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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第二章 〜少女期編〜
123/977

123.魔法の砲撃訓練より、魔法の土台作りの方が大切です。

投稿時間を変えた方が良いというアドバイスをいただいたので、他作者の投稿時間を参照に変えてみました。





「朝、講義へ向かう私を、否応なしに強引に引っ攫われ。

 こんな誰もいない密室で、ベッドに放り込まれた私の運命は如何に?」

「言い方っ! まるで私が誘拐犯の変質者みたいじゃないっ!」

「でも傍から見たら?」

「……多少強引だったのは認めますわ」


 角狼(コルファー)の一件の翌朝、魔法の実技講習に向かう私を、ジュリが後ろから追いかけて来たと思ったら、人の腰に手を廻して、そのまま荷物を運ぶかのようにUターン。

 宿舎の私の部屋の寝台へと優しく置かれたのだけど。

 傍から見たら間違いなく誘拐だと思う、しかも悪戯目的の変質者。

 あとその事で部屋を出かける時に鍵をかけ忘れていた事に気が付き、今度は、魔導具でオートロックを作れないか試してみようと思う。


「あのう、講義は?」

「貴女にあの実技内容が意味あるとは思えないのだけど」

「いえいえ、皆さんの魔力を感じる良い練習になっているんですよ」

「貴女だけ実技内容が違う事は認めるのね」


 確かに、魔法の射撃訓練と言う意味では、あの講義はほぼ無意味ではあるけど、偏狭教育とはいえ、実戦経験のある人の話はそれなりに勉強にはなっていましたよ。

 最近は同じ事ばかり言っていて、あまり参考になってはいませんが。


「それは悪かったわ。

 今度、美味しいお店を教えるから、今日は付き合って頂戴」

「教えてくれるだけですか?」

「奢らせて戴くわ」

「三回分」

「……二回分で」

「手を打ちましょう」


 こう見えて彼女、この街の飲食店に関しての情報は詳しい。

 それも貴族専用の高級店などではなく、屋台を含む庶民の味が売りのお店や、お菓子や甘い物のお店まで。

 私より半年以上も早くこの街に来ていると言うのもあるけど、単純に彼女は外食が多いと言う理由からなのだと思う。

 外食が多い理由は、彼女の名誉のために言わないでおくけどね。

 ただ、昨日の件があるまで、私の食事の手伝いをしようと思わなかった事から、察してやってほしいとだけ。


「大丈夫ですよ~。

 高くて美味しい物より、安くても工夫してある料理の方が楽しみですから」

「変わっているわね。

 普通は高くて美味しい物を好む物じゃないの?」

「自分と違う料理って勉強になりますからね。

 なんならスラムにある店でも大丈夫ですよ。

 ある意味、挑戦的な食べ物が出てきそうで楽しみです」

「そんな所、私が全力で遠慮させてもらうわよっ」

「では私の希望って事で」

「行かないからっ!」

「……残念です」


 お肉屋さんに教えてもらったモツ煮の件もあるし、前世の料理の記憶の揺り起こしにも良いと思ったのですが残念です。

 あと自分が女の子だって事自覚しなさいって言われても、前世で男の記憶を持つ私に言われてもと思うけど、残念ながら今朝から嫌でも自覚中です。

 ええ、毎月の事ですが、せめて一年に一回くらいにしてほしいですね。

 昨夜、何処となく気が立っていたのも、もしかしてその前兆だったのかもしれない。


「じゃあ探索は一人で行くとして、魔力を無駄にしている件ですよね?」

「そうだけど、その前に行くのは止めなさい、……と言うか行くなら、絶対に声を掛けなさい」


 なにかまだ言っているジュリを、分かりましたとだけ言って放っておいて、収納の魔法から魔法銀(ミスリル)と光石を取り出し。

 作業机の上に、魔法銀を形状変化の魔法で長めの串状にした物を九本を、だいたい五ミリ間隔で並べ、その先端に光石をそれぞれ置いてから、反対側の魔法銀の先端には触れずに、魔法銀から少し離れたところに手を置いてから、魔力の糸で魔力を流し込み、真ん中の光石のみを光らせて見せる。


「今みたいにやってみてください」

「え、こんなので何が?」


 疑問に思いながらも、やって見せた彼女の結果は散々な物。


「えっ? なんで?」

「良いですよ何度でも、たぶん現状では何度やっても同じですから」


 何度挑戦してみても、魔力の紐が他の魔法銀の串に触れてしまい、九個の光石は全て光ってしまっている。

 むろんこれは一例でしかないけど、私の魔力の紐が糸並みに細いのに対し、彼女のそれは紐を通り過ぎて板と言うか丸太?

 大きな攻撃魔法を発動させるのは良いけど、魔法を維持させるのに、そこまでの魔力は必要ない。

 必要なのは魔力を流せる量よりも、発動させた魔法を維持して遠くに持って行くための強度。

 そしてその強度も彼女は弱いのか、極太の魔力の紐の端から、ボロボロと魔力が零れ落ち、大気中へと還っていっている。

 本当に、そう言う意味では彼女への魔力感知の練習は、良い実験台だった。

 その様子を、意匠図帳に描いて見せてあげると。


「……ぇ……?」


 うん、流石にショックだったみたい。

 多少、デフォルメさせたとはいえ、私が指先からレーザー光みたいな物を出しているイラストに対し、彼女のは体全体から出している極太ビームと言うか、過電粒子砲状態。

 そして、その三分の一ぐらいの太さのビームを放っているのが、他の実技講義を受けている子達。

 え? 極太ビームの真ん中の細い白い線ですか?

 これがジュリの魔力の紐の本体で、あとはほぼ大気中に還ってしまう物で、魔法への変換効率もこんな感じですね。

 だいたい二割もいってません。

 あくまで私が感じた魔力感知での私見ですけど。


「基本的にイメージの構築が甘いのだと思います」

「してるわよ、魔法だってちゃんと発動しているわ」

「しっかりしているのなら、魔力が此処まで零れ落ちる訳がありません。

 甘いから零れ落ちるんです。

 それに、魔力を伝達するための道をキチンとイメージしていますか?

 どんな感じでイメージで魔力を伝えています?」

「そ、それは…」

「口で説明出来ないような曖昧なイメージと言う事ですね。

 ちなみに私は魔力の紐と呼んでいますが、これを体の中にも外にも幻視できるくぐらいに強いイメージをして使っています」


 イメージが曖昧だから、自分の魔力がどれだけ漏れているか分からない。

 私が魔力の感知が出来なかったように、認識できない物は知覚できない。

 かつて幼い私が、魔力を魔力だと認識できなかったように。


「そこまでする必要が……」

「魔法は想像の産物です。

 その想像が曖昧なら、発動した魔法も曖昧であって当たり前です。

 それでもあれだけの魔法を放てるのは、純粋にジュリの才能なのでしょうし、命中率が比較的高いのも努力の賜物なのでしょう」


 詳しい事は知らないけど、ジュリ達が学んでいるやり方は、おそらく即戦力になるやり方で、とにかく攻撃魔法を放てれば良いと言う考えに近いのではないだろうか。

 この世界の魔法の本質は、想像力と魔力制御で、攻撃魔法はその一端でしかない。

 ただ、書物などの知識の中には、ちゃんとそれなりの事が書かれているから、おそらくはジュリの生まれ育った場所が、それを求められる生活環境だったか、それともジュリに基礎を教えた人物が、そう言う教え方しか知らなかったかだと思う。

 此処の魔法の実技講義の教官みたいな人間にね。

 だから彼女にだけは、ハッキリ言っておいた方が良いかもしれない。


「なんにしろ攻撃魔法の威力を上げるにしろ、持久力を付けるにしろ、イメージの構築力と魔力制御が要です。

 命中精度を上げたり、攻撃の軌道を工夫するなどの練習にはともかく、漠然と攻撃魔法を放つ遣り方は、そう言う意味では方向性が間違っているとしか思えませんね」


 目的が違えば、遣り方も変わるのは当然の事。

 想像でしかないけど、あの講義はあくまで実践形式に近い物を求めた実技講習であって、魔法を使いこなすための実技講習ではないだろう。

 あっ、思いっきり落ち込んでますね。

 いくつか身に覚えがあると、最初あった時の自信ぶりは凄かったですからね。

 私、あの時驚きましたよ。

 いいえ、いきなり的を吹き飛ばされた事じゃなくて、まるで本の世界の人みたいな人がいるんだって、敢えてどんなとかは言いませんけどね。

 あっ、言っているのと同じと。


「取り敢えず魔力制御を頑張りましょう」


 魔力制御の自信が付けば、魔法の構築に必要な想像力も身について行きますからね。






2020-06-19 本文内容が124話になっていたものを修正

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― 新着の感想 ―
個人的には重い設定のほうがそそr(死、、、
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