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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
1019/1024

1019.いきなり物騒な挨拶を受けました。欠片も効きませんけど。





 結界越しに炸裂する火球魔法を眺めながら、よく魔力が錬られた火球魔法だと思うと同時に、この船に掛けられていた(・・・・・・・)結界の強度を見極めたと感心する。

 幾つもの攻撃魔法を一点集中する事で多層結界を破り、同時に私を暗殺する事でシンフォニア王国に伝わる事を防ごうとしたって所かな?

 だとしたら考えが甘い。

 結界を使う対魔物用の戦術の一つではあるけれど、前提条件が変わる事を想定していない。

 私が乗っているのだから結界を強化しているのは当然だし、魔法の発動は事前に探知していたから、攻撃を受けた場所には爆音で耳がやられないように、結界に細工を施すくらい余裕はあった。

 魔物だって、それくらいの工夫をするものは存在するわ。

 まぁかなり上位の魔物になるけれどね。

 取り敢えずこれで先方が直接他国の貴人である私に対して、宣言もなしに攻撃を仕掛けたって事になる。

 態々口実をくれるだなんて、とても親切だわ。


話の最中に一方(・・・・・・・)的に攻撃をする(・・・・・・・)、此れが貴国として(・・・・・)の返答か?」


 手をさっと振ると同時に、火球魔法で発生した熱気と煙を【風】属性の魔法で散らす。

 こういった演出もハッタリになるから、面倒臭がらずにしっかりとしておく。

 あと戦争をしたい訳ではないので、確認を取る形で相手に言い訳が出来る隙を与えるのは忘れない。


「い、いや、どうやら何か間違いがあったようだ。

 この場を臨時で預かる私としては、攻撃をする意図はなかった。

 謝罪をする故に、どうか慈悲で以てお許し来下さるよう願う」


 臨時ねぇ〜、使いしての駒の間違いではないの?

 今はそれを気にすべき時ではないか。


「まぁよかろう、間違いは(・・・・)誰にでもあるからな。

 さて、現場を碌に纏められぬ程度の者を相手にしていても、無駄な時間(・・・・・)ばかりが過ぎて埒があかぬ。

 国から戴いた物を紛失(・・)した事にも同情しよう。

 だが証拠もなし(・・・・・)に疑われたままでは不愉快故、話ぐらいは聞いてもやろうではないか。

 周囲の船を引かせよ、今より港へ向かう。

 上の者に茶でも用意しておくように伝えるがよい」


 音声拡声の魔法で相手どころか、遠く見える港町にまで届かせた私の言葉に、向こうは焦っているだろうなぁ

 ジル様、そこで意地が悪い事を考えたな、とか誤解を招く事を口にしないで下さいね。

 此方の船が強行突破出来ないように、衆人環視の耳目を利用したのは向こうが先。

 なら此方もそれを利用して、より詳細に多くの人が分かるように港町中にいる人間に声を届けた所で、非難される謂れはないもの。

 ましてや相手は試合形式に見せ掛けて此方の船を湾内に閉じ込めたり、会話中に攻撃を仕掛けてくるなど、騙し討ちの二連発ですよ。

 周囲の大きな船が離れて行くのを見届けてからジル様に声を掛ける。


「此れで相手を話し合いの場に、此方の有利で引きずり出せるでしょう」


 当然ながら、話し合いの場には私が行くけど、その間に船を無防備にする気はないし、相手を船の上に上げる気もない。


「此方が足を運ぶのかね?

 敵陣の中になるのだが、その意味を分かっての事であろうな」

「その程度の事は、別に珍しい事ではないでしょう。

 相手を乗船させる方が、相手に口実を与える切っ掛けになりかねません」

「それに空間移動の魔法がある、か?」


 ジル様の言葉にそのまま頷く。

 逃げようと思えば何時でも逃げられる。

 それを言ったら、停船中である今なら、船ごと空間移動する事だって可能だ。

 空間移動のための門を、船の下に生み出せば良いだけだからね。

 もっとも、現状でそれをやるのは悪手以外の何ものでもないのでやらない。

 なにより我が家の船に手を出したのだもの、もう少し恥を掻いて貰わないとね。


「アインフォース卿、船を港に接舷させる必要はない。

 追加の結界の魔導具を置いて行く、船首を沖に向けた儘、私達が戻るまで待機せよ」

「了解しました、お帰りをお待ちしております。」

「アルディス、護衛として三十を連れて行く、頼めるか?」

「はっ、ルシオンに船の直衛を命じたいと思います。

 つきましては追加の応援をお願い出来るでしょうか」


 返事をするように空間移動の魔法を領軍基地に繋ぐと、さっそくとばかりに伝令を受けた騎士が入り込む。

 船が動いていたら、空間移動の魔法を用いた移動は危険でやれないから、今の内にすませておく。

 港までまだ時間が掛かるから、それまでに準備を終える事は出来るでしょう。

 まったく、うろちょろと周囲の小型船や小船が鬱陶しい。

 話し合いに応じる姿勢を見せる為に併走するつもりなんでしょうけれど、此方の船の運航に邪魔である事には違いない。

 国際法上、小型船が躱す事になっているため蹴散らした所で問題はないのだけど、話を大きくしたい訳ではないので我慢しておく。

 船足の違いもあるから、何だかんだと港に近付くにつれて減っていったからね。

 まったく、お姉様やライラさんを屋敷に招いている言うのに、なんでこんな事に付き合わされないといけないのか。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




「「「うぉぉぉっ!」」」

「な、なんだっ!」

「急に現れたぞっ!」


 予定通り、船を接舷させる事なく空間移動の魔法で港に上陸。

 この程度の距離なら、マーキングの魔法を用いなくても、はっきりと視認さえ出来れば空間を繋ぐ事は可能。

 空間移動の魔法でも高等技術らしいけれど、要はちょっとした工夫と慣れと練習の問題。

 それよりも船を止める際、アインフォース卿が帆に受ける風と船速を利用して、その場で船尾を流して反転するなどと言う、高等操船技術を用いたお茶目を相手に見せ付けてくれた方が凄い。

 しかも寄航しているように見えながらも、いざとなったら逃げるのに最も適した場所。

 まさに芸術的な操船技術だわ。

 幾ら魔導船だとは言え、帆を操る船員の技術と息が合った上で、船の魔導具の出力を調整しないといけない。

 しかも船体を流すにあたって入りと終わりを、滑らかにする事で乗員は勿論のこと、船荷にも影響を与えないようにする心配り。

 匠の技を感じるわ。

 うん、良いものを見れた。

 その匠の技を茫然として見る中に、私が空間移動の門を開いて移動したのだから、周囲の人間が驚くのも当然かもしれない。


「そこの者─────」


 軍団長のアルディス命令で、騎士の一人が話し合いの場に向かう為の迎えは何処かと聞きに行く姿に、一々伝言ゲーム宜しく、貴族である事の煩わしさを感じる。

 直接何処って聞いて、目視出来る場所ならそこまで空間移動の魔法で移動しちゃえば済むじゃんと思うのだけど、それやっちゃ駄目だからね。

 他国の領主としての名前を出してしまった以上、それらしく見せないといけないのよ、此れが。


「面倒臭そうだな?」

「ええ、面倒です。

 話し合いの場に持って行けましたので、ジル様に全てお任せしたいのですが?」

「いい若い者が年寄りに押し付けようとするでない。

 寧ろ勉強も兼ねて、お主が率先してやるべき事だ。

 な〜に仕出かしたとしても、後ろで儂が待機していると思えば心強かろう?」

「後ろで採点している、のお間違えでしょう?」

「ふふふっ、最初に言ったであろう、儂の出番は相手国(・・・)との話し合いの段階になってからだと」


 相手は一地方を纏めるの県令であって国では無い、ですか。

 まったく、宰相なら国同士の諍いに発展しないように尽力すべきでしょうが、と心の中で文句を浮かべる。

 私が貴族に再びなった際に、最初は引き籠もり貴族で構わないと言う事だったのに、何でこういう事になっているのやら。


「お待たせ致しました」


 そして古臭いものの、それらしい仕立ての馬車……ではなく牛車と共に表れた案内役が、まるでお約束のようにジュリに向かって一礼をする。

 まぁ女性当主と聞いて、一番それらしく見えるからね。

 一緒に来ているラキアや第八師団のお姉様方は、如何にもと言った騎士用の服装と鎧で身を固めているから見間違える事はないし、肝心の私は童顔、低身長で発育不良な事もあって、傍から見たら子供店長ならぬ子供領主だもの。

 良い服を着てはいても、場違いな小娘にしか見えない。

 その勘違いが起きている光景に……ジル様はともかくとしてアルディス、貴方まで笑いを堪えようとして堪えきれずに肩を振るわすだなんて、いい度胸しているわね。

 まぁ護衛に連れてきた人達全員に言える事だけど、アドル達なんてすっかりと慣れていて、そんな隙を見せていないわよ。

 間違えられたジュリなんて、キリッと凛々しくも可愛い姿を見せ。


「いきなり無礼ですわね。

 私共の主人は、彼方に居られますシンフォニア王国、西方方面守護代、辺境伯爵であり、オルディーネ領領主でもあられるユゥーリィ・ノベル・シンフェリア様ですわ。

 頭を下げるべき相手を見誤るど、此度の問題に対する姿勢が窺えますわね」


 と、先制ジャブ。

 まぁこうなる事は半分期待していたのだけどね。

 くだらない事であっても、少しでも相手の失敗を積み重ねさせておくのは、此れから話し合いに向かうにおいて、僅かであっても有利に働く。

 普通は確認なり何なりするものだけど、連れてきた一行の中で鎧を身に纏っていない女性は私とジュリだけだから、見た目で誘導したとも言う。

 そのジュリは従者なので、何処にでもついて行けるようにと、相手を威圧させない為に鎧は身に着けておらず、その代わりに従者とは思えないぐらい上等な仕立ての服を着せている。

 うん、私が嫁の服に手を抜く事など有り得ないってね

 そんな訳で先方がジュリで間違いないと思うのは、ある意味仕方がない事。

 ただ、他国で初見だとは言え、辺境伯の任に就く者を、正式に迎えるに当たって相手を間違えるなど有ってはならない失態。

 これで私が鎧を身に着けていたと言うなら、言い訳も出来るけれど、私、ちゃんと話し合いの場に相応しい出で立ちをしていますから、その言い訳も使えない。

 まぁ、相手が確認を怠ったのは事実だから、一方的な相手の過失と言える。

 例によって女性蔑視の思考のまま、男性ならともかく女性の辺境伯など一々確認して声を掛ける必要はない、とでも考えたんでしょうね。


 スッ。


 だからと言ってあまりジュリを放っておいては、相手の面子を必要以上に潰す事になるので、小さく手を挙げる事でジュリの皮肉を交えた言葉が収まり、相手に案内をするように促してくれる。

 こういった何気ない遣り取りも、私がこの一団の主人だと相手に見せ付ける事になる。

 この国は男尊女卑の傾向が一層強いから、その辺りも必要と言うのもあるけれど、公然の場で女性から叱責を受けるなど相当な屈辱でしょうから、相手に失態があったとしても、早々に終わらせるべきだろう。

 後は彼等の後を付いて行くだけなんだけど……、うん、やっぱりこういう遣り取りは面倒で肩が凝るわ。

 ジル様、変わってくれないかなぁと視線を送っても、知らん振りをされてしまう。







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