12話
誤字報告ありがとうございます。
目が覚めると、木の部屋にいた、全体的に埃っぽく、じめっとした印象だ。目覚めは最悪で頭がぼーっとする。口には布のようなものを巻かれ、手は後ろ手に縛られ、足もロープで縛られている。服は脱がされ、裸だが、下半身はズタ袋のような物に入れられていた。
「よう。お目覚めかい。お坊ちゃん。」
声がしたので、そちらを向くと不良っぽい少女がいた。確か、ワンナと一緒にいた獣人だ。隣にはもう一人、別の獣人の少女がいた。
「悪いが引ん剝かせて貰ったぜ、本当に"男"か確かめる必要があったんでな。」
"ギャハハハ"と品のない声を上げて、もう一人の獣人が笑う。
(俺が男だと何かあるのだろうか?)
「なんで、男ってバレたか、不思議そうな顔をしているな。教えてやるぜ。どうせ、短い付き合いだ。」
獣人の少女は話を続ける。
「ワンナという犬の獣人がいたろ。あいつがお前の臭いを嗅いだ際、男の臭いがしたそうだ、まぁ、正確には父親と同じ匂いがしたと言ったんだがな。」
「あいつは特別鼻がいいのさ、そのお陰で俺も大分儲けさせて貰った。」
こめかみを人差し指で叩きながら、少女は自慢げに話している。
「・・・・」
「しかし、貴重な男の子供の上に、これほどの上玉、今から売るのが楽しみだぜ」
少女が、俺を嘗め回すように見ながら言った。
(男が貴重…?どういうことだ?この世界は男の数が少ないのか?"ゴブリンを退治する少女"、"過酷な行商をする女の人達"、今まで、ぐるぐると回ってた考えにピタリと嵌った。辻褄は合う気がする…。)
「姐御、"クイナ"から報告だ、街の連中、総出で、俺らを探してるらしい。」
後ろから声が聞こえた、もう一人、いや、二人仲間がいるらしい。
「ちっ、"ワンナ"が白状ったか、夜になったら闇に乗じて、関を超えるぞ、こいつにズタ袋を被せろ、こんな辛気臭ぇ村とはおさらばだ。」
「そういや、ワンナはどうするんだ?」
「あんなガキ、もう用はない。放っておけ。」
仲間の一人の獣人が、俺にズタ袋を被せようと近づいてきた。
「なぁ、姉御、こいつ売る前に、一回やっちまわねぇか」
獣人の少女が喉を鳴らしながら言う。
「止めときな、"発情期"でもないのに無理やり絞り出すと、死んじまう事もあるらしい。なに、こいつを売れば、たんまりと稼げるさ、その金で男と遊べばいい。」
(発情期?また訳の分からない単語が出てきた。)
「ちっ、もったいねぇ。」
そういいながら俺に、ズタ袋を被せてきた。
(ただ、こいつらの目的は分かった、俺を売る気なのだろう。どうやら俺は高く売れるらしい。状況は分かった。ただ、それを、打破する方法がない。色々、思うところはあるが、この状況を何とかするのが最優先事項だ。)
せめて、猿轡だけでも、外せないかと俺が、口の布を床に擦り付けていると。
不意に腹の辺りが蹴られた。
"ドカッ" 容赦のない一撃だった。肺の空気が全部抜けるかと思った。俺は痛みで体をくの字に曲げる。
「ジタバタすんじゃねぇ!」
「おいっ、大事な商品だぞ、あまり手荒に扱うな。」
「分かってるよ。」
そう言いながら、更に、もう一発、腹に蹴りが加えられた。
(正直、この状況で俺が出来ることはもうない。村の人、総出で探してくれてるらしいが、少女達も馬鹿ではない。見つけてくれる確率は低いだろう。唯一、機会があるとすれば、俺を連れ出すタイミングだ、少女らにとっては一番リスクが高い時間、逆に俺にとってはチャンス。)そう思い、体力を温存しようと決めた。
(・・・・)
(・・・・)
それから、大分時間が立った、姉御と呼ばれるリーダー格の少女が。そろそろ頃合いだなと声を出した時、恐ろしい勢いでドアが開いた。同時に知っている声が俺の耳に届く。
「ユータ!」
エレナさんだ。
俺は、自分の存在を主張しようと、ズタ袋の中で動く。
「ユータ!」
「なんだ、てめぇ」
"ズガッ" 少女がそう言ったと同時に、恐ろしい音が聞こえた。
「むかつくから、喋べらないで下さい。」
そう言った、エレナさんの声は今まで聞いた事がないくらい冷たいものだった。
エレナさんは、俺の上半身をズタ袋から、出して、猿轡を外してくれた。俺を見たエレナさんの周りの空気が更に、一段階下がった気がした。
「ここはゴミが多いですから、私が掃除の手本を見せてあげます。」
エレナさんは立ち上がりながら言った。いつも閉じられている目は、完全に開いており、赤い瞳が煌々と光っているのが分かる。
「おい、囲め」
不良のリーダー格の少女が言った。4人の内の1人は部屋の隅で既に倒れていた。
3対1で大丈夫なんだろうかと、思ってたら、エレナさんの右後ろに居た獣人の少女が吹っ飛んだ。続けて斧を振り上げて来た、左後ろの獣人の少女も吹っ飛んだ。一人目は右回し蹴り、二人目は左エルボー、俺に分かったのはそれぐらいだった。
それを見た、リーダー格の少女は完全に戦意喪失していた、エレナさんは正面に居たリーダー格の少女の顎を下から、右足で蹴り上げた。だが、それでは気が収まらないのか、更に追撃が入る。壁に追い詰められているため、倒れることは出来ない。獣人の少女は既に気絶しているように見える。
これ以上やったら、まずい事になる。俺はエレナさんを止めようと声を出そうとするが、うまく肺に声が入らない。
「ェレナさん・・・」
ようやくキチンと肺に空気が入った。
「お姉ちゃん!!」
俺の声を聞いて、エレナさんはようやく、我に返ったようだ。獣人の少女は、枯れ木が倒れるように、その場にドサッと崩れ落ちた。




