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オダリスク・ハート  作者: 未央トサ
【一章】新しい【日常】
22/25

意地の表裏

【シンイチ】


「ーーがはッ」


肺や気道の空気が全て吐き出され、ばかりか、足りず、胃液も口から噴き出す。


痛みに霞みながら正面を見据えると、知った顔が不思議そうな笑みを浮かべている。


重く引力に引かれた体が、もう倒れよう、楽になろうとこうべを垂れる。


それでもーー。


負ける訳にはいかない。対峙する事を諦めてはならない。


言う事を効かない全身の、顔だけは上げて咆哮する。


まだだ。



【コウジ】


「ーーがはッ」


対峙した男から液体が噴き出す。


痛みに顔を歪めながら、それでも倒れそうになる体を奮い立たせている。


おそらくこれで終わりではないだろう。厄介だな。


喧嘩ばかりの頃、何人か手強いタイプがいた。

窮鼠となり、しかし引くに引けない状況となった時に、自分を奮い起せるタイプだ。

油断すると怖いのは、こういう男だ。猫を噛む。


それでもーー。


俺には俺の立場が、信念がある。

負ける訳にはいかない。油断はしない。


男は言う事を効かない全身の、顔だけは上げて咆哮する。ーーそう。


まだだ。

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