけどね。

 もっとも、昨日の騒動の時に、既に取り調べを受けたようなものだけど。

 天井裏を音響爆弾を炸裂させた後、侵入者がいる天井を魔法で切り抜いて、気絶している侵入者を確保したまでは良かったけど、その後が大変だった。

 私とジュリは当然ながら寝巻き姿で、飛び起きたジュリなんて、寝相のせいか、あられもない姿をしていた。

 ええ、ポロリに加えペロリです。

 ジュリは身長以外にも十三歳には見えない程に育ってますから、私にとって眼福状態ではあるけど、そこへ警備の方達が部屋に飛び込んでくる始末。

 女性隊員の方はともかく、男性隊員は全員、部屋に足を踏み入れた瞬間に空気砲の魔法で外に吹き飛ばしましたから、その光景を見て勘違いした隊員が、更に余計に騒ぎを大きくしてしまった。

 私としては、ジュリの半裸を、男の視線に晒す訳にはいかなかっただけなのにね。


「そう言う訳で、半分はジュリが原因と」

「酷い言い掛かりですわっ」

「では見られても良かったと?」


 私の意地悪な質問に、彼女はあの時の格好を思い出したのか、顔を少し赤く染めながら、顔をぷいっと背けてしまう。

 うんうん、こう言うところは、大人びた見た目とは違って、まだ年相応で可愛いなぁと思ってしまう。

 私としては、殺伐とした世界ヘ足を踏み入れようと思う彼女を止めたいけど、彼女の将来を決めるのは彼女自身。

 彼女の決めた道を応援する事は出来ても、止める権利もなければ、止めても意味がないだろうから。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 結局、その日はシュヴァルト様のお屋敷で、魔物討伐師団のお姉様方のお話を聞いたり、日課の魔力鍛錬や研究に勤しみ、次の日から観光に勤しむのだけど。

 あいにくと一番楽しみにしていた教会の大聖堂は、大規模な改修工事で観れずじまい。

 代わりに使っている古いけど歴史ある建物を観て回ったけど、やはり其方はどちらかと言うと普段のミサ用といった感じだったため、観光向けとしては開放していないため、外観しか見せてもらえなかった。

 他にもいくつかの観光名所を回ったり、本屋さんを回ったり市場や工房街をジュリやヴィー達に案内してもらえたので、それなりに王都の観光は楽しめたのだけど。

 ……本屋さんに、私が書いた本の専用コーナーがあって、思わず引いちゃいましたよ。

 だってね、挿し絵の写し絵が私ぐらいの大きさで、幾つか飾ってある上、それも売り物だと言うのだから驚きです。

 ああ…ジュリ買おうとしないの、持ち帰るのに困るでしょ。

 他にも少し困ったのが……。


『美味しいレストランがあるんだけど、今夜そこで食事でもどう? 

 良いワインも揃っているから』

『侯爵様の家で用意されているので結構です。

 それに、未成年にお酒を進めてどうするんですか』


 全く未成年にお酒を勧めるだなんて、ヴィーは何を考えているのか。

 その場でお説教です。




『演劇でも』

『眠くなるし、その手の物って、お約束を知らないと楽しめないですよね?』


 田舎の男爵家の次女に、その手の教養がある訳がないじゃないですか。

 あっ、ジュリは知っている演劇ですか。ではお二人で…って、流石によく知らないヴィーとは行けませんよね。




『お花ですか?

 嫌いじゃないですし、実家ではよく面倒を見てましたよ。心が和みますからね。

 以前戴いた物も、ドライフラワーにして香りを楽しみましたし』

『じゃあ』

『でも正直言うと、面倒くさいのが本音ですね。

 すでにある物は可愛がりますけど、新たに貰うのはちょっと。

 それにシュヴァルト様のお屋敷にお世話になっている以上、貰っても御迷惑をかける事になるだけですから』


 ある程度親しくなった女性に花を贈るのは、貴族の男性として嗜みなのは分かりますけど、そう言う気遣いは不要であって欲しい。

 なにより、幾ら子供相手だと言っても、もしヴィーを慕う女性に誤解をされたりしたら、またどんなヤッカミを受ける事になるか。




『もう一度手合わせをっ!』

『良いですよ』

 ドガッガッ。


 最初から此方も攻撃しても良い事と、二人の持つ剣が木剣から本物になった以外は、前回と同じ条件の模擬仕合。

 私も、ルシードの街の広場で見た、路上舞踏から思いついた事を試したくて受けたのだけど、結果は見ての通り。

 何やらヤケクソ気味のヴィーだったけど、踊りというか舞踏(ダンス)を活かした私の動きに戸惑って、あっさりと決着。

 そもそも攻撃魔法禁止や魔導具禁止は一緒だけど、前回と違って、一定時間攻撃禁止、盾の魔法の制限、この二つの条件が無ければ、戦略の幅がだいぶ違ってくる。

 なにより……。


『……ヴィー、ジッタ、私だってその武器に対する対策はしてますよ』


 高周波振動刃には、より高い周波数を用いたブロック魔法を前にしては、最早唯の剣でしかなく、身体強化した程度の威力では、私のブロック魔法を打ち破る事はできない。

 確かに以前より強いと感じたし、振るわれた剣は鋭く、怖さも感じた。

 でも、逆に言うとそれだけの事。

 痛いのは嫌なので、防御力に極振りしたような私のブロック魔法は伊達じゃないですよ。

 結局、私にあっさり負けたのが相当悔しかったのか、酷く落ち込んでいるヴィーを、ジッタや騎士団の先輩方が慰めていたので、少し大人気なかったかなと反省。

 お詫びに何かヴィーが望む事をと言ったら、一日付き合って欲しいと言われたので、狩りならばと了承したのだけど。

 生憎と急遽の討伐遠征が入り、別の部隊と入れ替わるようにして出立。

 結局、私達もすぐに帰路についたので、そのままヴィーとジッタとのお別れとなってしまったのだけど。




 よくよく考えたら、討伐に一緒に行っていたら、狩りに行った事になったかも。

 まぁ、済んでしまった事だし、どうでもいいか。





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鈍感、系?てかよくあきらめないな
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