会いたかった
やっと、三ヶ月間の研修が終わった。
もう、早く帰って亜耶の笑顔を見てこの腕に抱き締めたい。
俺は、朝イチで着く飛行機に乗り、そのまま亜耶の通う学校まで出向いた。
今日は、始業式の筈だ。
確か、部活も無かったはず。
HRが終われば出てくるだろう。
理事長室に呼び出す事も出来るんだが、それは亜耶が嫌がるのがわかるから、そのまま門で待って、亜耶を驚かすのもいいだろう。
HRが終わったクラスから、次々と校舎から出て来る生徒たち。
その中には、彼女の姿は未だ無かった。
おかしいな?
何かあったのか?
中々出てこない彼女。
俺の周りには、生徒の人垣ができはじめる。
そんな中、彼女が泣きながら出てくるのが見えた。
えっ、なんで泣いてるんだよ。
俺の姫を泣かせたやつは誰だよ。
悶々と考えてると。
「は、遥さん…」
弱々しい声が聞こえてきた。
見れば、彼女が目の前に居て、驚いた顔で俺を見ていた。
少しだけ目許の赤い彼女。
「どうしたんだ?何で泣いてるんだ?」
そう問いただせば、ただ黙って首を横に振るだけで、何も言ってくれない。
何で、言ってくれないんだ?
「亜耶、話して欲しい。君の哀しみを取り除きたいんだ」
俺がそう言えば、亜耶はポロポロ涙を溢し。
「悠磨くんとお別れしたの。彼を傷つけてしまった自分が許せなくて…」
そう言って、俺に話してくれた。
「亜耶の気持ち、アイツはずっと前から知ってたんだよ。亜耶が、言い出せないことも。だから、亜耶が気にすること無い。アイツは、亜耶に笑ってて欲しいから、自分から悪役になってくれたんだ」
俺は、亜耶を優しく抱き締めた。
「亜耶。亜耶の胸の内に居る男は誰?正直に話して」
俺は、諭すように言う。
亜耶が、ゆっくりと顔をあげて、幾筋の涙を流しながら。
「今、私の中に居る人は、遥さんです。私…遥さんの事…好きです…」
顔を赤くして素直に答える彼女。
「そう。じゃあ、俺もちゃんと言うな」
俺は、亜耶の前で方膝を地面に着けて、亜耶の右手を取り。
「…鞠山亜耶さん。好きです。結婚を前提にお付き合いお願いします」
生徒が居る中で、薬指にそっと指輪を嵌めた。
どれだけの生徒が見ているかわからないが、それでもきちんとしたプロポーズが出来たと思う。
俺にとって、大切な姫だから、誰にも渡したくなかった。
「……っ。はい」
亜耶の小さな声で返事が聞けた。
やっと、俺の思いが形になったとホッとした。
俺は、立ち上がると今だ泣き続けてる亜耶の涙を拭う。
「亜耶。もう、泣き止めよ」
俺の言葉に。
「無理だよ。嬉しすぎて止まらないの」
って、本の少しだけ微笑んで見せる彼女が、また可愛くて誰にも見せたくないと思った。
俺、幸福者だよ。
アイツには、悪いけどでも俺は、彼女を手放せないんだ。
だって、俺の唯一の存在だから。
「亜耶、愛してる」
俺が耳元で囁けば。
「私も、愛してます」
って返ってきた。
俺は、愛しい彼女を強く抱き締めた。




