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第122話 即位式

 エドワード国王の処刑から一週間後、ブローリ公爵の一族などが立てこもった館も陥落した。ミレーヌに予め厳命されていたジャックは、降伏した者であっても、すべて皆殺しにし、ブローリ公爵の一族は滅亡した。


 それから、一か月後の今日。女王即位の日を迎えた。カッツー王国は滅び、新たに建国されたクライナイン王国の初代女王の誕生の日でもあった。なお、国名はミレーヌが直接選んだものである。このミレーヌが転生する前の世界において、統制や選別を意味するギリシャ語であったが、配下の誰もがそのことは知りえない。


 王宮の謁見の間は、騒乱の血を洗い流すかのように清められ、厳かな空気に満ちていた。玉座には、カッツー王家の伝統的な装飾を排した、シンプルで研ぎ澄まされた意匠の玉座が据えられている。

 ミレーヌは、深紅のビロードのガウンに、銀の刺繍を施したシンプルなドレスという姿で、玉座へと静かに歩みを進めた。参列していたのは、レベッカやラウールら旧グラッセ公爵家の家臣や、ミレーヌに隷属した百家あまりの貴族、さらに今回の戦いで新たに降伏した百二十家あまりの貴族たちであった。もともとカッツー王国には三百五十八家の貴族がいたので、戦乱により三分の二以下になっていた。彼らは、ミレーヌの冷徹な威圧感に息を飲み、静かにその光景に注目した。

 ミレーヌは、ゆっくりと玉座に腰を下ろした。

 その瞬間、謁見の間に集まっていた貴族たちは、まるで何かに圧されたかのように、一斉に膝をつき、新たな女王に服従を示した。彼らの心に、反抗の意思は微塵もない。

 玉座の脇に立つレベッカが、羊皮紙を開いて宣言した。


「今日ここにクライナイン王国の建国を宣言する……」


◇◆◇◆


 即位式のち、王宮の広間にミレーヌに隷属した貴族や、新たに降伏した諸侯が集められた。集まった貴族にレベッカが一礼し、クライナイン王国の人事を発表する。


 宰相レベッカ

 財務庁長官カイン

 商業庁長官ラウール

 工務庁長官サミール

 農政庁長官エドモンド・シェロン伯爵

 情報庁長官マリユス・ピエール

 司法庁長官ヨハン

 行政庁長官オーブリー

 技術開発庁長官レーモン

 宮内庁長官パトリス

 近衛将軍フィデール

 王宮研究所室長ホマン


 この人事は、ミレーヌが腹案をレベッカに示し、連日打ち合わせをして、何度も修正したものであった。ミレーヌが登極したことで、公爵家の家臣は、王国の中枢として高位に昇進した。

 当初は、ラウールに財務庁と商業庁を兼務させることを考えたミレーヌであったが、彼に権力が集中しすぎることを懸念したレベッカが、財務庁長官にカインを推薦したことで、二人の処遇が決まった。

 オーブリーはカッツー王国の次席書記官であり、今までひたすら情報を流し続けた功と、その能力をもって行政庁長官に任命された。エドモンド・シェロン伯爵は自身の領地の農政改革を断行するも天候に恵まれず凶作となったため、ラウールを通じて借財した貴族であり、その知識と能力を見出したレベッカがミレーヌに推挙した。

 マリユス・ピエールは、リナが昔から馴染みであると推薦した王国東側に本拠地を置く商人であった。ラウールが情報網を一手に担う立場を危惧したレベッカも強く推したこともあり、ミレーヌはそれを了承した。

 なお、司法庁長官は適材な人材はいなかったため、とりあえず公爵家に古くから使えるヨハン書記官をあてがったが、高齢であり適当な人材を見つけ次第交代させることになっていた。


 さらに、軍は女王直轄とし、統帥権は女王ミレーヌが持つ。それを補佐する役としてジャックとゲオルクの二人が大将として任命された。さらに西域方面防衛担当として、リアル・グラック辺境伯爵が任命された。さらに、リアル辺境伯爵には、特例として、防衛の責務を負う代わりに、自領の自治権を与えると公表された。


 こうして、クライナイン王国の全陣容が判明した。すでに税率もグラッセ公爵家と同等の水準に引き下げられたうえに、物価の安定政策がとられたこともあり、民衆は新女王の誕生に歓喜した。貴族たちも、王国の前途は素晴らしく、その恩恵を自分たちも受けることができると思った。


 最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

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