第42話【ロザリーヌの秘密】
リズとフェアリーはロザリーヌに雇われ、何とかアクアヴェールへ入国することができた。
門番との問答を終わらせたロザリーヌが戻って来て、馬に跨り手綱を引く。
リズとフェアリーは商品用の荷台に乗せられ、そのままゆっくりと門を潜った。
アクアヴェールは海に面した階段状の大都市だった。
都市の最上部には目的地である【水の神殿】がそびえ立っている。
この神殿はウンディーネという水の精霊が住まう場所だ。
ウンディーネが生み出す水は【清浄なる水】と呼ばれ、いつでも飲めるほどに綺麗な水として有名だ。
神殿から流れ出る【清浄なる水】はいくつもの滝となって都市全体に広がり落ちている。
滝は階段状の都市を縦横に流れ、住民たちの生活を潤すだけでなく、その景観も圧巻だった。
滝の周りには色とりどりの花々や緑豊かな植物が生い茂り、自然と調和した美しい風景が広がっている。
そんな街の大通りを馬の引く荷台で行く。
「ふぅ、一時はどうなるかと思いましたね……」
隣のフェアリーが言った。
リズは「うん。ごめんね」と一言謝ってから手綱を引くロザリーヌを見た。
「ロザリーヌさん。本当にありがとうございます。助かりました」
「いいのよ〜。わたしも売り子のバイトを募集する手間が省けたから」
嬉しそうに言うロザリーヌだが、彼女も相当な美女だ。
わざわざお金を出して売り子を雇わなくても、自分が前に出れば普通に売れそうだが。
「お一人で行商をやっておられるのですか?」
「ええ。女の一人旅は何かと危険が多くてね〜。あなたのような騎士が居てくれると助かるのよ〜。リズさんはイルセラ様の騎士かしら? その赤いマントは【第三大陸】の騎士たちが付けてる物だし」
「その通りです。最近イルセラ様の騎士になったばかりの新人ですが……」
「あらそうなの〜。若いのにしっかりしてるわね〜」
「ロザリーヌさんだってまだまだ若いじゃないですか」
リズが笑いながらそう言うと、ロザリーヌはもっと笑ってきた。
「あら〜ん。わたしってそんなに若く見える? 嬉しいわ〜」
……え?
なに?
今の含みのある言い方……
ロザリーヌさんって、もしかして結構なご年齢なの?
リズはフェアリーに視線をやったが、彼女はこの話題にまったく興味無さそうに街の景色を眺めている。
リズは話題の共有を諦めて視線をロザリーヌに戻して続けた。
「え……ロザリーヌさん……って」
「ふふふ、わたしこう見えてもう孫のいるお婆ちゃんなのよ〜」
「ええええええええええええええ!?」
「昔は自信あったんだけど、さすがにこの歳になると踊り子の服には抵抗があってね〜。いつもこうやって若い女の子を雇ってるのよ〜」
「え、ちょ、ちょっと待ってください! お孫さんがいるって……ロザリーヌさん何歳なんですか!?」
「秘密〜」
リズにウインクして見せるロザリーヌは、どう見ても二十代で可愛く、とても孫のいるお婆ちゃんには見えなかった。




