表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
1006/1024

1006.患者達と、子供達と、卵達。





 ライラさんやコッフェルさん達が、もうすぐオルディーネ領に訪問する。

 と言っても私が魔法に迎えに行って、今回は港街の別邸の方に御招待するつもりではある。

 只、その前にやる事があり。


 ……古傷の治療に関する集団治験の患者?


 例の馬鹿な事ばかりを言っていた娘達の顛末の噂が広まったのか、残っていた皆様、大人し〜〜く帰られると、レイニシア婦人を通してではあるけれど、向こうから言ってきたわよ。

 現在、工芸品だけでなく、日持ちがして持ち帰れるお菓子や保存食を買い漁っていたりするけれど、そこは目を瞑っておく。

 工芸品はともかく、食料品の開発は他領に抜きん出ている自信があるし、領内にお金を落としていってくれるのだから、有り難い事でもあるもの。

 但し、量の制限はさせて貰うけれどね。


「荷物は荷馬車五台分の木箱までに抑えるよう、再三申し上げたはずです」


 今日も婦人の厳しい声が飛んでいるなぁ〜。

 だいたい個人の売買で済む量を遥かに超えて買物は有り得ない。

 領民の消費分もあれば、港街ですから出入りする船の分まで買われては困る。

 まだ生まれたばかりのオルディーネ領は、そこまで食料に余裕が在る訳ではないもの。

 貴族の買物だからと馬車五台まで目を瞑っているのだって、王妃様の御紹介でこの地に来られているからこそ。

 そもそもな話、治療に来ているのだから、そんなにお土産を買って帰る方がどうかしていると思うのは私の気のせいだろうか?


「規定量以上の荷物は全て没収となりますので、出立の日までにどうか荷物を厳選して下さるようお願いします」

「そ、そんなぁ、そこはなんとか」

「他の方々への示しもあります以上、なんともなりません」


 厳しいと思われるかもしれないけれど、ちゃんと最初から言ってあるし、そもそも前世でだって、空港や港での関税では規定以上の物は没収されるのだから、なんら厳しくはない。

 それでも大量に購入したいのであれば、この地にある商会に依頼して運んで貰えれば良いだけの事。

 その場合は頼料お金も掛かるし関税も掛かる上、船便だから王都までは場合によって四ヶ月から半年は掛かるため、民芸品や家具などは良いけれど、食料品に関しては日持ちをする物となると如何しても限られてしまう。

 まぁ裏技で、商会を経由してシンフェリア家に特急輸送を依頼をする方法は在るけれど、木箱は木箱でも馬車サイズの木箱によるコンテナ単位になるし、当然ながら私の空間移動を用いた方法である以上、輸送時期が私が王都に足を運ぶ時になるだけでなく、高額な輸送料金が掛かる。


「─────程になりますが、どうされますか?

 お決めになるのでしたら、お早い方が良いですが」

「さ、流石にその金額は私の一存では……」

「皆様と御協力してと言う方法も在りますが、その際に揉めたとしても当家は一切関与いたしませんので、どうか良くお考えの上でお決めになられると宜しいかと」


 レイニシア婦人は優しいなぁ。

 ちゃんと手段を提案しているし、輸送料が高額になる事に対する解決方法まで提案しているもの。

 その場合、揉め事に発展する可能性も教授しているから、ちゃんと信頼出来る相手と話を進めなさい、諦める事も大切な選択だとも。

 なのに私にはバシバシと厳しく言ってくるのよね。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 さて帰ると言えば、リズドの屋敷でお世話をしている子供達。

 毎年、冬に親元の所に数日間返しているのだけど、どうやら今年で最後になりそうなのよ。

 最後になる理由としては、去年は私が妊娠していた事もあって、それを外部に漏らさないようにする為に、体調が悪い事を理由にして空間移動の魔法だけ開いて、後はジュリとアドル達に任せていたのだけど……。


『成果が見え始めた以上、後は国が引き継ごう』


 魔力過多症候群に罹った子供達を、将来の戦力にする事を代価に命を助け、教育を施す実験の責任者であるコッフェルさんが、後で私の妊娠と出産の事を知って、子供達の冬の帰省を私が出来なかった事を察し、国に掛け合った結果らしい。

 実際、私は多忙だし、立場的に何時までも私が送迎していたのもおかしな話ではあったの。


『あの中に将来の宮廷魔導士になる者もいるかも知れぬのだ、空間移動持ちの魔法使いを、こう言う時に使わずに何時使うというのか』


 横からの成果の掻っ攫いではあるけれど、元々最終的には国に投げる予定だったので、予定よりも早くそうなったのは寧ろ望む所だし、ある意味仕方がない事。

 実験の第二期組になる子供達は、国から予算が出て借金奴隷になる事はないらしいけれど、第一期組のあの子達は借金奴隷のまま。

 その事に子供達はと言うと……。


『狡いとは思うけれど、しょうがねえよ。

 俺等が頑張って耐えていたから、俺達と同じように助かる子供達が出てくると思えば、そんなに腹は立たねえさ』

『そうだね、助からなかった事を思ったら、今の私達って十分幸せだよ。

 お父さん、お母さん、お兄ちゃん達とは離れて暮らす事になったけれど、友達が沢山出来たし、お父さん達と会えない訳でもないもの』


 と、意外に物分かりが良かった。

 まぁ……必死に自分を納得させているんだろうけどね、その必死さを無駄にしない為にも、黙って見守るしかないのが実情。

 国もね、一応成果を取り上げる事になる事を自覚しているのか、第一期組の子供達は実験の成果の確認の意味も含めて、第一期組に限り、かなりの好条件で国や高位貴族に雇用される事が既に決まっている。

 魔導具師ギルドに留まる子に関しても補助金が出て、その分だけ給金に足される厚遇ぶり。

 ハッキリ言って破格だと言える程の条件だ。

 真面目に頑張れば、当初の予想よりも早く借金奴隷から解放されるようにって事らしい。


『たくさん稼げるようになって、親父達を呼び寄せて一緒に暮らすんだ』

『ぇぇ〜、いきなり親と同居って、私はちょっと嫌だなぁ』

『待てっ、お前は何の話をしているんだよっ』

『だから将来の話だよ、今更逃げれるだなんて思わないでね』


 本当、人を逆恨みする事ばかり考える大人達よりも、子供達の方がよっぽど逞しいと思えるわよね。

 まぁ……何か一部の会話がおかしかった気もしたけれど、そこは気にしないでおく。

 最初は無理矢理親元から離された事に嘆き、喚きまくりながら暴れていた事を思えば、微笑ましいばかりの光景だもの。

 最近は面倒を見てくれているアイナに尻を叩かれ、頭に拳骨を落とされる事も殆どないとも聞いている。

 そして、そのアイナの目から見て、素直で良い子達ばかりだとも。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 卵菌検査の魔導具をキンペイ商会で試験運用して貰っており、最初の中間報告が上がってきた。

 廃棄率は実に一割五分と意外に高かった事が判り、キンペイ商会の商会長も頭を抱える結果となっていた。

 只、菌検査で引っ掛かるのは二分ほどで、他は透光検査によって廃棄せざるを得なかった卵。

 透光検査では卵の罅や、薄くなって脆くなっている箇所は一目で分かる。

 更に古くなっている卵に関しては、光の透過具合や黄身部分の形状や色の違いである程度判定出来る事も分かったのは良かったものの、廃棄率が増える事を考えると素直に喜べないと報告書に書かれていた。

 キンペイ商会が所有する大きな養鶏場はともかく、街に置く商会に周囲の村から売られて来る卵は、意外に検査で引っ掛かる代物が多いらしい。

 つまり運搬の際に、かなり致命的な罅が入っているって事なのよ。

 現状では卵の検査は試験運用と言う事もあり極秘でやっている為、今まで通り卵の状態に拘わらず購入しているらしいのだけど、品質的にこれ程の割合が問題があったとは正直驚いたと報告書に書かれている。

 更に一度検査が通った卵が、再検査で引っ掛かるようになるまでの平均日数なども、今後の商売の参考になると、試験運用の調査項目に対するお礼とかね。

 卵の検査というと、これだけで終わりと思われるかもしれないけれど、他にも問題になる物があり、それは有精卵。

 その中でも孵化し掛けた卵で、俗に言うヒヨコ卵だ。

 この時点で既に産みたての卵ではないと言う事なんだけど、逆に生きている新鮮な卵とも言える訳。

 一つ見本として茹でて食卓に出してみたところ……。


『むりっ!』

『ちょっと、勇気が』

『私もそれは……』

『うん、栄養はあるとは判ってはいるんだけど』


 と、アドル達四人組を初めとした貴族関係出身者は、ヒヨコ卵の味見を断固拒否。


『お肉と思えば普通だし、美味しいわよ』

『食べないだなんて、勿体ない』

『無理だなんて、とても贅沢』

『何も食べれなかった事思えば、この程度なら普通に食えるぞ』


 とエリシィーを初めとする、シェリー、ミーナちゃん、カルツ君と平民出身組は、この人達、何を言っているの?いう目で四人を見ながら首を傾げている。

 この辺りは貴族と平民との差と言うより、餓えた経験があるかないかでしょうね。

 そもそもヒヨコ卵料理であるバロットは、前世でも食べる地域と食べない地域があったぐらいだから、この世界の平民の中でも食べれる人と食べれない人がいてもおかしくはない。

 まぁアヒルと鶏の差はあるけれど、私にとっては何方も似たような物で大差はない。

 そもそも珍味って、大抵はそう言う代物だからね。


 ……私はって?


 私は普通に食べれるわよ。

 前世でだって、蝗や蜂の子、ナマコやホヤや棒穴子を食べれたから、これくらいの物は今更と言えば今更よ。

 外国人がタコが駄目だったように、単に馴染みのない食事かと言うだけの事。

 鶏の内臓を使った焼き鳥の提灯だって、外国人からしたらゲテモノ扱いする人もいるぐらいなんだから、この世界でも食文化の違いによる忌避感が生まれてもおかしくはない。

 私だって好き嫌いは勿論の事、問答無用に拒否する食文化の一つや二つある。

 御器齧食や船虫食は見るのも無理だと断言出来るし、食人文化(カニバリズム)なんて代物は憎悪の対象でしかない。


『おっ、今日のオムレツは一段と味が濃厚だな』

『卵が違うんだろ』

『ペンペン鳥の卵でも金羽大鶏(コカトリス)の卵でもないわよね』

『アヒルやガチョウでもなさそうだし』


 でも不思議だよね。

 ヒヨコ卵もミンチ状にして他の卵と混ぜて焼いたら、普通に食べてくれるのだから、やはり見た目が重要って事なのかな?

 キンペイ商会には罅割れ卵等は卵液にして、近くの飲食店にその日中に使う事を条件に安価で卸ろして、ヒヨコ卵は燻製にするなど珍味として販売、もしくは直営の飲食店でオムレツなり、パンに挟む具材にしてから屋台で売るなりしてはと提案しておいた。

 卵菌に反応した卵だって、きちんと加熱調理すれば死滅するから問題ないとは言え、安全性を売りに差別化を図るならば、加熱処理した上で飼料に回すなりした方が良いだろう。

 報告書の数値を見る限り、古くて傷んだ卵や罅などのが入っている物は菌に侵されている可能性は高く、逆に新鮮で罅の入っていない卵は千個に五個から七個程度の割合と意外に少ない。

 安全な卵を選別出来る事を思えば、それほど神経質になるほどの数字ではないものの、この統計はきちんと洗った卵に言える事で、軽く拭いただけの無洗卵となると、やはり生育環境が環境なだけあって、意外に高い数字だった。

 つまり卵と洗浄と共に、手洗いが大切って事。

 まぁ、食を扱う上では基本と言えば基本だね。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
御器噛食ってなんだろって調べて後悔した(T_T)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ