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【完結】【コミカライズ決定】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜  作者: やきいもほくほく
四章 絶望

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35/50

③⑤


『それからシルヴィー嬢に謝りたいことがあるんだ』


あの日、夜会で何があったのか聞いて二人は驚愕。

毒で判断力がなくなったとはいえ、アデラールがそんなことをするとは思えなかったそうだ。


責任を取りすぐにシルヴィーを受け入れる準備をしようと提案するもアデラールは拒否。

彼女の意思を尊重し、時が来るまではシルヴィーの好きにさせたいと言ったのだそう。

もちろん王家と国を守る立場で、いつまでもこのままにできないことはわかっていたため三年の猶予が欲しいと言った。


その理由はアデラールがこの現状を変えたいと強く願ったからだ。

『シルヴィーの居心地のいい場所を作るために、今からこの国の常識をぶち壊しますので』

その話を聞いた時は驚いたそうだ。アデラールの表情は今まで見たことないほどに恐ろしかったらしい。

その時に彼が本気なのだと悟ったという。

マリアの後押しもあり、二人もシルヴィーを見守る決断をくだす。


アデラールはシルヴィーに護衛をつけたのだが、それからすぐにホレスを妊娠していることを知った。

正直、本当にアデラールの子どもなのかと疑問を持ったそうだ。

しかしアデラールは『自分しかいない』と、言い切ったらしい。


それから三年間、アデラールは貴族社会に根づいた考えを変えようと奔走していた。

シルヴィーがここに来た時に絶望して欲しくない。

どんな属性も等しく役に立つのだと訴え続け、調査を続けて不当な扱いをしている場合は罰を与える。

シルヴィーの育ってきた環境を調べ、居心地のいい場所を作るための準備を進めていく。


(アデラール殿下がそこまでしていたなんて……!)


アデラールの行動力やシルヴィーへの執着に驚くのと同時にその用意周到さに若干の恐怖すら覚えたという。

シルヴィーの話となると人が代わり、表情がコロコロと変わるようになった。

そんな中でホレスから早々に魔力が発現したと報告を受ける。


そのことでシルヴィーとアデラールの子どもだと完全に確証を得たのだ。

二歳の段階で魔法が使えるとなれば、とてつもなく大きな力を持っていることになる。

アデラールが公務を終え、何かある前に二人を迎える準備をしようと決断したすぐ後にホレスが発熱したそうだ。



『マリアもあなたにだけは最初から好意的だったのよ。なんだか運命を感じるわ』



二人もあの気難しいマリアがすぐに心を開くことがあるのかと驚いたそうだ。



『パーティーであなたが渡してくれたハンカチ、今でも飾っているのよ。だからマリアの体調がよくなったら相手をしてあげてほしいの』


『もちろんです。わたしでよければ喜んで』


『ありがとう……あのね、シルヴィー』



王妃と国王が瞼を閉じて、シルヴィーの手を包み込むように握る。

そして……。



『──何かあったらすぐわたくしに報告してちょうだい! とにかく、アデラールはあなたのことがすっっっっごく大切なのっ!』


『少しでも嫌なことや怖いことがあったらワシらに相談してくれっ! 出ていこうだなんて思わないでほしい! お願いっ、本当にお願いっ!』



二人の血走った目と懇願を見て、本気だと理解する。

彼がシルヴィーの悲しむ顔を見たら何をしだすかわからないため未然に防ぎたいのだという。

もちろんアデラールにやりすぎがあったら止めるとのことだ。

次第に涙目になっていく二人にもいろいろな苦労があるのだろう。

ここまで頼み込まれてしまえば、シルヴィーは頷くしかないのだが。


(どうしてアデラール殿下はわたしに執着するのかしら……)


妊娠がわかる前からシルヴィーに護衛をつけていたという事実。

つまりホレスがいてもいなくても、時期がきたらシルヴィーを迎えに来るつもりだったということだろう。


(十三年前、わたしはアデラール殿下に何か言ってしまったとか……?)


思い出そうとしても、その辺りの記憶が曖昧だ。

アデラールが王太子だったことにも気づいていなかったため、気を引くようなことを言ったつもりもない。

むしろアデラールの服や刺繍の豪華さに釘付けだった記憶しかなかった。


(……何をしてしまったかわからない自分が恐ろしいわ)


引き攣っていくシルヴィーの顔を見て二人も慌てている。



『アデラールについても悩んだら、すぐにわたくしたちに相談してちょうだいね! 力になるわ!』


『君の嫌がることは絶対にしないと思うぞ! ワシたちがシルヴィーの味方だ』


『心配しないで! 王妃教育だって焦らなくていいわ。無理をさせたくないもの……だからお願い、ここからいなくならないでね』


『そうだな。シルヴィー、我々は君を心から! そう、心から歓迎しているからなっ! だからこそここにいて欲しい』


『は、はい……!』



シルヴィーは二人の必死の説得に頷く。絶対に逃したくないという気持ちが透けて見える。

そのくらい国王夫妻は必死のようだ。

それと同時にこの二人にここまで言わせてしまうアデラールに更に恐ろしさを感じる。


懐かしいやりとりを思い出しながら必死に手を動かしていた。

レースももうすぐ仕上がりそうだ。


ホレスもあっという間に環境に慣れて、リサの子どもたちと遊んでいる。

毎日顔を合わせていたベンやレオンも護衛として常にそばにいることも大きいだろう。


城内の人たちもホレスのかわいらしさにメロメロだった。

ぴょんぴょんと跳ねるたびにふわふわの髪が揺れる。

笑顔は天使すぎて、なんでも言うことを聞きたくなってしまうくらいかわいらしい。


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― 新着の感想 ―
あの夜から3年。居場所がわかっていながら、すぐ迎えに行かなかった理由がわかりほっとしました。生まれた子も自分の子とわかりより愛情が湧いたでしょう。
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