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父親の条件

 数日後、俺とリョウは、二人でイフカ遺跡群の一つ「メルシム」の攻略に乗り出していた。

 数年前に発見されたばかりで、まだ手つかずのエリアも多い迷宮だ。


 ここは出現する魔物も多いが、魔獣とは違って魔核以外の素材が得られない「妖魔」が大半である上に、奇妙なトラップが多いためにあまり人気がない。

 魔物のレベルも比較的高く、初級、中級冒険者が挑むには危険が大きい。

 その分、未踏破エリアにお宝が眠っている可能性が高い。


 こういう箇所を進んでいくときには、偵察 ・ 斥候を意味する「スカウト」系のスキルが高い四ツ星ハンターのリョウは心強い。

 彼は、トラップや潜んでいるモンスターの気配などを見抜く「探知系」能力に長けているのだ。


 それだけではなく、戦闘能力も俺と同等以上。

 彼自身の魔力は少なく、基本魔法しか使えないが、その分を強力なマジックアイテムを持参することによって補っている。


 今、目の前には定まった形を持たない「死霊」の群れが存在していたが、それにも二人で冷静に対応する。


「死霊」には電撃系の魔法が有効。俺が「紫電」の魔法で動きを止めて、リョウが杖に込められた「聖光」の放出魔法で排除する。


 そこから逃れて襲いかかってきた複数の「死霊」もいたが、俺も剣に「聖光」を纏わせていたので、一撃で葬り去った。


「……すげえな、今の動き。一振りで二体倒したんじゃないのか?」


 リョウが、感心したような、呆れたような声をかけてきた。


「ああ、なんか体が軽いような感じなんだ」


「やっぱり、発動したっていうオリジナルスキルの影響か?」


「そうだろうな……」


 俺は、同じ現代日本からの異世界転移者であるリョウにだけは、このスキルの詳細を話していた。


「……まさか、『パパ活』が発動条件になるなんてな、ラッキーじゃないか」


「いや……神もひねくれている。最初から教えてくれていれば、今までもっと楽に冒険者としてやってこれたんだがな……」


「隠されていたからこそ、発動したときに強力な能力となるんだろう?」


「そうかもしれないが……なんか発動条件も曖昧だしな。養子縁組して『義理の娘』にでもなったならともかく、食事を奢って五千ウェンを渡しただけだぞ?」


「もともと、『父親』なんて、自分の腹を痛めて子供を産んだわけじゃないからな。血の繋がった実の娘にも愛情を持てない者もいれば、赤の他人であっても無償の愛情を注げる聖人のような父親もいる……まあ、ハヤトの場合は下心もあるんだろうが」


「死霊」からドロップした高品質の「魔核」を拾いながら、リョウは俺をからかうようにそう言った。

 この迷宮を探索しているのは現在俺たちだけなので、他者に会話を聞かれる心配も無い。


「……いや、少なくとも今のところ、俺はミリアに対してそんな感情は持っていない」


「そうなのか? けど、あの娘のスポンサーになることを考えているから金が要るって言ってたじゃないか。そのためにここに来ているんだろう?」


「まあ、そうなんだが……俺の場合、そういうんじゃなくて、『他の誰かにミリアのスポンサーになられたくない』っていうのがある」


「……なるほどな。あの娘を奪われたくないってことか……よっぽど惚れ込んだ、っていうことか」


「そんなんじゃないさ……ただ単に、せっかく発動した俺のオリジナルスキルが、ミリアが他の奴と契約することで消えてしまうんじゃないかって心配しているだけだ」


「……なるほどな。愛情が薄れてしまうってやつか……それはあるかもしれないな。俺としても、ハヤトが強くなったことは歓迎すべきことだから応援はする。今日もかなり楽ができているしな……おっと、この扉の向こうは未踏破区域のはずだ。気を引き締めていくぞ」


 リョウはそう言うと、罠に警戒しながら、その重い鉄製の扉の錠を外し、ゆっくりと扉を開いた。

 その瞬間、今までより格段に濃い瘴気が辺りに充満した。

 おぞましい気配に、鳥肌が立つ。


「……これはやべえ奴だな……アイテムや魔力を使い惜しみしたら……死ぬ」


 四ツ星ハンターであるリョウが、そう警告を発する。


「ああ……最上級の戦闘モードで行く」


 俺もそう同調して、扉の向こう、大広間へと侵入していく。

 そこに立っていたのは、身長三メートルはあろうかと思われる、六本の腕それぞれに長剣を持つ骸骨の騎士だった。


「……あの剣それぞれに闇の魔力が込められている……奴を倒せばあれだけでかなりのお宝だ。俺たちだけで倒しきるぜ」


 リョウが、警戒しながらも喜びに満ちた声を発した。


「ああ……行くぞっ!」


 俺は左手にためた魔力を、「紫電」に変えて六本腕の化け物へと放出した。

 間髪入れず、リョウがアイテムで強力な「聖光」を放つ。

 しかしそれだけでは、その化け物には大したダメージは与えられていないように感じられた。


 この戦い、長引くと直感した。

 だが、この敵を倒しきれば、ひょっとしたら一年間ミリアのスポンサーになれるだけの額を稼げるかもしれない。


 あの少女の事を想うと、また力がみなぎってくるのが分かった――。 


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