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【完結】【コミカライズ決定】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜  作者: やきいもほくほく
一章 最初で最後の夜

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その間、シルヴィーは七歳の時に一度だけパーティーに出たことがあった。

貴族らしいことをしたのはそれが最初で最後だった。

母がドレスを作ってくれて、夢のような煌びやかな世界で一日を過ごした。あの日のことを今でも鮮明に思い出すことができる。


とはいっても出会った令息と令嬢の着ていたドレスやジャケット、美しい刺繍に釘付けだった記憶しかないが。

パーティーを楽しもうとしたが、とある令息のジャボというひだがついた胸飾りが破けてしまい困っていたのを放っておけず、ありったけの魔法を使いそれを直したまではよかったが、私は魔力切れでそのまま帰ってしまった。そのことは今でも悔やまれる。


彼と泣いていた令嬢が何かを言っていたような気もしたが、粗相をしてしまわないようにと馬車に駆け込んだのだ。

あの時もう少し魔力があったら、私はパーティーに残って楽しむことが出来たのではないか、さらに、今後パーティーに出られないと前もって分かっていたら、無理をしてでも残ったのにと思うと、後悔しかない。


(あの人たちは大丈夫だったかしら……)


夢のような時間は一瞬だけ。

お金は父が愛人に注ぎ込んでしまうためシルヴィーは貴族らしい生活などできはしない。


相変わらず屋敷からは出られない生活が続いていたが、シルヴィーは幸せだった。

侍女や執事の仕事を手伝ったり、母に魔法でレース編みのやり方や刺繍を習い過ごしていた。



母と二人、穏やかに暮らしていたがシルヴィーが九歳の時、母は病になった。

医師に診せると時間はかかるが薬を飲んで安静にしていたら治ると聞いて安心していた。

しかし父は治療費や薬を買う金を出し渋ったのだ。

それにはシルヴィーも大きなショックを受けたのと同時に怒りを覚えた。


シルヴィーは侍女たちと共に母の看病をしていた。

緊張感のある生活が続いたが、安静にしていることでなんとか症状の悪化を防ぐ日々。

母の分までシルヴィーは屋敷の仕事を積極的に行っていた。


けれど薬は手に入らない。

シルヴィーも母も、父にすべてお金を取られており自由に使えるお金を持ってはいなかった。

シルヴィーは父に泣きながら母を助けてくれるように頼み込むが、こちらを忌々しそうに見つめながら父は吐き捨てるように言った。

『いつまでも泣くな。鬱陶しい……! そんなくだらないものに使うお金はないんだ』

シルヴィーは大きなショックを受けたことを今でもよく覚えている。

それから、私は結婚というものに絶望した。


(……わたしは結婚なんてしたくない)


そんなある日のこと。

リビングに堂々と置いてある豪華なドレスやアクセサリーのプレゼントを見つけた。

一目見て高級なものだとわかった。


(わたしたちではない誰かにあげるプレゼントなんだわ。こんなものを買うお金があるなら、お母様の薬を……っ!)


シルヴィーは悔しくてたまらなかった。

父には他に大切な人たちがいることを侍女や母たちの会話からなんとなく察していた。


だから、たとえ父に愛されなくとも母さえいればいいと思えた。

だからこそ何もせずに泣いているわけにはいかない。


(今、お母様のために動けるのはわたししかいない。自分がどうにかしないと……! 今はお母様の薬代を稼ぐのよ)


母と一緒に編んでいたレースを大量に持って、父が屋敷を空けている間に執事に頼んで馬車を手配してもらう。

侍女と共にブティックや洋装店を巡り、レースや刺繍を買い取ってくれるように頼み込んだ。

レースを編むのは時間がかかるため、模様が複雑で美しいレースは重宝されることは知っていた。


シルヴィーは仕立て屋や高級洋装店を巡って、レースを編んでは売ることを繰り返していた。

次第に仕事をもらえるようになる。

父にバレてしまえば、薬を買うことを止められてしまうかもしれない。


シルヴィーは平民の女の子に変装して、なんとか薬代を稼ぎ出すことに成功。

こっそりと医者を呼び、薬を買って辛抱強く体力の回復を待つ日々。


屋敷で働いている人たちの協力を得られたことは幸いだった。

レンログ伯爵家のために動いているシルヴィーに、みんな力を貸してくれている。


そんな生活を一年ほど続けていた。

薬のおかげか、母の体調はだんだんとよくなっていく。

だけどまだ油断はできなかった。



そんなある日のこと、侍女が震えながらあることを報告してくれた。

それは父が愛人と協力して母を毒殺しようとしているという信じられないものだった。


掃除中に父の愛人への手紙にそう書いてあったのを偶然見つけたようだ。

どうやら母の病をきっかけに愛人、つまり父の愛する元娼婦の女性と、自分の火属性を引き継いだ娘を迎えるつもりらしい。

そのために母が邪魔なのだろう。


(どうしましょう。このままだとお母様が殺されてしまうわ)


どうやら愛人との間には伯爵家の火属性を継ぐ娘が産まれていたらしい。

シルヴィーは母を守れる方法を必死に考えた。


執事や侍女に知恵を貸してもらい、母が馬車での事故に遭うことを偽装することを思いついたのだ。

しかし一筋縄でいかないことはわかっていた。逃げたことがバレないようにしなければならない。

体裁が悪くなれば、父がどう動くのかわからないからだ。


とりあえずお金が必要だとレースを編んでいたシルヴィーは手元を見てあることを思いつく。


(わたしたちの魔法を生かせるところなら、もしかしたら……!)


シルヴィーはすぐに母だけでも匿ってくれるところを探すことにした。

自分たちの魔法を生かせれば受け入れてくれるかもしれない。

幸い、病は人にうつるものではない。


シルヴィーはいつも高値でレースを買い取ってくれる高級洋装店へと向かう。

母はベッドで寝ていてもレースが編める、自分も母と一緒にレースを編むからと涙ながらに訴えかける。

すると運がいいことに病の母の面倒をみてくれて、レース職人として雇ってくれる高級洋装店が見つかったのだ。


(これでお母様を救える……この力を持っていて本当によかった!)


母にこの話をすると大反対だった。

シルヴィーをこの屋敷に置いていくことになるからだ。

けれど折角病が治りつつあるのに、毒を盛られてしまえば母の体は耐えられない。


本当はシルヴィーも一緒についていきたかったが、父の目を欺くためや確実に母を逃すためにここに残ることとなった。

執事や侍女たちがいたら大丈夫だと母を説得する日々。

結局、母は最後まで反対していた。

シルヴィーのことが心配だったのと、自分だけ逃げ出すのが耐えられないと語った。


母がいなければ、シルヴィーが愛人にどんな目に遭わされるのかわかっていたからかもしれない。

それでもシルヴィーは母を守りたいと思った。


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― 新着の感想 ―
ここまでのストーリーの展開は良いと思います。私は、もっぱら読み専ですので小説を書くことはできませんが、この小説はほんの少し、言い回しを変えるとか、主語と述語がつながる文章を心がけたら、もっと楽しく読め…
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