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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
1018/1024

1018.船が襲われた理由と交渉。





「此の港街を治める県令、我が国で言う領主に宴に呼ばれ、その席でそれなりの立場を用意するから、このままこの国に仕える気はないかと誘われました。

 無論、断りましたがね。

 ですが向こうはそれで諦めず、如何にこの国に仕える方が私の為になると説き始めましたが、私共からしたら非常に不愉快な言葉でしたよ。

 流石に顔に出すような真似はしませんでしたが、諦める代わりに此の船の能力を僅かばかし見せてくれと申し出がありました。

 内容も単にどれくらいの速度が出るか程度で、湾の出口まで行ってから戻るだけと言う事なので、それで二度と誘わないと言うので了承しました。

 比較対象と言う事で幾つもの船による試合形式でしたが、それ自体はおかしな申し出ではありません。

 当方としてもあまり圧勝してはこの国の面子を潰す事になりますので、通常の高速巡航速度で参加させて戴きましたが……」

「相手はそのまま往路には参加せずに、湾を船で封じたという訳ね」


 私の言葉にアインフォース卿は頷く。

 そして湾を塞いだのは競っていた船だけでなく、観戦用に用意された大型船も遅れて湾を塞ぐ陣形を取り、船と船の間を鎖で繋ぎだしたのだとか。

 此方の船は後ろでそんな事をしているだなんて、思いもしなかったから気が付いた時には湾を封鎖されていたという訳か。


「強引に突破しようと思わなかったの?」

「湾内で多くの目がある為、我等の船が一方的に攻撃を仕掛けたとユゥーリィ様に御迷惑が掛かると躊躇してしまいました」

「それで躊躇している間に、周囲を埋め尽くさんばかりの小型船や小舟に囲まれたって訳ね。

 御丁寧に鎖で船と船を繋いでいるようだから、強行突破をしたら確実に相手の船は沈むか。

 それを狙っているとしても、此方が攻撃されている事には違いないわ。

 結果論ではあるけれど、判断を誤ったわね」

「貴重な船を預かっていながら、この様な事態を招いてしまい申し訳ありません」


 船での競争は魔導船の魔力を少しでも多く消費させるためと、競争に目を向けさせる事で、湾を封鎖する船の動きに気付くのを遅らせる為か。

 まったく、こういう手を仕掛けてくるとは私も想定していなかったから、私の責任でもあるけれど、この話、それだけではないはず。


「相手は何て言って来ているの?」


 当然、攻撃を仕掛けてきた以上、それ相応の大義名分があるはず。

 馬鹿正直に魔導船を寄越せ、だなんて言ってくる訳がない。

 小国ならともかく、インシュウシンカン国ともなれば、白昼堂々多くの目の中で他国を相手に略奪をする訳にはいかない。


「それが、屋敷に保管されていた家宝が何ものかに盗まれた。

 私達が招かれた宴の前までは在ったので、犯人は私達以外に有り得ない。

 誤解だと言うのであれば大人しく投降し、全ての乗員を下船させた上で船内を検めさせろと。

 無論、私を含めた宴に参加した人間は勿論のこと、他の乗員全て身に覚えのない事です」


 また古典的な手を。

 取調べと称して乗員一人一人にして、乗員の一人を拷問なり取引を持ち掛けるなりして罪を認めさせるとか、船内から出てきたと言って何故かありもしないはずの物が出て来るだなんて、よくある手よ。

 でも誰かを殺した罪人を引き渡せとかだと、また話は変わってくるけれど、それなら何とかなるか。

 アインフォース卿に指示を出し、実行させる。


「船を囲む者達に告げる!

 此処までやると言うのであれば、我等が盗んだという証拠があっての事だろうなっ!

 証拠があるのであれば、今すぐに見せるがよいっ!」


 要は白を切ってしまえば良いのよ。

 実際には知らないのだから、白を切ると言うのは正しくはないのだけど、人を犯人だと決めつけるのであれば、その証拠を出せと言うのはごく普通の考え。


「だからそのために船を検めさせろと言っているのだっ!」


 だから此方の言葉の返答がこうなるのも、官吏としてはごく普通の考え。

 此れが陸地での出来事なら、問答無用に押し入って家捜しするのは、人権が乏しいこの世界なら仕方がない事。

 ただね、此処は陸地ではないし、此の船はインシュウシンカン国の船ではない。

 シンフォニア王国、オルディーネ領の領主である私の船。

 他国であっても、船内は治外法権なのよ。

 まぁ、乗り込んで証拠を掴んでしまえば、なんとでもなるんだけどね。

 実際、私も領海内で御禁制の品を瀬取りしていたり、領から持出禁止の品を密輸しようとした船に乗り込んで、現場を物証を押さえた事が何度もあるもの。

 それだって探知の魔法で確信しているからやれた事で、物証がなければ国際問題になる危険な賭け。

 でも、そう言った乱暴な手段も船に乗り込めなければ、どうしようもない。


「この船は貴国の船ではなく、栄えあるシンフォニア王国の船だ。

 証拠もない戯言に付き合う義理など、何一つない。

 寧ろ、この不当な状況こそ、我が国の船に対する攻撃であり、両国間の問題になりかねない重大な規約違反だと貴公は判断出来ぬのかっ!」


 だからこそ、相手は躍起になって船に乗り込もうとしているのだろうね。


「ふんっ、民間船如きが何を偉そうにほざくっ!

 いいから痛い目に遭う前に、大人しく投降するがよいっ!」


 因みにアインフォース卿は貴族なので、他国の貴族が乗る船に攻撃を仕掛けたり、イチャモンを付けるのは、本当は色々と不味いのよね。

 だからお金に余裕の或る船主は、貴族を雇って船に乗せる事が多い。

 船旅は危険なので、貴族籍があるってだけの人間だけどね。

 アインフォース卿は正式に船長として雇ってはいるものの、貴族籍があるだけの準貴族でしかない。

 相手がそれを覚悟で問題を起こしているのであれば、準貴族では立場が弱いのよ。

 貴族って厳密に言うならば、爵位を持っている当人のみを示すのであって、貴族の血縁者である準貴族は、本当は貴族ではなくなってしまうの。

 一応シンフォニア王国には、準貴族を認める法令はあるけれど、他国ではそういった法令が無い事もある。

 インシュウシンカン国がどうだったかまでは流石に覚えていないけれど、そう言った違いがあるからこそ、向こうからしたら事実はどうあれ口実に出来る。

 だから宴席で聞き出したのかどうかは知らないけれど、アインフォース卿が爵位を持たない準貴族だと知っているからこそ、民間船だと断じて強気でいられるのだろうね。


「貴公がどう思おうが、応じる必要性を感じない。

 そもそも我等が家宝を盗んだと言うが、その家宝が何かすら未だに言わぬのであれば、その家宝の存在自体が怪しいと言わざるを得ないな」


 アインフォース卿の皮肉を込めた言葉に相手はニヤリと笑いながら、宴を行った日の昼間にこの国の第七王子殿下が訪れており、国より戴いた物を家宝としたばかりで、宴にも身分を隠したまま参加されていたため、家宝の存在を疑う事はこの国の王家を侮辱する事だと、演技の掛かった口調で言ってのけた。


「……ぐぅ」


 人が穏便に済ませてやろうと言うのに、また面倒な事を……。

 少なくとも他国の王族の名を出されては、準貴族でしかないアインフォース卿ではこの場は荷が重いか。

 苦々しい顔をしながら小さく呻くアインフォース卿に、変わるように合図を送る。

 はぁ……面倒臭い。

 音声拡大の魔法を掛けながら、上から目線である事を意識し声を出す。


「ほう、王家から贈られた物を紛失した(・・・・)ともなれば、必死になるのは分からないでもない話だな」

「女の声? しかも子供の?

 誰だが知らぬが、大人の話に子供が口を挟むなっ!」

「ああ、そう言えば名乗っていなかったな。

 私はシンフォニア王国、辺境伯爵の位を偉大なる国王陛下から賜っているユゥーリィ・ノベル・シンフェリアだ」

「へ、辺境伯っ!?

 貴人が乗っていたのか!?

 そんな話しは聞いていないぞっ!」


 別に態々教えてあげる必要はないからね。

 実際、つい先程まで、この船に乗っていなかったのだから、アインフォース卿が嘘を吐いた訳でもない。


「ふん、聞いていようがいまいが、そんな事は貴公には関係あるまい。

 さて、先程から黙って様子を眺めさせて貰っていたが、この国は他国の貴族に対して随分な持て成しをするようだな。

 この仰々しい包囲網を見る限り、七大大国の一つであるシンフォニア王国の高位貴族である私を拘束しようとしての事だと判断するが、それが何を意味をするか判っての事であろうな?」

「ご、御無礼である事は承知しております。

 し、しかし我々としましては国より戴いた物を盗んだ者を、このままみすみす逃す訳には行かないのです」

「容疑者ではなく盗んだと断ずるか、なるほどな。

 では聞くが、証拠もなく我が配下を盗人だと断じたのは貴公の判断か?

 貴公の判断でもって、大国の一つであるシンフォニア王国とインシュウシンカン国との間に戦火を開き(・・・・・)兼ねない判断を下した、と言うのか?

 貴公の戯言(・・)を真に受けるのであれば、辺境伯爵である私が、配下の者を使って盗みを犯したと、公然の場でもって侮辱した(・・・・)のだぞ」

「……、……」


 おうおう、遠見の魔法で相手を見ると、随分と血の気を引いた青い顔をしているなぁ。

 まぁ、幾ら脅しだとは言っても、有り得ない話ではないから、そりゃあ血の気も引くってものよね。

 私も自分の身体の芯が冷たいくらいに感じるもの。


「それとも領主……貴国で言う県令の判断か?

 もしくは話に出てきた、尊き王家の血を連なる方の判断か?」

「……、……」


 まぁ現場を任された程度の人間では、流石に何も言えないわな。

 私が出て来るとは想定すらしていなかったから、こうなってもしかたがないかもしれないけれど、王家の名前を出して事を大きくしたのはそちらが先だからね。

 ん?


 どごぉぉぉ〜〜〜んっ!

 どごぉぉぉ〜〜〜んっ!

 どごぉぉぉ〜〜〜んっ!

 どごぉぉぉ〜〜〜んっ!

 どごぉぉぉ〜〜〜んっ!

 どごぉぉぉ〜〜〜んっ!


 そこへ突如として襲う火球魔法の群れが、私が立つ甲板の目の前で炸裂した。









年末年始SP更新は本日まで。

今年は奇数日更新で行きます。

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