不安案件
今日は、校内レク。
何時ものように亜耶と待ち合わせて、学校に行くが、亜耶の様子が可笑しい。
「亜耶、大丈夫か?」
オレは、心配になって声をかけた。
何かあってからでは、遅いし。
でも。
「大丈夫」
笑顔で返してくるが、それがとてもギコチない。
また、無理するんじゃないかと心配になる。
「もし辛かったら、保健室に行く事。もしくは、透に言う事、わかった?」
オレは、強くそう言いはなったが。
「悠磨くんったら、心配性なんだから…」
言いながら苦笑してるけど、笑えてないから。
その顔、すごく痛々しいから…。
亜耶は、心配性だと言うが、好きな娘が辛そうにしてるのを心配しな奴は居ないと思う。亜耶以外の娘が辛そうにしてても、オレは気付かないと、思う。
亜耶が、何か言いたそうな顔をしてるが言い出せない言葉があるのは、オレも気が付いてる。
オレが、それを言えるわけがない。この関係が壊れてしまうことをわかってるから…。
学校に着くと教室には入らず、グランドに集まることになっていた。
オレは、亜耶と別れ、自分の班が集まってる(あらかじめ決められてる)場所に向かった。
「おはよう、渡辺」
そう声をかけてきたのは、亜耶のクラスメートの河合龍哉。
「おはよう、河合くん」
オレがそう返すと。
「なぁなぁ、堅いの嫌いだから、亜耶ちゃんが呼ぶように“悠磨”って呼んでいいか?もちろん俺の事は、龍哉でいいし」
軽いノリで言われれば、頷くしかない。
「今日は、宜しくな。悠磨」
「こちらこそ、宜しく龍哉」
そう返してた。
「ここって、11班でいいのかな?」
と聞かれて。
「あっ、はい、そうです」
龍哉が答える。
「えっと。僕は、舘石馨って言います。宜しくお願いします」
丁寧に挨拶されて、オレ等も各々名のった。
「じゃあ、僕が二つ上なんだね」
ってにっこり笑う。
目の前に居るこの人、少し幼さを残してて同じ歳にしか見えないんだけど…。
「馨くん。馨くんも11班なの?」
嬉しそうな顔をして、舘石先輩に抱き付く女性徒。
「はい、そうですよ。僕は、昨日の班振り分けのプリントで気付いてましたが、葉子さんまた、プリントちゃんと見てなかったのですね」
舘石先輩がそう言うと、呆れたような顔をして溜め息を付く。
見てると面白い、夫婦漫才みたいだ。
「ほら、葉子さん。二人に挨拶してください」
苦笑混じりで舘石先輩が言う。
彼女も、オレ達に気付き少し恥ずかしそうに。
「乾葉子と申します。学年は、1年で馨くん…舘石先輩の彼女です」
と挨拶した。
そんな彼女を愛しそうな目で見つめて、頭を撫でている舘石先輩。
この二人を羨ましく思ってしまう。
その間にも龍哉が自己紹介をする。オレも後に続いてした。
「なぁ、悠磨。お前、元気なくねぇ?」
龍哉が、心配気に聞いてきた。
「そんな表情に出てたか」
オレの言葉に龍哉が頷く。
「亜耶の事が、心配なんだよ。一緒に登校してきたんだが、顔色がよくなくてな。あいつ、他の人に頼らないところがあるから、気になるんだよ」
中学三年間で、思ったんだよなぁ。
誰の手も借りずに自分だけで片付けてしまう。少しは、頼って欲しいって思ってた。
「あぁ、そうだな。亜耶ちゃん、人に頼るの苦手そうだ。育った環境のせいじゃないか」
龍哉が、そう口にする。
オレは、こいつ、もしかして透と同類なのかと思った。
そこに残りの二人のメンバーが着て、舘石先輩がテントに報告しに行った。




