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22話

誤字報告ありがとうございます。

 領主様が帰宅した日の夕方、屋敷の食堂に5人の男女が集まって話していた。議題は勿論"賭け"についてだ。


「賭けの内容は分かりました。それで具体的な案は何かあるのですか?」

エレナさんが、ミナお嬢様の方を見ながら言った。


「いや、まだ無いな、それをこれから話したいと思うのだが。」

ミナお嬢様が言う。


「具体的な話に入る前に、確認した事があるのですが宜しいですか?」

俺は手を上げながら言った。


「何じゃユータ?」


「失礼を承知で尋ねます。賭けの勝ちの条件である"ご領主様を納得させる功績を挙げる"ですが、仮にお嬢様がどんな功績を挙げてもご領主様が認めない可能性があるのではないでしょうか?」


「ふむ、難しい条件であるが、勝ち目の無い条件では無いだろう。」

ミナお嬢様が続ける。

「母上は周りにも厳しいが、ご自身にも厳しいお方だ、私がしっかり功績を挙げれば、それを認めないということはない。まして、あの場にはレナお姉さまの他に母上の側近二人も居た。明らかな功績を挙げたのにそれを認めなければ、信を失う事にも繋がるだろう。」


「分かりました。杞憂だったようです。」

なるほど、全く勝ち目のない勝負というわけではないのか、俺は領主様の人となりを知らない。しかし、ミナお嬢様が勝ち目があると言う以上、どのように功績を挙げてもらうかに注力すべきだろう。


「功績というと真っ先に思いつくのは、"武功"ですが、ミナお嬢様はまだ成人しておりませんので、戦場には出ることが出来ません。他はモンスターの退治などがあると思いますが、どうでしょう?」


「母上が認めるとなると上級モンスター以上の討伐だな、短い期間では難しいと思うが、探すことはしようと思う。」


 上級モンスターは人間100人以上から対処できるぐらいの強さらしい。上級モンスターと呼んでいるが基本的に"単体"ではなく"モンスター群"の事を言う。つまりゴブリンのような下級のモンスターでも数が増えれば、中級モンスターや上級モンスターとして扱われる可能性もあるという事だ、しかし、基本的にモンスターは種類によって群をなす個体数がほぼ決まっているため、その種類によってクラス分けされる。


 上級モンスターの討伐は基本的に軍隊として対処すべき案件なのだが、勇軍としてなら、ミナお嬢様も参加できる可能性はある。モンスターの死骸は部位によっては売れる所もあるが、それ程うまみがあるわけではない。しかし、放置すると村や町に被害がでるので対処せざるを得ない。軍としては費用を抑えたいから、勇軍を認める。代わりに幾ばくかの"名誉"と"報酬"を与えるわけだ。名誉という"名"を与えることで、報酬と言う"実"を節約しているんだろう。よくある手だな、但し、この名誉 意外に役に立つ、貴族なら騎士号を取るのに役に立つし、平民なら仕官の時に役に立つ。日本で言うと"ボランティア活動をしていると、就活に有利"そんな感じだな。


「武功の他だと、(まつりごと)がありますけど?城や砦を建てるとかは結構な功績と聞きます。」


「時間も金もないし、大体、ゼウル村には城や砦は必要ないだろう。」


 まぁ、そうだよね。後、考えられるのは学問と商業か、学問は単に俺が知っている知識をミナお嬢様に教えたととしても、それ自体がミナお嬢様の功績と認められることはないだろう。そもそも、この国というか、この時代あまり学問は重要視されていない。


 残りは商業だが、思うところはある。簡単なのは現代の知識を利用してこの世界には無いものを作るとかだな。よくあるのは、お酒、火薬、盤上ゲーム、新型兵器とかだが、これも問題がある。この"賭け"の重要な部分は、あくまでもミナお嬢様が功績を挙げることだ、俺のアイデアを元にミナお嬢様が利益を出して功績を挙げたとして、領主様がそれをミナお嬢様の功績として認めるか?という問題がある。要は作った物自体が革新的・斬新的過ぎるとダメなわけだ。農作物などの栽培等はいい線行くかもしれないが、8ヶ月という期間ではモノにするのは難しい。そもそも、短い期間で本と知識だけを元に新しい物を作り、使えるレベルまで落とし込み、流通経路に乗せ、功績が出ると言える程 売るのは難しいと思う。


 やはり石鹸かな?まだ不安なところはあるが、ノウハウも蓄積出来ている。色々手を出して失敗するよりは一本に絞った方がいい気がする。功績としても分かりやすいだろう。それに石鹸自体は、それほど斬新なものではない。寧ろ今までこの国になかったと言う方が驚きだ。実際、ミナお嬢様も東の国では一般的に使われていると思っているぐらいだ。


「石鹸はどうでしょうか?」

俺は取り合えず提案してみる事にした。


「石鹸か・・・」

ミナお嬢様は呟くように言った。


「ダメですか?」


「ユータは私が石鹸を売って、商売で功績を挙げると言いたいのだろう?」


「そうです。」


「仮に石鹸が大量に売れたとする。しかし、貴族が商人まがいの事をして、それを母上が認めるか?という問題がある。」


 なるほど、ようは貴族らしくないからダメだと言いたいのだろう。


「それにユータはいいのか?石鹸の作り方は秘匿すべき技術だろう。」


「そっちについては僕は、あまり気にしてません。」

もちろん村人に教えて石鹸を作る場合、箝口(かんこう)令はひくつもりだが、そもそもあまり隠す気がない。俺的には"賭け"を乗り切れればいいと思っている。この時代の情報のやり取りを見れば、8ヶ月で真似出来る程 広まるとは思えないので問題はないというわけだ。賭けの後は衛生面の事を考えれば広まって欲しいとさえ思っている。


 いっそ、逃げるという手もあるか?石鹸で金を稼ぎまくって、ミナお嬢様達とトピカ領以外の場所で暮らす・・・。


 うん、ないな、思考が壊滅的になってる。まじめに考えないと。


「では、2面作戦で行くか?」

ミナお嬢様が続ける。

「上級モンスターの情報を集めつつ、石鹸を売って商売での功績を狙ってみる。私の年齢を考えれば武勇で功績を挙げるのは難しいと母上も理解はしているはずだ、商売での功績でも認めてくれる可能性はある。」


 なるほど2面作戦か、現状それが一番現実的かな?


「いいのではないかと思います。」

エレナさんが賛成する。


「僕もいいと思います。ただ、言い出した手前申し訳ないですが、石鹸を売る際に条件を付けたいのです。石鹸はシャンプーとしてではなく、洗剤として売りたいと考えています。」

ミナお嬢様の意見に、基本的に賛成だけど、石鹸には一つ問題がある。品質が安定しないという事だ。屋敷で使っている石鹸などは、最初に毛皮を洗って問題ないことを確認し、更に、パッチテストもしている。それでも体質などにより異常が出る場合もあるから、屋敷の女性達の肌に異常が出てないかきちんと毎日確認している。レナスタシア様には帰り際にお土産として、石鹸シャンプーを渡したが、肌に異常が出た場合はすぐに使用をやめるよう忠告している。大量に売るとなると全てをチェックするのは不可能だろう。まして、俺自身の知識が不完全なのに、それをさらに村人に教えて作ってもらうとなると、どうなるかは目に見えている。石鹸をシャンプーとして売るのはリスクが大きすぎる。


「洗剤?皿を洗ったり、服を洗う用途に限定するという事か?」


「そうです。」


「分かったユータにはユータの考えがあるのだろう。それでいこう。」


 インパクトは薄れるだろうが、洗剤としての用途に限定しても、今までなかったものだから、それなりに売れるのではないかと思う。後は8ヶ月でどれだけ売れるかが勝負だな。

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