不戦敗
結局、亜耶の事が気になり、散々な結果となった。
「どうしたんだ、悠磨。調子良かったんじゃないのか?」
順一が、オレに声を掛けてきた。
グランドからの帰り道。
オレは、順一と帰路についていた。
亜耶にどう接したらいいかわからなくて、順一がオレに声を掛けてくれたから、一緒に帰ることになった(一様、亜耶には断ったが)。
順一の応援に来てた斎藤も先に帰ったみたいだ。
「あぁ、ちょっとな」
オレがそう言うと…。
「お前が落ち込んでるときって、大抵亜耶ちゃんの事だろ?あの後何があったか話せよ」
順一が、お前の事はお見通しだゾッて顔をして、オレを見る。
ハァ…、こいつには、敵わないか…。
「実は…」
って、さっきの事と時計の事を全て、順一に打ち上げた。
「そっか。そんな事が…。でも、まだ亜耶ちゃんと話をしていないんだろ?不安なのはわかるが、亜耶ちゃんの事信じて待ってろよ。亜耶ちゃんなら、ちゃんと話すだろ」
順一が真顔で言う。
確かに亜耶の性格なら、話すと思う。それが、何時かわからないが…。
「そうだな。それまでは、オレ亜耶の事信じるよ」
今、疑っても仕方ない。
「そのいきだ」
順一に背中を叩かれる。
「痛いって。手加減しろって」
顔を歪めて、抗議するオレを見て苦笑する。
「考えすぎるなよ。じゃあな」
順一と別れて、家に向かった。
その数日後。
今日からテスト期間に突入。
亜耶は、クラスの友達と勉強会。
オレは、一人校門を潜ろうとした。
「よっ!」
って、あの人が声を掛けてきた。
何で、オレに声をかけてくるんだ?
って言うか、メチャ目立ってるし…。
周りの事、気にしてないのか?
「亜耶なら居ませんよ」
オレが言うと。
「今日は、亜耶じゃなくて、君に用事」
真顔で言う。
オレに?
オレは、別にようなんて…。
「悪いけど、三ヶ月の間だけ亜耶の事頼むな」
唐突に切り出した。しかも期限ついてるし…。
「何で、オレなんですか?」
オレは、疑問に思って聞いた。
「ん?今は、お前が亜耶の彼だから?」
何で、疑問符が付いてるんだ。
それとも、大人の余裕ですか?
オレの顔に出てたのか。
「まぁ、帰ってきたら、正式に俺の婚約者になるけどな」
って、真顔で言う。
ハッ?
何を言って……。
「この研修から帰ってきたら、亜耶は正式な俺の婚約者だ。だから、お前に三ヶ月の間、虫除けになって欲しいんだ」
えっ…、嘘だろ…。
「その様子じゃ、まだ亜耶から聞いていないんだな。まぁ、そのうちわかるさ。俺の居ない間だけでもナイト役任せた」
それだけ言うと去ろうとする。
「ちょっと待ってください。何で、そんなにオレを信頼できるんですか?」
オレとこの人は、ライバルなはず。
何で、オレに託せるんだ?
「亜耶を好きな気持ちは、同じだろ?だったら、君は亜耶を傷つける筈無い。そう思うから、君に預けるんだろ」
この人は…、オレの出る幕無いじゃん。
オレじゃあ、敵うわけ無い。
「ちゃんと迎えに来ないとオレが貰いますよ」
オレは、その背に声をかける。
「わかってる」
片手を上げて、去って行く。
やっぱり、あの人に勝てる気がしない。
三か月きっかり、亜耶の事守らせていただきます。
って、心の中で誓った。




