第55話【グランドクリフ王国】
グランドクリフ王国はエタンセル・アクアヴェールと並ぶ三大都市の一つで、その中でもっとも大きく繁栄している国だった。
ここ第一大陸の王であるグラベル国王が統べている。
山脈の随所に建築物が立ち、山頂には優雅な城が聳え立っている。
その山のような王国を船のデッキからリズとフェアリーは眺めていた。
もうすぐ港に船がつく。
それまでの待機時間だ。
「たっかぁ〜」
山頂にある城を見上げながらリズは言った。
隣のフェアリーもあまりに高い山のような王国に目を丸くしている。
不思議なことに、その王国からは音楽や歓声が絶えず、祭りのような雰囲気が漂っていた。
「凄い大きさですね。まるで大型ドラゴンのようです」
「え!? 大型ドラゴンってこんなに大きいの!?」
「大型ですからね」
「うん。いや、でも小型と中型ってそんなに大差なかったじゃん。なんで大型だけこんなにデカいの?」
「大型ですから」
「……」
「おーい姉ちゃんたち。もうすぐ付くから準備しとけよ〜」
近くに来た漁師さんに言われ、リズは「あ、はい!」と答えた。
するとその漁師さんは目を細めて王国を見つめ出した。
どうしたのかとリズとフェアリーはキョトンとしたが、漁師さんは気づいたように口を開く。
「ああ、そういえばもうそんな時期か」
「何がです?」っとフェアリー。
「王国が妙に賑やかだろ? ありゃあ武闘大会が開かれてるな」
「武闘大会? なんですかそれ?」
リズも知らなかったらしく、素直に漁師さんに聞いてきた。
「まぁあれだよ。名前の通り腕に自信のある奴らが集まって強さを競い披露する大会だ。昔、国王さまの誕生祭に開かれていたのが武闘大会なんだが、その大会を開くたんびにノーム様が姿を現して、その大会を大変よろこんでいたらしい。今はもうノーム様のための武闘大会になってるな」
「ノーム様が現れるんですか!?」
驚くフェアリーに漁師は頷く。
「ノーム様もこういうの好きなんだろ。この大会にはいろんな目的で人が集まる。ノーム様に一目会いたい人とか、自分の腕試しに参加する人とかな」
「この大会で優勝したらどうなるんですか?」
リズに聞かれて漁師は腕を組む。
「優勝したら多額の賞金と名声が手に入る。中でも聖騎士として王国軍に勧誘までされるんだ」
「へぇ、フェアリーなら余裕で優勝できるよね?」
「やりませんよ。時間の無駄です」
「ですよね……」
「ははは、まぁ姉ちゃんの実力なら優勝は狙えるだろうな。ただこの大会にはとんでもねぇ化け物が三人も出てくるんだ」
「化け物?」
リズが首を傾げると、漁師は城を眺めながら言う。
「王国には三将軍って言う折り紙付きの実力者がいてな。一人目は【破壊の徒手タスティエラ】二人目は【風花のジオグリス】三人目は【斬り捨てアシュラム】だ。彼らはグランドクリフ王国国王直属の近衛騎士団でな。一人一人が百の兵士を凌駕する実力者たちだ。大陸最強とも呼ばれているな」
「た、大陸最強!? そんな強い人たちが出たら優勝できないじゃん!」
リズは嘆くように言うが、当のフェアリーはまったく興味なさそうに近づいてくる港を今か今かと待っている。
「そうなんだよ。だからこの大会で優勝するのはいつもその三人の誰かなんだ。誰も彼らを突破できなくてな」
「その三将軍はイルセラ様の剣聖より強いんですか?」
「おお、強いらしいぜ。実際、使い魔に真っ向勝負で勝てたのはその三将軍しか歴史上にはいないらしいからな」
「すっご……本当に化け物だわ……でもフェアリーならあっさり勝てちゃうのかな?」
チラッとフェアリーを見るリズ。
それに気づいたフェアリーは面倒くさそうに答える。
「愚問です。私が人間ごときに負けるわけないでしょう」
「はっはっはっは! 姉ちゃんやっぱりカッケェなぁ! 三将軍相手に言い切るなんて」
「事実ですから」
★
それから船を後にしたフェアリーとリズは漁師たちにお礼を言って、ついにグランドクリフ王国への第一歩を踏み出した。
まさに王国は武闘大会の準備で賑わいを見せていた。
城壁の外には色とりどりの旗が風に揺れ、街中では職人たちが忙しなく武具を磨いたり、調整したりしている。
市場には様々な露店が並び、観光客や地元の人々が行き交う姿が見られる。
「凄い人の数ね。エタンセルとアクアヴェールも大きいと思ってたけど、やっぱり中央は桁が違うわね」
「リズ。土の神殿へ案内してくれますか?」
「ごめんフェアリー。アタシここの事は良く知らないのよ。まずは宿を取って、そこで土の神殿への行き方を教えてもらおう」
「わかりました。それで行きましょう」




