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【完結】【コミカライズ決定】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜  作者: やきいもほくほく
四章 絶望

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34/50

③④

国王と王妃が何かを言う前に、この話は終わりとばかりに手を叩いたアデラール。

彼の合図に合わせて従者が花束を手にこちらにやってくる。

アデラールはそれを受け取ると、シルヴィーの元に跪いて花束を渡す。



『あ、ありがとうございます……!』


『明日は甘いものを持ってくるね。きっとシルヴィーも気にいるよ』


『……はい』



アデラールはいつもプレゼントを持ってくる。

甘やかしてくれるのはありがたいが、シルヴィーの部屋にはアデラールが持ってくるプレゼントとホレスのおもちゃで溢れかえっていた。


ホレスは環境が変わった影響なのかシルヴィーにべったりだ。

アデラールも忙しそうだが、隙あらば部屋にいてシルヴィーとホレスと過ごす時間を取る。

その後、執事がやってきてアデラールに何かを告げて名残惜しそうに部屋から出ていくことがほとんどだ。

与えられることに慣れていないシルヴィーはそれだけで申し訳なくなってしまう。


今日もアデラールの元に執事がやってきて耳打ちする。

彼は二人に『余計なことは言わないでくださいね』と笑顔の圧をかけている。


国王と王妃はアデラールに止められたためか何か言いたげに口を開いたり、閉じたりを繰り返していた。

二人はアデラールにさっさと行けと言わんばかりに部屋の外へと追い出してしまう。


その時のアデラールの顔は恐ろしすぎて直視することができなかった。

ついに国王と王妃、シルヴィーの三人だけになってしまった。

扉の向こう側から見えない圧を感じるのだが気のせいだろうか。


国王が扉から顔を出してアデラールがいなくなったことを確認すると親指を立てて王妃に合図を送る。


すると王妃は縋るような表情でシルヴィーの両手を包み込むように握る。

王妃は訴えかけるようにして叫んだ。



『シルヴィー、あなたに言いたいことがあるの!』


『は、はい! なんでしょうかっ』



目を見開いてこちらを見る王妃と国王のあまりの勢いにシルヴィーは背をのけぞらせる。

今から何を言われるのか、シルヴィーは緊張して心臓が飛び出そうになっていた。


(お二人はわたしが逃げ出した原因はアデラール殿下だと思っているのよね……)


このまま嘘をつき続けるのはよくない。真実を話すべきかシルヴィーが迷っていると……。



『──シルヴィー、ここに留まってくれて本当にありがとう。感謝しかないわ!』


『え…………?』


『あの子、あなたにすごく執着しているでしょう? マリアも別の意味でそうなのだけれど、十三年前からずっと想い続けていたのよ!? いつもあなたの話ばかりしていてね』


『執着、ですか?』



マリアがシルヴィーしかいないと言ったことも大きいそうだが、それにしてもアデラールの執着の仕方は半端ないのだと聞いて驚愕していた。



『アデラールを止められるのはシルヴィーしかいない。どうか我々や国民のためにアデラールのそばにいてくれないか!?』


『少しやり過ぎることもあるかもしれないけれど、シルヴィーは間違いなくアデラールの特別なのよ!』


『アデラールは君のこととなると人が変わるんだ。我々でも見たことがないほどに……っ』


『あなたに何かあれば国が滅ぶわ! だからなるべく危ない行動は控えてくれると嬉しいの。出かける時は必ず護衛やリサを連れて行ってね……!』



二人のあまりの必死さにシルヴィーは何度も頷くことしかできなかった。

アデラールは幼い頃からわがまま一つ言わずに、どんな難題でも軽々とクリアしてきたそうだ。

王太子として申し分なく完璧と呼ばれていた。

だがそこに感情の起伏はなく、淡々としているように見えたそう。それこそ心配になるほどに。


そんな彼は幼い頃から妙に大人びていてつまらなそうに見えたため、二人はいつも心配していたそう。

人間として大切な何かが欠落しているように見えたからだ。

恋をすればアデラールも変わるのではないか、そう思った矢先『運命の人に出会った』と言っていた。

マリアも『この令嬢がお兄様の運命の人よ! そしてわたしのことを救ってくれる女性だわ』と断言したことにより、シルヴィーの捜索が始まったが難航していた。

そもそも代表的な魔法属性ではない限り、家の汚点だという理由で隠したがる場合も多い。

それから社交界にもいないということで、王都周辺でもレースを編める魔法が使える少女がいないか探し回ったそうだ。


(……そこまでして、わたしのことを探していたの? まったく気づかなかったわ)


初めて聞く事実に驚きすぎて言葉が出てこなかった。

王家も何度もパーティーを開いたりしていたが、レースを編む令嬢は見つからない。

誰も見たことがない魔法で、尚且つ代表的な魔法属性ではないため反対する貴族もいたという。

そのため隠れてシルヴィーを探し続けていた。

なんとか糸を操ると噂のレンログ伯爵夫人という手がかりを見つけたが事故死した後。病弱な娘もミリアムも火属性だと聞いていたそうだ。


そして運命に導かれるように夜会で再会。

すぐにホレスを身籠ったことで、アデラールとマリアが言っていたことが証明された。


そしてホレスは強大な力を所持している。

それにも理由がありそうだ。

アデラールもパーティーの日の話をしてくれていたが、まさかここまで大ごとになっていたとは思いもしなかった。


当時シルヴィーのことを王家に言わなかった理由は、父は現状を知られたくなかったと考えるのが妥当だろうか。

シルヴィーをきっかけにいろいろとバレてしまえば自分の立場が危うくなってしまう。

それともミリアムを溺愛していたため彼女のことを思ってだろうか。今のシルヴィーにはわからないし、もう考えたくもない。


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下衆な物言いですが、理性より本能、生き物の欲が生命の誕生をなすのですね。酩酊状態の女からの誘いに毒に侵され朦朧状態の男が受け入れ行為に及び子を成すに至る過程に、理性は存在せず、なすがままであったろうと…
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