表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウイニー王国のワガママ姫  作者: みすみ蓮華
2章 それぞれの事情
91/245

悩み悩んで今是昨非 2

 =====



 ぱちっと目が覚める。

 目の前にはお兄様とレイの心配そうな顔があった。

「レティ…気がついたかい?どこかまだ具合が悪いところはないかい?」

 今にも泣き出しそうなお兄様の手をギュッと握って「大丈夫」と小さく答える。


「私、どれくらい眠ってた?」

「倒れてそんなには経っていない…すまない。俺がやり過ぎた所為だよな…旅の疲れもあっただろうに配慮が足りなかった」

 レイは本当に申し訳なさそうに頭を下げてくる。

 こうしてレイに謝られるのは初めてかもしれない。

 なんだか気まずいわ。


「レイの所為じゃないわよ。ちょっと気が動転しただけで…今はもう大丈夫」

「レティ、何か悩みがあるならーー」

「お兄様、本当に大丈夫だから。少し眠ったお陰でかなりスッキリしてるの。本当に困ったことが出来たらちゃんと相談するから、そんなに心配しないで」


 私が遮るように笑顔で言うと、2人とももう何も言わなくなった。

 まだ心配そうな顔をしていたけど、もう少し休むからと言って2人を部屋から追い出した。


 2人が出て行ったあと、早速私は思考を巡らせる。


 ユニコーンはなんて言ってた?

 私の所にユニコーンが居る所為で運命が変わってしまって、でも、歪んだ夢を過去でも未来でも正しく導けるって…

 それが出来るのはユニコーンの主か私だけだ、と。


 まだ少し鈍っている頭で必死に考える。

 一つづつ整理しないと、忘れてしまいそうだわ。


 まず、ユニコーンが私の所にいるってどういうことだろう?

 私はなにか、ユニコーンに関する物を持っているって事?

 直接的にそばに居るとは思えない。なんかこう…具現化したような、そんな印象がある。

 じゃあそれは何かしら、何か………


「あっ!」


 声をあげて慌てて服のポケットから懐中時計を取り出す。

 裏をひっくり返すとそこにはーー


「…ユニコーン!」


 ユニコーンは"我が主"って言ってた。

 ユニコーンを指すのが懐中時計なら、主はテディって事になるわ。

 そう考えるとしっくりくる。

 この綺麗なユニコーンの細工…懐中時計に何か特別な力があるのかもしれない。

 ここにユニコーンが居るのはテディの意思で、それによって運命が変わったって言ってたのは、つまり懐中時計を私に渡してしまったから運命が変わったって事?

 責めるなって言ったのは、私が持ってる事で責任を感じると思ったからかしら…


 でも、全部説明がつく。

 時計と帽子を交換してから私は夜ぐっすり眠れるようになって、朝が苦手だった私が起きるのも快適な位だった。

 タイミング的にドンピシャだわ。


 後は過去にしろ未来にしろ、ユニコーンは私かテディが変えることが出来るって言ってた。

 でもどうすれば…?


「手詰まり、ね」

 それでも昨日まで見たいに沈んだ気持ちにはならなかった。

 変えられる。ならまだ間に合うって事だわ。

 方法を探さないと。



 =====



「おはよう」

「おはようございます。レティアーナ様」


 いつものように侍女に挨拶をする。

 あれから更に6日が経っていた。


 倒れた翌日は皆が心配して家に帰るように促すので説得しなおすのに苦労したけど、その翌日にはレイはお兄様、クロエ、ジゼルダ公を連れて王都に帰っていった。


 仕事があるのだから、私にばかり構っていられないのは当然の事ね。

 それでも滞在予定だった日数より長くダールに留まってくれていたみたいだ。

 帰りの見送りでも散々釘を刺された上に、皆心配そうな顔を伺わせていたのには苦笑するしかなかった。


 私はお父様からの返事を待つ間は、リヴェル侯やマリアン夫人とゆったり過ごす事になった。


 何時ものように朝食を終え侯爵が席から立ち上がると、ゴトリと音を立てて侯爵のポケットから何かが転げ落ちた。

 拾い上げると、それは赤銅色の懐中時計だった。表には岩山の透かし彫り、裏面には獅子の彫刻がされている。


(これ、色やデザインは違うけど、作りが凄く似ている!)

 マジマジと眺めていると侯爵がスッと手を差し伸べた。


「ああ、すまないね大事な物なんだ。ついうっかりたまにやってしまうんだよ」

 おずおずと、侯爵に懐中時計を返す。

「あの、その懐中時計を作った方って有名な方だったりするんですか?」

「いや、これは代々リヴェルに伝わるものでね。かなり古い時代からあるものだから誰が作ったか迄はわからないな」


 それなら…と、私はおもむろに胸ポケットからテディの懐中時計を取り出して見せる。

 多分侯爵様の時計とこの時計は同じもののはずだ。

 案の定、それを見た瞬間、侯爵が目を見開いて息を飲むのがわかった。


「これは…!」

「何か知っているのですか?知っていることがあるなら教えて欲しいです」

「…少し見せてもらっても宜しいか?」


 私がこくりと頷き侯爵に懐中時計を手渡すと侯爵は丹念に時計を観察し、裏を見てまた驚いた様子を見せた。


 うむむーと、唸りながら侯爵は私に時計を返す。

「レティアーナ嬢、これを一体何処で手に……いや、大体想像はつきますが、いやしかし、そこまで……」

 と侯爵は難しい顔で首を捻る。


「あの、やっぱり何か重要な物なのでしょうか?友達から、預かっている物なのですが…」

 なんとなくテディからとは言わずにおいた。

 侯爵はハッとして、神妙な面持ちでこくりと頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ