第68話【リズの決意】
目を覚ますと、美しい夜空が広がっていた。
星々が輝き、月光がリズを照らしている。
「……。……っ! フェアリー!」
ぼんやりしていた意識が一気に覚醒し、彼にやられたフェアリーを思い出して飛び起きた。
辺りを見渡すが、そこには海しかない。
リズがいる場所は砂だけの陸地だった。
なぜこんな場所に? と最初こそ疑問に思ったが、彼に腹を貫かれて海に落とされたことを思い出した。
慌ててリズは腹を見た。
「あれ? 傷が無い?」
そんなはずはない。
確かに彼に貫かれたはず。
痛みも覚えている。
無傷はハズが……
『目を覚ましたようだね』
「え?」
聞き覚えのない少年のような声にリズは驚いた。
キョロキョロと声の主を探すと、目の前に緑の光が現れた。
『こんばんわ。僕はシルフ。気分はどうだい?』
「シ、シルフ、様!?」
風の精霊の初対面に驚いた。
ということはココは【風の鳴く島】?
そんなことを思っていると、サラマンダーやウンディーネたちまで現れた。
『おおリズ! 目が覚めたか!』
『心配したぞ! まったく!』
『体調は大丈夫かの?』
「み、みんな……みんなが助けてくれたんですか? ありがとうございます」
とりあえず状況的にそう思ったから礼を言って立ち上がった。
するとウンディーネが言う。
『違う。お前を助けたのはシルフだ。礼ならソイツに言え』
「え、あ……ありがとうございますシルフ様。助かりました」
『ううん。良いんだよ。それしかできなかったから……』
「あの、フェアリーは?」
彼女だけ居ないのがどうしても気になったリズが言うと、シルフたちは沈黙してしまった。
何も言わない精霊たちに、リズは嫌な予感がした。
「まさか……フェアリーは、海に……っ!?」
『いや……アイツは宇宙へ帰ったよ』
サラマンダーが正直に答えた。
『おいサラマンダー!』っとウンディーネが怒る。
『どうせいつかはバレるだろうが』とサラマンダーは反論した。
「宇宙へ!? そんな……」
事実を知ったリズは、衝撃のあまり尻もちをついた。
置いていかれたショックもそうだが、フェアリーは片腕を斬り落とされており重傷のはず。
「どうして行かせたんですか! フェアリーは片腕を失っているのに!」
自分で言ってから気づいた。
あのドが付くほど仕事に生真面目なフェアリーが、片腕を失ったくらいで止まるはず無い、と。
『ワシらも止めたんじゃがの……しかしフェアリーは……』というノームにリズは視線を落とした。
「……分かってます。フェアリーは、そんなことじゃ止まらないんですよね……。文句は言うくせに、仕事はちゃんとするんです。まるで……本人が嫌ってる人間みたい」
そうだ。
フェアリーは、どうしようもなく人間臭いんだ。
その道一筋で来た職人のように。
「……フェアリーはやっぱり【彼】を止めに行ったんですか?」
『そうだ。勝算は……無い様だったがな……』
ウンディーネの言葉にリズは顔を曇らせた。
やっぱり勝算は無いんだ。
【彼】はもう凄まじい力を手に入れてしまって、フェアリーでは太刀打ちできない。
フェアリーで勝てないなら、リズでもどうしようもない。
全精霊の力を持ってしても、おそらく……
なにせ【彼】は世界樹を喰らった大型ドラゴンに憑依して、その力を増幅させている。
こんな化け物に対抗できる力なんて、どこにも……
『まだドラゴンは降ってこねぇな』
『妖精たちが頑張っているんだろう』
『じゃがそれも何時まで持つかのォ……』
『ドラゴンもそうだけど、【彼】を止める術がない。僕たちはもう終わりだよ……』
精霊たちが口々にざわめく中、リズは夜空を見上げた。
あの星空の奥で、今もフェアリーは戦っているのだろう。
アタシたちのために。
そんなフェアリーの力になりたいのに、今は祈ることしかできないなんて……
フェアリーに会いたい気持ちと、一緒に戦いたい気持ちが込み上がってくる。
でも自分が参戦したところで、フェアリーたちの足を引っ張るだけかもしれない。
でもこのまま何もせず待っていても、きっとフェアリーたちは負けて、みんな死ぬ。
どうすれば…………そうだ!
「みんなお願い! アタシをフェアリーのいる宇宙へ飛ばして!」




