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ヴァンパイアキング、コンビニでバイトする  作者: 山口三


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その後


 俺が大学を卒業して半年ほど経った頃、宏樹から由利香さんと結婚したと報告が来た。ごく身内だけの式で簡素に済ませたと言っていた。それとは別に友人知己を招いてのお祝いパーティーをやるから来ないかと招待された。


 宏樹が引っ越してから連絡は取り合っていたものの、社会人になって忙しくしていた俺は久しぶりに宏樹に会いにいく事にした。



「お、来たな、直巳!」


 ネクタイこそしていなかったが、パリッとしたスーツに身を包んだ宏樹はやっぱり見惚れるほどイケメンだった。隣には由利香さんが薄いピンクのワンピースを着て立っている。


「宏樹、由利香さん、この度はおめでとうございます」

「五十嵐君、来てくれてありがとう」


 由利香さんの笑顔はキラキラと輝いていて幸せなのがひしひしと伝わってくる。


「なあに畏まっちゃって~直巳のくせに~」


 そう言いながら俺の背中をバシバシ叩いたのはディア‥高田順子さんだ。今日はツインテールにはしてないがなんだか派手な格好をしてる。髪色なんかピンクだよ。どこでこんな服を見つけて来るんだか。


「痛ったいなぁもう。相変わらず俺には手厳しいんだから」

「それよりさ、あの人形はどうしたの?」


 ちょっと顔を近づけて、ヒソヒソと陰謀めいた口調で聞いてくる。


「ああ、あれはうちのリビングに飾ってあるよ」

「あれさ、燃やしちゃったらどうなるんだろ?」


「・・さすがに燃やすのは気が引けるよ」

「あれは奴の魂だからな。高田君は直巳を人殺しにはしたくないだろ?」


 ほんとだよ。あの不気味なブゥードゥー人形を預かってるだけでも落ち着かないのにさ。


「直巳は最近はどうしてるんだ? 親御さんはまだ中国か」

「だね。父さんは来年あたり帰国になるかもって言ってた。あ、最近さ、俺犬を飼い始めたんだよ」


 先月の初めころ、子犬が段ボール箱に入って家の前のゴミ捨て場に捨てられてたんだ。まだほんとに小さくてクンクン鳴いてて思わず家に連れ帰ったんだ。


「ちゃんと首輪もしてたんだぜ、名前付きの。それなのにゴミに捨てるなんてひどいよな」

「へえ~。なんて名前が付いてたの?」


「んっとね『スウちゃん』『ケルちゃん』『ベロちゃん』って言うんだ」


 子犬たちはすぐ俺に懐いてくれてすっごく可愛いんだ。俺はニンマリしながら答えた。なのに宏樹と高田さんは奇妙な表情で俺を見ている。


「お前‥それって」

「一応ちゃんと保健所に連絡して探している飼い主がいないか確認したぞ。その後は動物病院に連れて行ってワクチンやら・・」


「直巳、直巳。3匹の名前を並べ替えてみてよ」

「ん? べろすう・・」


「違うだろ。ケル・ベロ・ス‥う」

「あっ!!」


「まさか火を吹いたり人語をしゃべったりするんじゃ」


 まさかまさか! 彼らはいたって普通のワンコだよ。でもおかしな偶然ってあるもんだな。


「ま、俺たちの考えすぎだろ。じゃゆっくりして行ってくれよ。あっちのオードブルにはミートボールもあるぜ」


 宏樹はそう言って由利香さんの元へ戻って行った。それを聞いた高田さんは俺にこうも言った。


「オードブルの他にはお寿司もあるよ!」


 寿司! いや‥高田さんが作った訳じゃないだろうけどさ。でも高田さんが寿司っていうとなんか背筋がゾワッとするんだよ。



 パーティーは2時間ほどでお開きになった。俺も2次会に誘われたが丁重にお断りした。


「明日、るり子さんと買い物デートなんだ。ゴルフクラブを1本買いに行かないといけなくてさ」




 終わり。


 

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