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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
特別編3

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第5話『一緒にアニメを観たい。』

 千弦がプリンを食べ終わった後は、


「一緒にアニメを観たいな。今日は元々お家デートの予定だったし」


 という千弦のリクエストで、ここ数日間に放送された千弦も俺も観ているアニメの最新話を観ることに。数作品ある。お家デートではアニメを観るのが定番だし、アニメを観たいと思ったのだろう。

 アニメを観始める前に、千弦が俺にアイスコーヒーを作ってくれた。いつも一緒にアニメを観るときは飲み物を飲んでいるし、千弦が、


「ささやかだけど、お見舞いデートに来てくれたり、私に色々してくれたりしたお礼に、洋平君に美味しいアイスコーヒーを作りたいな」


 と言ってくれたからだ。

 千弦の作ってくれたアイスコーヒーはとても美味しくて。これまでにも千弦が作ったコーヒーを飲んだことは何度もあるけど、今回作ってくれたコーヒーが一番美味しく感じられる。今日のお礼に作りたいという千弦の気持ちが込められているからかな。

 ちなみに、千弦はペットボトルのスポーツドリンクを飲んでいる。

 いつもの通り、千弦と隣同士でクッションに座り、キャラクターのことやストーリーのことなどを中心に話しながらアニメを観ていく。いつも通り、それがとても楽しくて。千弦も楽しいようで笑顔をたくさん見せ、声に出して笑うことが何度もあった。

 ただ、今日は千弦が体調を崩したのもあって、こうしていつものように千弦と一緒にアニメを観られることを幸せに感じた。




「どのアニメも最新話面白かったね!」

「面白かったな。あっという間だった」


 数作品の最新話を全て観終わり、千弦と俺はそんな感想を口にした。

 作品自体が面白かったのはもちろんのこと、千弦と喋りながらアニメを観ることも面白かった。だから、数作品観終わるまであっという間に感じられた。


「体調がある程度良くなってきて、こうして洋平君と一緒にアニメを観られて良かったよ。一緒にお家で過ごすときの定番だけど、いつもと同じようにアニメを観られるのって幸せだなって思った」

「俺もアニメを観ているときに同じことを思ったよ。それだけ、千弦と一緒にアニメを観るのが好きなんだって思う」

「確かにそれは言えてるね。私も洋平君と一緒にアニメを観るのが好きだから」


 千弦は持ち前の明るい笑顔でそう言ってくれる。千弦も俺と同じであることがとても嬉しい。

 嬉しさのあまり、俺は千弦にキスをした。キスされると思わなかったのか、キスした瞬間に千弦の唇からピクッと小さな震えが伝わってきた。その反応がとても可愛い。

 2,3秒ほどして、俺は千弦から唇を離す。すると、目の前には見開いた目で俺を見つめる千弦がいて。


「今の千弦の言葉が凄く嬉しくてキスした」


 俺がそう言うと、千弦の顔には可愛らしい笑みが浮かぶ。


「そういうことだったんだね。いきなりキスされたからビックリしちゃった。体もピクってなったし」

「唇越しに伝わってきたよ。可愛いなって思った」

「もう、洋平君ったら。でも、ありがとう」


 千弦はそう言って、俺にキスしてきた。さっき俺がキスしたときよりも短い一瞬のキスだったけど、千弦の唇の柔らかさや温もりははっきりと分かった。


「……あっ、もう6時前なんだね」


 千弦がそう言うので、部屋の時計を見ると……時計の針は午後6時前を指している。アニメをいくつも観たから、気付いたらこんな時間になっていたのか。


「そうだな。もうこんな時間か」

「アニメを観ていたもんね。もうそろそろ帰る? いつもこのくらいの時間に帰ることが多いし」

「そう……だな。千弦の体調がある程度良くなったし、千弦と一緒に観たいアニメの最新話は一通り観られたからな。今日はもう帰ろうかな」

「分かった。じゃあ、玄関で見送るよ」

「ありがとう」


 いつも千弦の家から帰るとき、千弦は最寄り駅の洲中(すちゅう)駅まで送ってくれる。ただ、今日は千弦のお見舞いデートだし、治りかけの体調なので玄関で見送るのは賢明な判断だと思う。

 千弦と一緒に千弦の部屋を後にして、果穂さんに挨拶するために1階のリビングへ向かう。果穂さんはテレビのワイドショーを観ていた。


「あら、白石君。帰るのかしら?」

「はい、俺はこれで帰ります。果穂さん、お昼ご飯ごちそうさまでした」

「いえいえ。楽しい時間だったわ。あと、今日は千弦のためにうちに来てくれてありがとう。体調を崩していても千弦が嬉しそうにしていたし。それに、私も白石君がいて安心できたからね」

「果穂さんのお役にも立てたようで良かったです」


 俺がそう言うと、果穂さんはニコッと口角を上げた。


「洋平君。今日は本当にありがとう。体調を崩して洋平君の家でのお家デートはなくなったけど、洋平君が会いに来てくれてお見舞いデートができて嬉しかったよ。洋平君がうちに来てくれて、私に色々としてくれたおかげで、ここまで体調が良くなったんだって思うよ。私にとって洋平君が一番の薬だよ。あと、一緒にアニメを観たのが楽しかった。ありがとう、洋平君」


 千弦は持ち前の明るい笑顔でお礼を言ってくれた。

 午前中、ここに来たときの千弦は俺と会ったことで笑顔は見せていたものの、熱があって苦しそうにしていた。だから、ここまで体調が回復したことがとても嬉しい。俺のおかげでここまで良くなったとか、俺が一番の薬だと言ってくれるから、本当に。


「いえいえ。千弦の体調が良くなってきていて良かった。俺も千弦と一緒に過ごせて嬉しかったよ。アニメを観るのも楽しかった。お見舞いデートも初めてだったし、果穂さんと2人で食事をしたのも初めてだったから新鮮な一日だったよ。高2の夏休みの思い出の一つになったぞ」

「そっか。私も今年の夏休みの思い出になったよ」

「そうか」


 千弦が体調を崩したことで、元々あったお家デートの予定はなくなってしまったけれど、千弦にとっても思い出になって良かった。

 その後、俺は千弦と一緒に玄関まで向かう。


「じゃあ、俺は帰るよ」

「うんっ。今日はありがとう。あと、洋平君が買ってくれた桃のゼリーは夜ご飯のデザートに食べるよ」

「ああ、分かった」

「うんっ。……洋平君、明日ってバイト?」

「ああ。午前11時から午後5時までバイトをするよ」

「そっか。全快したら洋平君のバイト先に行こうかな」

「分かった」


 明日のバイト中に千弦と会えるかもしれないのか。それだけで明日のバイトはいつも以上に頑張れそうだ。


「千弦、またな。お大事に」

「ありがとう。またね、洋平君」


 そう言い、千弦は俺のことをそっと抱きしめて、さよならのキスをしてきた。

 抱きしめられているので、千弦の温もりや甘い匂いに包まれている感じがして。だから、千弦とのキスがとても心地良く感じられた。そう思いながら俺も千弦のことをそっと抱きしめる。

 少しして、千弦から唇を離した。すると、目の前には千弦のニッコリとした可愛らしい笑顔があった。


「またね、洋平君」

「ああ。またな、千弦」


 再び別れの挨拶を交わすと、俺達はお互いに抱擁を解く。すると、千弦は小さく手を振ってくる。

 俺は千弦に手を振って、千弦の家を後にした。

 午後6時を過ぎたので陽が傾き始めている。それもあり、今日は千弦の家に長時間滞在したことを実感する。

 明日は普段通りの体調に戻った千弦とバイト先で会えたら嬉しいな。そんなことを思いながら、俺は帰り道を歩いていった。

明日公開のエピローグでこの特別編は完結します。

最後までよろしくお願いします。

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