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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第二章 〜少女期編〜
124/977

124.私、拐われるだけの、かよわい女の子じゃ無いですよ。

2020-06-19 04時 前話の123話に124話の内容を間違って投稿していましたので、修正投稿しました。





 体内の魔力循環と魔力回路の鍛錬、その意図とコツ、それからイメージの補完として、図での説明もしてあげたので、しばらく此れ等を徹底するようにとアドバイス。

 私が試行錯誤していた時と違って、要点をまとめた内容なので、彼女の努力と理解度次第ではあるけど、私が思っている以上に早く形にはなるとは思う。

 ジュリが理解出来るまで付き合ってあげたおかげで、次の商業学の講義も自主休講する羽目になって、少しばかり自己反省中。

 あの講義が此処の学院で一番面白くて、ためになるのに……。

 

「それにしても、まさかあんな小脇に抱えられて運ばれるだなんて」


 ジュリは時折強引な所があると思っていたけど、あれはその極みだったかな。

 後ろから駆けて来たのがジュリだって思ったら、あっと言うまだったからね。

 魔法を使えなければ、私は簡単にお持ち帰りされてしまうのだと思うと、少しだけ怖くなる。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




「そう言う訳で、どう対応したらいいでしょうか?」

「……ごめん最初から」

「……こっちがどう対応していいか分からないから」

「前から思っていたけど、彼女って変わっているよな」

「外見が外見だけに中身の印象が」


 相談を持ち掛けたのは、ここ最近、朝の日課の後に体術の指導をしてくれているセレナとラキア。

 愛称の呼び捨てで良いと言うので、最近はこっちで呼ばせてもらっている。

 ついでに凸凹コンビの男二人組は、何か失礼な事を言った気がするので此処は無視。

 あっ、ラキアに脛を蹴られていて痛そう。

 でも治しませんよ自業自得なので。


「いえね、この間、後ろから来た人に小脇に抱えられて連れ去られて、寝台にまで連れ込まれたので」

「なっ!」

「ちょっ!」

「まてっ!」

「おいっ!」

「犯人はお友達の女の子で、強引ではあったけど、ごく普通の用があるからだったんですけどね。

 寝台だったのは私の部屋にソファーが無いため、優しく私を置く場所として、寝台が選ばれただけです」


 つい反応を楽しんでしまったけど、そう事態の時の対処を聞きたかったので、嘘は言っていない。

 そう言う訳で心配させて、ごめんなさい。

 セレナ、拳骨で蟀谷(こめかみ)をグリグリするのは、本気で痛いから止めてください。


「そう言う事なら、あるかもね」

「痴漢も十分にありえるよね、ユゥーリィ、見た目は大人しそうに見えるから」

「中身もか弱いし」

「自分で言うな」

「筋力と言う意味なら、確かにな」


 一般的な痴漢への対応は前世の知識で知ってはいるけど、いきなり小脇に抱えられて連れ去られるのは、最初から想定していない。

 前世でも実際は、事後捜査でその場対応できないのが殆どで、その場でとなると大抵が善良な市民による救助の結果であり、それ以外となると結局は手遅れだと言うのが実情だった。


「聞くまでもないけど、今まで護身術は?」

「痴漢撃退方法の知識だけ」

「どんな方法?」

「こう後ろから抱きつかれたりした場合とか」

「兄さんやってみて」

「なんで俺がっ」

「さっき失礼なこと言った罰よ。

 あとフリだからね、間違っても本気で触っちゃ駄目よ」

「当たり前だろ、少しは兄を信じろっ」


 うん、ギモルさんとラキアの兄妹は何時も仲が良くて微笑ましくなる。

 私が捨ててしまった関係(もの)だから余計に、羨ましくなるし、いつまでも仲良くいて欲しいとも思ってしまう。

 だからかな、つい油断してしまった。

 普通痴漢というと、後ろから抱きつくようなものだし、先程もそう言ったのでそう来るとばかり思っていた。

 うん、身長差的に無理ですよね。

 だから後ろから腰に手を回され、一気に持ち上げられたお陰で、踵で足を踏んで、肘で金的なんて真似はできるはずもなく。


「ひっ」

「ぐっ…ぅっ!」

 

 右手一本で腰から持ち上げられ、暴れるのを抑えるように回された左手が、私の太腿に触れた途端、ゾワリとした感触と共に、右足元にブロック魔法を発生させ、それを足場に左足に体重を乗せて後ろへと蹴り上げ……、

 ごめんなさい。

 いくら私が小柄で軽いと言っても、三十キロ以上ありますから、痛くない訳がないですよね。

 えっ痛いじゃなくて衝撃がって、えーと身体強化の魔法は掛けてなかったと思うので、そこまでではないはずですが……。

 治癒魔法ですか、私のせいですから掛けますよ。


「このクソ兄貴っ!」

「冗談に決まっているだろっ!

 と言うか、ユゥーリィもこういう手に引っかかるな。

 つぅ…いかん叫んだら、衝撃が響く」

「ギモル最低」

「お前な、流石にどうかと思うぞ」


 まぁ、ギモルさんが振りとはいえ、何がやりたいかは分かったけど。


「言っておきますけど、近いに越した事は無いですけど、別に患部そのものに触る必要はないんですよ。

 皆さんが何を想像したかは敢えて聞きませんが」


 ええ、例え振りじゃなかったとしても、誰が触りますか。

 前世で男の時だって人のモノに触れたいとは欠片も思った事もないのに、今世では尚更のこと。

 なので最初から別の所のつもりでいたのに、何か勝手に騒ぎ出した四人をつい優しく見守ってしまう。

 ええ、恥ずかしい想像をし、男性陣に八つ当たりしているセレナとラキアが可愛いなぁと思っていた訳ではないですよ。

 一通り騒いだというか、此方に逃げ出してきた男性陣を一応擁護する形で、受け入れます。

 え? 演技の振りじゃないかも?

 そんな訳ないですよ、私、ギモルさんを信じてますから。

 ほら男の子って時と場所を考えずに、女の子を揶揄(からか)いたがる生き物ですし、口にしたり想像したりするだけですから。

 だから信じてます。

 ギモルさんに、そんな度胸がある訳がないって。


「ぐはっ」

「よかったね兄さん。信じてもらえて」

「少しも嬉しくないわ!」


 擁護してあげたのに落ち込まれてしまいました。

 本気の言葉だったのに残念です。


「でも、ユゥーリィ、意外に良い動きしたから驚いたよ」

「空中で体重の乗った蹴りって、私やラキアだって難しいのに」

「そうよね。

 ……でも何か動きが不自然だったような?」

「ラキアの言う通り失敗です。

 魔法を使ってしまいましたから、鍛錬になりません」

「「「……え?」」」

 

 私の言葉に、何故か驚きの声を上げる四人。

 あれ? 言ってませんでしたっけ?

 魔法を使えない状況や、下手に使って相手に怪我をさせたくない時の訓練だって事。

 そもそも身体強化をより効率よく使うためにも、素の状態の動きをキチンと鍛えたいって事。


「聞いていないし」

「聞いてねえな」

「聞いてないよね」

「聞いてないわ」


 すみません、言い忘れていたようです。

 でも、私魔導士だって言いましたよね?

 ……治癒しか碌に使えない魔導士だと思っていたと。

 でも、鍛えたいとは言っていましたよ。

 無論、これからも魔法なしでの基礎の動きを鍛えるつもりです

 痛いの嫌ですけど、痛い思いをするからこそ、覚えられる事もありますから。


「根性あるわね、気に入ったわ」

「そうよね。

 ウチ等みたいに武官系貴族の生まれじゃないのに、なかなか無いよね」

「人の事を野蛮人と蔑む奴らもいるから」

「じゃあ自分達は何が出来るのよっ。て言いたいわよね」

「可愛けりゃ、腹の中が幾ら黒くても許されると思っているし」

「ドレス着てなきゃ、気品を保てない連中が、何を言っているんだかって感じよね」

「自分では何一つ出来ないって事を、自覚していない奴に言われるとムカつくし」


 うん、何かスイッチを入れてしまったようですが、今は放っておきましょう。

 アドルさんとギモルさん、二人を止めなくて良いんですか?

 声が小さいうちは放っておくと、それもそうですね。

 それで話は戻って、ああ言う拉致されそうになった時の対策として何があるでしょう?

 ……私の体格と筋力だと、拉致されないように気をつけるか、隙を見て逃げ出すしか無いと。

 本気で?

 ……そうですか、本気で無いですか。

 だから護衛や、付き人が存在する訳ですね。


「ちなみに魔法が使える場合は、どうするんだ?

 魔導師の攻撃魔法っていうのは、他人が触れていると発動しにくいと聞くぞ」

「別に発動しにくいだけで、発動はしますよ。

 試してみます?

 攻撃魔法以外でも、対応手段は沢山ありますから」


 アドルさん、こう私を小脇に抱えてみてください。


「軽っ、お前、ちゃんと食べてるのか?」

「食べてますよ。量は少なめですけど。

 あと、行きますね」


 鍛錬中は意識して外してあるけど、今は皮膚の上に張ってある結界魔法を、一瞬で強化し膨張させる事によって、アドルさんの体と腕は私を抱える事などできなくなり、互いに弾き飛ばされてしまう。


「んなっ!」

「他にも方法はありますけど、こんな感じですね」


 魔導士の弱点とされる、他者との接触状態の魔法の発動。

 それは互いの魔力の固有波長の違いによる、魔法の崩壊だけど、強固なイメージがあれば崩壊までの時間は数秒だけ保たせられる。

 その数秒さえあれば例え接触部分の結界が崩壊していようが、その内側から次々と結界を発生してやれば良いだけの話。

 もっとも、その数秒ですらも、相手が強固な魔法や強い魔力を込めた身体強化系の一撃を受ければ、結界に込めた魔力量次第では、更に結界の崩壊を速めてしまうけどね。

 だから私は、普段から最低でも三重の結界を張っている。

 防御用、日除け用、虫除け用と……性質は違えど結界は結界です。


「なるほどな、本当にあらゆる事態を想定して、鍛えたいって言う訳か。

 可愛い顔して、俺等よりよっぽど考えているとはな」

「折角、こう言った環境にいるのですから、学べる事は学んでおきたいと思いまして。

 利用するようで申し訳ないとは思いますけど」

「別に良いんじゃねえか、お互い利用し利用されるている訳だしな。

 それに、どうやら治療を受けれる以外にも、色々と勉強になりそうだしな」






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