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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
特別編3

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プロローグ『お家デートからお見舞いデートに変わった。』

特別編3




 8月5日、月曜日。

 高校2年生の夏休みも中盤になった。

 今日も起きたときからよく晴れている。朝食を食べる前に観た天気予報によると、今日は一日中晴れ、最高気温は35度と猛暑日になる予報だ。まさに夏真っ盛りと言えよう。

 今日はお昼過ぎから俺・白石洋平(しらいしようへい)の家で、恋人の藤原千弦(ふじわらちづる)とお家デートをすることになっている。千弦とデートをするのが待ち遠しい。

 今は午前8時40分。

 午前中は部屋の掃除をしたり、あと少しで終わる夏休みの課題を片付けたりしていくか。


「よし、掃除からやるか」


 まずは掃除機で床や絨毯の上を綺麗にするか。そう決めて、納戸にある掃除機を取りに行こうとしたときだった。

 ――プルルッ。プルルッ。

 ローテーブルに置いてある俺のスマホが鳴る。この鳴り方だと……メッセージやメールではなく、誰かから電話がかかってきているのか。

 スマホを手に取り画面を確認すると、


「おっ、千弦からだ」


 LIMEというSNSアプリで電話がかかっていると表示されている。

 夏休みになってから、午前中に電話をすることはあるけど、今の時間帯に電話がかかってくるのは珍しいな。何かあったのだろうか。そう思って、俺は通話のボタンをタップした。


「千弦、おはよう」

『……おはよう、洋平君』


 スマホから聞こえてくる千弦の声は、普段よりもトーンが低くて元気がなさそうに思える。


「どうした、千弦。何だか、いつもより元気がなさそうだけど……」

『……うん。体調を崩しちゃった。熱が出て、だるさもあって、頭もちょっと痛くて』

「そうなのか……」


 それなら、今のような元気のない声になってしまうのも無理はない。


『……うん。昨日は夜中の1時から大好きなBLアニメがあって……それをリアルタイムで観たの。それまでは何時間も日本史とかの夏休みの課題をやっていたから、それが原因かなって……』

「なるほどな」


 夏休み中だから、夜遅い時間でも大好きなアニメをリアルタイムで観たんだな。放送される時間まで夏休みの課題をしていたのは、勉強をしっかりとする千弦らしい。

 夜遅くまで起きていたことと課題をしていたことで疲労が溜まり、千弦は体調を崩してしまったのだろう。


『起きた直後から熱っぽくて。体がだるくて。頭痛も感じて。熱を測ったら38度以上あって。洋平君のお家には午後にお邪魔する予定だけど……この体調だと無理だなって。だから……今日のお家デートは、なしにしたいと思って……電話したの……』


 時々、言葉を詰まらせながら千弦はそう言った。鼻をすする音も聞こえてきて。今、千弦は泣いているのかもしれない。楽しみにしていたデートをなしにしたいとお願いするほどに体調を崩してしまったから。


「分かった。今日のお家デートはなしにしよう。千弦の体調が何よりも大事だから」

『……うん。ありがとう。ごめんね……』

「気にしないでくれ。……千弦さえ良ければだけど、今日は千弦の家にお見舞いに行ってもいいか? 千弦に会いたいし」

『もちろんだよっ。私も洋平君に会いたい』


 さっきまでよりも弾んだ声で千弦は返事する。

 千弦も俺と会いたいか。それが分かって嬉しい気持ちになり、胸が温かくなる。


「そうか。嬉しいよ。じゃあ、千弦の家にお見舞いに行くよ。……ちなみに、お腹の調子はどうだ?」

『お腹は大丈夫だよ』

「良かった。じゃあ、家に行く途中で、冷たい飲み物や食べ物を買うよ。何か買ってきてほしいものはある?」

『プリンがいいな。大好きだし。あとは桃のゼリーも食べたい気分。好きだし、洋平君のお見舞いのときに彩葉ちゃんと一緒に差し入れたのもある』

「あのとき、プリンと桃のゼリーを差し入れてくれたよな」


 ゴールデンウィーク明けに俺はバイトなどの疲れで体調を崩して学校を休んだ。千弦と友人の星野彩葉(ほしのいろは)さんが放課後にお見舞いに来てくれて、桃のゼリーとプリンを差し入れてくれたっけ。あのときは星野さんにゼリーを食べさせてもらったな。


「じゃあ、プリンと桃のゼリーを買うよ。飲み物は何か買ってくる?」

『飲み物は……大丈夫。お母さんがスポーツドリンクを持ってきてくれたし。それに、うち、熱中症対策でたくさんあるから』

「そうか。了解だ」

『うんっ。……今日はお見舞いデートだね』

「お見舞いデートか」


 初めて聞く言葉だったので、思わず復唱してしまった。


『うんっ。今日は元々お家デートだったから、デートって付けたくて』

「なるほどな。デートって付ければお見舞いがとても楽しくなりそうだ」

『そうだね』


 ふふっ、と千弦の笑い声が聞こえてくる。普段に比べるとか細いけれど、千弦の笑い声を聞けて安心する。電話がかかってきたときは元気のない声だったし、体調を崩していると言われたから。


「何時くらいに行こうか? 元々のお家デートと同じでお昼過ぎにする? 千弦さえ良ければ、午前中から行ってもかまわないぞ」

『……午前中から来てほしいな。体調を崩して、こうして通話をしているからかな。いつも以上に洋平君に会いたい気持ちが強くて』

「了解だ。じゃあ、午前中から行くよ」

『うんっ。あっ、ただ……この後すぐに、お母さんと一緒に近所にあるかかりつけのお医者さんに行くの。だから、その後に来てもらっていいかな? 帰ってきたら連絡する』

「分かった。じゃあ、また後で」

『うんっ』


 そう言い、千弦の方から通話を切った。

 千弦が体調を崩した影響で、お家デートからお見舞いデートに変わった。ただ、千弦と会う予定があることには変わりない。そのことを嬉しく思いつつ、俺はお見舞いデートに行く準備をするのであった。

新しい特別編がスタートしました! 既に完成しており、全7話でお送りします。

1日1話ずつ公開していく予定です。よろしくお願いします。

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