第26話『みんなで行きたいところ』
6月24日、月曜日。
週が明けて、今日から再び学校生活が始まる。
今日も朝から雨が降っているので、千弦と一緒に相合い傘をして登校する。
登校して、いつも通りに星野さん、神崎さん、琢磨、吉岡さんと談笑する。昨日、俺と千弦がプールデートをしたのもあり、それが話題になって。
プールデートが楽しかったようで、千弦はとても楽しそうな様子で話していて。それがとても嬉しくて。プールデートに誘って良かったと改めて思った。
また、千弦が俺にナンパから助けてもらった話をすると、
「あの水着姿の千弦は可愛いから、ナンパされちゃうのは無理ないわね。でも、白石はちゃんと助けて偉いわ! さすがね!」
と、神崎さんから物凄く褒められた。デート中の彼氏として当然のことをしたと思っているけど、こうやって褒められると嬉しいな。
「2人とも楽しいプールデートになって良かったね!」
「そうね。あと、2人の話を聞いていてあたしも楽しい気分になったわ」
「楽しいデートになって何よりだぜ」
「そうだね、琢磨君。2人とも良かったね」
昨日のデートについて一通り話すと、星野さん達は笑顔でそう言ってくれた。実際にプールデートがとても楽しかったし、そうなって良かったねって言われると嬉しいものがある。
「みんなありがとう。楽しかったよ」
「楽しかったな。……あと、昨日帰っているときに、夏休みまでにデートは遊園地に行ったメンバーで一緒に海へ遊びに行きたいなって話したよ」
「そうだね、洋平君」
「それは名案ね! 夏休みまでにみんなと海で遊びたいわ!」
「私も行きたいな。遊園地で遊んだのも楽しかったから、海水浴も楽しそう」
「いいじゃねえか! みんなで海水浴!」
「あたしも行きたい! 夏休みなら、みんな予定を合わせやすそうだよね」
星野さん達、みんなで海水浴へ行くことに好感触だ。こういう反応をしてもらえて嬉しいな。千弦も同じ気持ちなのか、千弦はニコッとした笑顔になっていた。
結菜は海やプールで遊ぶのが好きだから誘ったら喜びそう。山本先生も……一緒に遊びたいと言えば「行きましょう」と言ってくれそうな気がする。
ただ、遊園地に行った人達の中には、活動する日の多い運動系の部活に入っている人は何人もいるし、山本先生は仕事がある。俺もバイトがあるし。だから、吉岡さんの言う通り、夏休みなら予定が合わせやすそうだ。あと、夏休みに入る頃には梅雨が明けて晴れる日が多くなるだろうし、海水浴に行くなら夏休み中がいいと思う。
「じゃあ、夏休みになったら、みんなで海水浴へ行こうか」
俺がそう言うと、千弦達はみんな首肯してくれた。今年の夏休みの楽しみができたな。
「……そうだ。夏休みの前にみんなで行きたいところがあるんだ」
吉岡さんは明るい笑顔で俺達のことを見ながらそう言ってくる。
夏休み前にみんなで行きたいところ……もしかして。琢磨も気付いたのか「あぁ」と声を漏らす。
「調津市でやる七夕祭りか?」
「そうだよ、琢磨君!」
琢磨が当てたからか、吉岡さんは嬉しそうな笑顔になる。そんな吉岡さんの反応を受け、琢磨も嬉しそうな笑顔に。
やはり、調津市でやる七夕祭りか。
洲中市から電車で10分ほどのところにある調津市で、毎年七夕当日もしくは、七夕前の一番近い日曜日に七夕祭りが開催される。会場では多くの屋台の他に、短冊に願いごとを書いて笹に飾ることのできるコーナーが設けられている。これまでに家族や友達と何度も行ったことがあるイベントだ。
「調津の七夕祭りなら、洲中に引っ越してきた年から毎年彩葉ちゃん達と行ってるよ」
「そうだね、千弦ちゃん。女の子のお友達数人で行くよね」
「あたしも何回か行ったことあるわ。小さい頃は家族と、ある程度大きくなってからは友達と一緒に」
千弦、星野さん、神崎さんも行ったことがあるのか。
「洋平君達は七夕祭りに行ったことある?」
「ああ、何度もあるよ。小さい頃は家族で行って、小学校の高学年あたりからは友達と。中学以降は琢磨と一緒に行ってる。去年は吉岡さんも一緒だったよ」
「そうだったな! 俺も七夕祭りは何度も行ってるぜ!」
「あたしも何度も行ったことあるよ。去年は琢磨君や白石君や友達と一緒にね。みんなとも一緒だったけど、途中で1時間くらい琢磨君と2人でデートして」
「デートしたなぁ。みんなでいくつか屋台の食べ物を食った後に、洋平が『せっかくのお祭りだから、一旦、2人はデートするのはどうだ?』って言ってくれたんだよな」
「そうだったな」
琢磨が吉岡さんと一緒に七夕祭りに行くのは初めてだし、一年に一度の七夕祭りだ。だから、2人きりの時間を作れたらいいなと思ったのだ。一緒に行く友人達に相談したら「それはいい」と快諾してくれたので提案したのを覚えている。
去年のことを思い出しているのか、琢磨と吉岡さんはニッコリとした笑顔になっている。
「お祭りが楽しかったから、今年はこのメンバーで行きたいなって。そう思って、七夕祭りに行きたいって誘ったの。ちなみに今年の開催日は7月7日……七夕当日だよ」
吉岡さんはいつもの明るい笑顔でそう言う。
去年の七夕祭りでは、琢磨や吉岡さんや1年の頃のクラスの友人達と一緒に屋台で色々なものを食べたり、遊んだり、願い事を書いた短冊を笹に飾ったりして楽しかったな。途中でデートした琢磨と吉岡さんも嬉しそうにしていたし。あと、去年は期末試験の前にお祭りがあったので、試験勉強のいい気分転換にもなったっけ。
「行こうぜ、早希!」
「俺も行くよ。千弦達と一緒に行きたい」
「私も洋平君達と一緒に行きたい!」
「私も一緒に行きたいな」
「あたしも一緒に行きたいわ!」
「みんながそう言ってくれて嬉しいよ! じゃあ、まずはこの6人は決定だね!」
誘った吉岡さんはとても嬉しそうな笑顔でそう言った。
「あとは結菜ちゃんと飛鳥先生だね。お誘いのメッセージを送るよ!」
そう言い、吉岡さんは制服のスカートからスマホを取り出す。それから程なくして、
――プルルッ。
と、スラックスのポケットに入っている俺のスマホが鳴った。
さっそくスマホを確認すると……ゴールデンウィークに遊園地へ遊びに行った人がメンバーになっているグループトークに、
『7月7日の夜にある調津の七夕祭りへ一緒に行きませんか? 琢磨君、白石君、千弦、彩葉、玲央、あたしは一緒に行くことが決まってます』
というメッセージが吉岡さんから送られていた。
グループトークだから、千弦達もみんなスマホを確認している。
日曜日だから、山本先生は行ける可能性はありそう。結菜は……どうだろうな。結菜が小学校の高学年くらいからは友達と一緒に行っているから、既に約束している可能性はある。そう思いながらトーク画面を見ていると、
『夜ならOKよ。一緒に行かせてもらうわ』
と、山本先生から承諾の返信が来た。先生の方は大丈夫か。
そして、山本先生からの返信の直後に、
『あたしもOKですよ! まだ誰とも約束していませんし。一緒にお祭りに行きましょう!』
結菜からも承諾の返信が届いた。
「飛鳥先生も結菜ちゃんもOKだ! 遊園地メンバーで行ける!」
吉岡さん……とても嬉しそうだ。そんな吉岡さんの頭を琢磨が優しく撫でる。
「2人とも一緒に行けて嬉しいわ! あと、カップルが2組もいるんだし、途中で千弦と白石、早希と坂井がお祭りデートできる時間を作ろうか」
「それがいいね、玲央ちゃん」
神崎さんと星野さんは快活な笑顔でそう言ってくれる。
みんなで行くだけでなく、千弦と2人でお祭りデートか。それはとても魅力的だ。
「今年もデートできるなら嬉しいね」
「そうだな、早希。去年のデートは楽しかったからな」
「早希ちゃんと坂井君がデートしたって話を聞いたから、私も洋平君とデートしてみたいな。もちろん、彩葉ちゃんや玲央ちゃん達さえ良ければ」
「俺も千弦とデートしたいな」
「みんなデートしたいのね。じゃあ、結菜ちゃんと飛鳥先生にも訊いてみるわ」
神崎さんが、お祭り中にデートの時間を作るのはどうかという旨についてグループトークにメッセージを送る。すると、すぐに、
『それは素敵ね。賛成よ』
『1年の1度のお祭りですもんね! 賛成です!』
と、賛成する返信をくれた。
「決まりね」
「当日はデートも楽しんでね」
神崎さんと星野さんは笑顔でそう言ってくれた。
みんなで行くだけでなく、千弦とデートすることもできるのか。とても嬉しいことだ。千弦や琢磨や吉岡さんも同じ気持ちなのか嬉しそうな笑顔になっている。
『ありがとう』
俺と千弦と琢磨と吉岡さんは、声を揃えて神崎さんと星野さんにお礼を言った。みんなの優しさに感謝だ。
神崎さんと星野さんは優しく笑った。
俺、千弦、琢磨、吉岡さんは山本先生と結菜に向けてお礼のメッセージを送った。
「今年のお祭りは7月7日だから、期末試験の後だね。楽しみができたし、試験勉強を頑張れそうだよ!」
「そうだな、早希!」
「あたしもやる気が出てくるわ! 楽しみがあるのっていいわよね!」
「そうだね、玲央ちゃん」
「私も試験をより頑張れそうだよ。洋平君とデートもできるし」
「俺もだ」
みんなと一緒に七夕祭りに行って、途中で千弦とお祭りデートをできるのを楽しみに期末試験を頑張るか。
「明日からは試験前で部活ができなくなるし……この6人で一緒に試験勉強をしないか?」
「それいいね、琢磨君!」
「いいわね。それに、千弦や彩葉や白石がいると安心だし」
神崎さんがそう言うと、琢磨と吉岡さんはうんうんと頷いている。
琢磨とは中学時代から定期試験前になると毎回一緒に試験勉強をしてきたから、今度の期末試験でも一緒に勉強しようって言われると思っていたよ。
ちなみに、来週の火曜日から期末試験が始まるので、校則により一週間前から部活動が禁止となる。それもあって、琢磨は明日から一緒に試験勉強しないかと誘ったのだと思う。
「私は賛成だよ。千弦ちゃんと白石君はどう?」
「もちろん賛成だよ。中間試験のときは一緒に勉強して捗ったし」
「そうだな。俺も賛成だ」
「じゃあ、決まりだな!」
琢磨はとっても嬉しそうな笑顔でそう言った。
今度の期末試験対策の勉強も、千弦や琢磨達と一緒に頑張っていくか。




