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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
続編

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第5話『おはようのキスをしたい』

「いってきます、母さん」

「いってらっしゃい」


 6月7日、金曜日。

 午前7時50分。

 洲中高校に向けて家を出発する。

 今日も朝からよく晴れている。朝だけど、日差しに当たるとなかなか暑い。朝食の後に見た天気予報によると、今日も一日中晴天が続くそうだ。

 ただ、週間予報によると、来週の月曜以降は雨予報が続く。今年ももうすぐ梅雨の時期に突入しそうだ。


「今日で今週の学校生活も終わりか」


 千弦との待ち合わせ場所に向かう中でそんなことを思う。

 今までは金曜日になると「今週も今日で終わって、明日と明後日は休みだ」と嬉しくなるだけなるだけだった。

 ただ、今はちょっと寂しい気持ちもあって。こんな気持ちになるのは初めてで。きっと、千弦と付き合い始めて、千弦と隣同士の席で学校生活を送れることが楽しくて幸せに思っているからだと思う。

 待ち合わせ場所である交差点が見えてきた。今日も千弦が待っているのだろうか。そう思いながら歩くと、


「洋平君!」


 交差点にはこちらを向いて、笑顔で俺に大きく手を振ってくる千弦がいた。その姿がとても可愛くて。自然と頬が緩んでいく。

 千弦、と名前を呼んで、手を振りながら千弦のところまで向かった。


「おはよう、洋平君」

「おはよう、千弦。一緒に学校へ行こうか」

「うん。ただ、その前に……ここで洋平君としたいことがあって」

「どんなことだ?」


 ここで俺としたいことって何だろうか。千弦……頬を中心に顔がほんのりと赤くなっているし。


「洋平君と……おはようのキスをしたいです」


 俺のことをしっかりと見つめながら、千弦はそう言ってきた。

 千弦はおはようのキスがしたいのか。だから、さっき……千弦の顔がほんのりと赤くなっていたんだな。

 千弦がおはようのキスをしたいと言われたのもあり、ドキッとして、顔を中心に全身が段々と熱くなっていく。俺も今の千弦のように顔が赤くなっているかもしれない。


「おはようのキスか」

「うんっ。昨日の学校はいつも以上に頑張れて、幸せに過ごすことができて。それは洋平君と付き合い始めたのはもちろん、洋平君と朝に教室でキスしたのもあると思って。それに、洋平君とキスするのが好きだから……」

「そうか。……俺も昨日の学校やバイトは凄く頑張れたんだ。それは付き合い始めたからだけじゃなくて、朝にキスしたからだとも思ってる。俺も千弦とキスするのは好きだし」

「そうなんだ! 洋平君も同じで嬉しいな」


 千弦は赤くなった顔に言葉通りの嬉しそうな笑みを浮かべる。


「俺も嬉しいよ」


 そう言い、俺は千弦の頭を優しく撫でる。

 頭を撫でられるのが気持ちいいのだろうか。それとも、撫でられるのが好きだからだろうか。千弦の笑顔は柔らかいものに変わる。その変化が可愛くて。


「今日も朝にキスしたら、幸せな中で学校を頑張れそうかなと思って。洋平君とキスしたいからっていうのもあるけど。だから……ここでおはようのキスがしたいと言いました。昨日は教室と、洋平君のバイト先の前でキスしたから、周りに人がいる中でキスするのも大丈夫そうかなと思って。もちろん、嫌だったら遠慮なく言ってね」

「周りに人がいても大丈夫だよ。千弦がおはようのキスがしたいって言ってくれて嬉しいよ。だから……しようか」

「ありがとう、洋平君! じゃあ、私からするね。お願いしたんだし」

「ああ、分かった」


 千弦がキスしやすいように、俺は千弦の頭に乗せている右手を離す。

 千弦は俺に顔をゆっくりと近づけてくる。そんな中、俺は目を瞑った。

 やがて、俺の唇に千弦の唇が重なって。その瞬間に「きゃっ」といった女性の黄色い声や、「おっ」といった男性の声が聞こえてきた。昨日も人前でキスしたから、そこまで恥ずかしい気持ちにはならない。

 あぁ、千弦とのキス……いいな。唇から伝わる独特の柔らかさや温もりがとてもいい。千弦の甘い匂いも感じられて。千弦とキスできて幸せだ。

 少しして、千弦の方から唇を離した。その瞬間に目を開けると、目の前には幸せそうな笑顔で俺を見つめている千弦がいて。そのことにも幸せな気持ちを抱く。


「洋平君とおはようのキスができて幸せです」

「俺も幸せだよ、千弦。今日も学校を頑張れそうだ」

「それは良かった。私も頑張れそう。……提案なんだけど、これからは学校へ行くときにおはようのキスをすることにしませんか?」

「それいいな。賛成だ」

「ありがとう! じゃあ、決定だね」


 千弦はとっても嬉しそうにお礼を言った。

 おはようのキスがとても良かったから、これからは今まで以上に学校へ行くのが楽しみになりそうだ。


「じゃあ、学校へ行くか」

「うんっ」


 千弦と俺は手を繋いで、洲中高校に向かって歩き始める。

 昨日の夜のことや、現在放送されていて2人とも観ているアニメなどについて話しながら歩いていく。千弦と話すのが楽しくて、学校に着くまであっという間だった。

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