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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第二章 〜少女期編〜
109/977

109.私、学園生活を楽しんでますよ。ボッチですが。





 ことっ。


 たった今、作り終えたばかりの魔導具を机にそっと置いて、そこにある魔力の流れの安定を感じ取る。

 ジュリエッタさんに教えてもらった、他人の魔力の流れを感じる事。

 そう意識すると、前より鮮明に分かる様になり、今では自分の魔力であれば、魔導具に魔力を流し込まなくても、そこに秘められた魔力の流れの安定さが分かる。

 とくっとくっと、おそらく元となった魔石の波長に合わせた揺らぎが確かにあるけど、……かなり気をつけないと分からない。


 魔導具:異境界を繋ぎし魔棒ボーダー・ライン・ロッド


 装飾ギルドからの依頼で、納める予定の魔導具です。

 元は私が持ち込んだ物なのは確かだけど、なぜか話が大きくなってしまい、断るに断れなくなってしまった。

 ええ、断ったら最悪、全ての作業が此方に来かねない様子らしいですので、そんな社畜生活は真っ平御免です。前世だけで十分です。

 そう言う訳で私の平穏な生活のために、これくらいは作りますよ、お金にもなりますし。

 依頼を受けたのは、先ずは二百と言う事でしたが、効果の安定性も寿命も定かで無い品物を高額で納めれないと言う、私も譲れない拘りがあるので、取り敢えず二十本を先行試作品として納品。

 その後、効果を確認して残りの制作という事にして貰った。

 ええ、相手も大喜びですよ。

 やはりその辺りの不安はあったみたいですからね。

 此方としても試験の繰り返しをせずに済みますから、ウィンウィンです。


「明日の講義が終わったら、届けるとして、今日は本でも探してみるかな」


 そう言って足を向けたのは、学院の敷地にある書籍棟。

 棟と言っても美術館を思わせる建物ですので、絢爛豪華です。

 流石は上位貴族の子女が使うために、態々用意されただけはあると思う。

 中もゆったりとしていて、蔵書量もこう言っては悪いけど、ライラさんのお店とは比べ物にならないほどの量。

 問題は半分以上が娯楽関係という所と、本の整理が少しばかりいい加減だと言う事なんですけどね。

 なにせ学生、しかも貴族の子女が使う施設ですから、出鱈目に戻す事もしばしばで、職員さんが見廻りながら整理してはいるものの、整理が追いつかない状況。


「あっ、ご苦労様です、この本、少し良いですか?」


 すれ違う女性職員を捕まえて、その手に持っていた植物関連の本を見せてもらう事にする。

 ええ、植物の中には薬や素材になる物も多いですから勉強です。

 入力がなければ、出力はありえませんからね。

 そう言えば、ここの図書館でなくて書籍棟ですが、もっと分かりやすく整理しないんですか?

 例えば、この本がどの棚に収められていたとか。

 それが出来れば苦労はしないって、背表紙に色の着いた物を貼るとかすれば。

 えっ、詳しく教えて欲しいと?

 背表紙の上隅に色違いの紙、…は痛むので布を貼り付けて、棚にも同じ色を。そうすればかなり分かりやすくなると思います。

 別に色でなくても花とかでも良いですし、赤薔薇の棚、青薔薇の棚とか、軍略や兵法の本を集めた棚には、剣と盾の図柄を色違いで。

 あっ、上に相談ですか、苦労が少しでも楽になると良いですね。

 あと、本は利用者に返させずに、返却用の棚を作るとかどうですか?

 手間が増えて面倒ですが、下手に変な所に返されるよりはマシですし、その……プライドの高い方も、自分のために返してくれる者がいると思わせておいた方が、扱いやすいとは思いませんか?


「それにしても、此処にもあるだなんて、ダントンさん達、頑張っているなぁ」


 以前は外が明るい間だけだったらしいけど、この春から二十四時間営業になったのは、天井付近に、幾つもぶら下がって明るい光を照らしているシャンデリア。

 冬前に公開したばかりなのに、こんな所にまで普及しているだなんて。

 ああ、公爵家からの寄贈品ですか、お子様が通っているためと。

 親心ですねぇ。

 でも、そのお子様は此処を使った事がないと。

 話は戻りますけど、昼夜共になんて大変ではないですか?

 三交代で空いている時間は、本が読み放題の夢の職場と。

 本が好きなんですね。

 此処の職場への希望者は、それなりに多いと。

 引き留めていてすみません、色々と教えて戴き有難うございます。


 適当な場所に移動して読書。

 持ってきた鞄の中から、帳面と砂時計を取り出す。

 帳面は書き覚え様の物で、砂時計は私が熱中してしまいすぎないために、以前に失敗したトレース台の硝子屑から作り出した物。

 この世界は時計が無いから、だいたいの感覚で一時間ほどの物で、魔導具化して砂の落ちる量と時間は均一になる様に調整してある。


 魔導具:試しの砂時計。


 試作品ですから、そのまんまの意味ですけどね。

 だけど、どうやら私の付ける魔導具の名前は、評判が悪いみたい。

 ラフェルさんが纏めてくれた、トレース台の魔導具に対する改善希望要求も、一番に上がっているのが魔導具の名称変更で、あとは大した改善要望はなく半分以上は愚痴に近い要望かな。

 そんな物は個々には聞いていられないので無視して、必要な物だけ再度リストアップしてある。

 そう言う訳で名称変更は却下の方針。


「ふぅ……」


 そして気が付けば目の前の砂時計の砂は、三回目が落ち切ろうとしている。

 途中、砂が落ちきっている事に、気が付かなかった事もあるので、少なくとも三時間は経っている事になる。

 照明の魔導具のおかげで、昼夜を気にせずに本を読める環境は良い物だけど、逆に時間を忘れて不規則な生活に成りやすいのが欠点かな。

 建物の外は既に茜色に染まっているので、今日は残念だけど此処までにしておく。

 一応、使えそうな植物とその特性はリストアップしたので、今が止め時ではあるかな。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 腕輪の収納の魔法から、骨から取ったスープをベースに、ジャガイモとホウレン草のスープ、同じくホウレン草と香草のお浸し、メインに蒸し鶏に自作のレモンバターでコクを出して、香草御ソース掛け、あとは白パンを半分。

 品数は多いけど、基本的にはどれも少量ずつ。

 ある程度量を作らないと味が出ないので、その分は器に入れて収納の魔法で保管。

 何時でも作り立てが出せるので大変に便利で、しかも楽が出来る。

 収納の魔法は、最近は大事な物は収納の鞄で、紛失しても被害が少ない物は取り出しやすい、腕輪の魔導具で固定してある収納の魔法にと使い分けている。


「ん~♪ 美味しいい。

 バターでコクを出ししているのに、レモンの酸味が程よくさっぱり感を出して、香草の苦みがアクセントになっていい感じに仕上がったと思う。

 でも、そろそろ煮込み料理が恋しいから、今度、作り置きように頑張るかな」




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【体術学】



「はぁ……、はぁ……、はぁ……」


 汗が滝のように流れるのを感じながらも、必死に呼吸を整える。

 朝の食事前の日課、さして広くない鍛錬場を二周しただけでこの体たらくです。

 体術の講義では、ウォーミングアップで平気で十周以上を走る人がいると言うのに、自分が情けなるけど、こればかりは地道にやっていくしかない。

 はっきり言って体術の講義では、私は邪魔者以外の何物でもなく、課せられた課題も私用にかなりレベルを落とされた内容。

 ええ、ほぼボッチです。

 唯一は、丸めた布の棒の攻撃を避ける練習で、袋叩きに遭う時かな。

 え?魔法ですか? 魔法が使えない状況の時のための訓練ですから、使ったら意味がないです。ええ自己目標設定ですよ。

 全身運動の舞踏(ダンス)も、目標はフルバージョンを踊り切る事です。

 取り敢えずは三回分けから、二回分けへと挑戦中ですが。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【一般社会学】



 一般社会学は、回数を追う毎に真面(まとも)な内容になってきているようなので安心。

 私の知らない常識とかもあるので、大変に勉強になります。

 地域毎にある風習とかも面白いですよね。

 そうなった経緯や理由のたびに話が大きく脱線してしまいますが、それはそれで参考になる事も多いです。

 あのう、その地区の奇習って、私の実家の地域ですよね、そんな奇習聞いた事ないですけど。

 どうやらデマも混じっているようなので、注意が必要です。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【商業学】




 商業学は、一般客としての交渉のルールや作法など、貴族目線、平民目線と、立場を変えながらの話や実例は、本当に参考になります。

 他にも、最新の各地の特産品の話とか、商人にとって情報は商売の種ですもんね。

 あっ、化粧品やドレスの話も出ている。それ去年の話ではと突っ込んでいる女生徒達。

 さすが流行には敏感ですね。

 でも今の光舞ドレスは、魔導師でなくても魔力持ちの方なら使えますよ。

 ええ、本当です。

 ああ、ご両親におねだりしますか。

 此処って、そう言う生活から抜け出すための場所では? とは流石に聞けなかったです。






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