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ウイニー王国のワガママ姫  作者: みすみ蓮華
2章 それぞれの事情
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決意表明 4

 う…流石にレイは騙されなかった…

 お兄様はキョトンとしてるけど、レイはすっごい睨んでるわ。


 ああ、旅が終わったらどうしようかしら。

 まだ何も解決できてないのに。


 諦めて顔を上げて、真面目な顔で2人に言った。

「教えるのは良いんだけど、約束して貰えないかしら?」

「なんだ?」

「私が目的を達成するまでは旅を続けるのを許して欲しいのと、これから話す内容を聞いてもことを荒立てないで、ダニエルに関しては私に任せて欲しい。この2つよ。それが約束出来なければこれ以上は何も話さない」


 すっと背筋を伸ばして目を逸らさずに2人にいう。

 レイはジッと私を見つめ、一方お兄様は私を凝視していた。


「お前はまだ旅を続ける気なのか?ダメだダメだ!父上がどれほど心配していると思っているんだ。レイとの話をするんじゃ無かったと後悔までしているんだぞ?お前は何とも思わないのか?」


 そう言われちゃうと胸が痛むわ…

 私だってお父様に会いたいもの。


 ふと、脳裏にお父様の悲しそうな顔が浮かぶ。

 それだけで私は悲しくなってしまった。


「それは…その、本当にごめんなさい。でも、それでもやっぱり家にはまだ帰れないわ。だって結局まだ私は何も為せていないんですもの。こんな中途半端で帰れないわよ」


 ふいっとお兄様から顔を背けて俯ける。

 レイは依然膝の上で腕を組んで私をじーーっと観察している。


 暫くすると、重い空気を割るようにレイは口を開いた。

「お前がやりたい事っていうのはなんなんだ?友達を助けたいと言ってたな。後半獣族の問題か?詳しく話してみろ」


 パッとレイと視線を交わす。

 レイは真剣にこちらを見ている。

 頭ごなしにダメって言う気ではなさそうだ。


「私、色んな事を知りたいの。昔から勉強とか本とか好きだったでしょ?それでこの間はクロエと一緒にダールまで行ったわ。私は王都の近くにある麦畑の風景すら知らなかったのよ。語学も地学も帝王学も色々学んだのに、すぐそこにある物すら知らなかった。だから私は知りたいの。半獣族が苦しんでいるならその解決方法を知りたい。友達が困ってるなら助けたい。でも今の私じゃ何もできないわ。だって何も知らないんですもの。だから…」


 胸をぎゅっと抑えて深呼吸する。

 ドキンドキンと心臓の鼓動が規則的に聞こえてくる。


 意を決して、私はレイにまっすぐ言った。


「ベルンを巡って、その方法を探したい。まず初めにイスクリスで魔法を1から学ぼうと思ってる」


 言い終わってもお互い微動だにしなかった。

 しかし、お兄様は大きく嘆息して私に言った。


「レティが友達を助けたいって気持ちも、勉強したいって気持ちも判るよ?でもどれもレティがやらなきゃいけない事ではないよね?特に半獣族の問題はとても難しい問題だ。解決できるとは限らないんだよ?一体いつ家に帰ってくるつもりなんだい?」


 確かに半獣族の問題が容易ではない事はわかっている。

 もしかしたら、私の人生が終わるまでに解決は出来ないかもしれない。


「お兄様、私は全てが解決できないかも知れないとわかった上で言ってるんです。やらなきゃいけないとも思ってないです。私がやりたいんです。たとえ解決策が見つからなくても、何もしないまま終わるよりは全然良いんです。…家には、必ず帰ります。だから、待っていて貰えませんか?」


「レティ…」

 淋しそうな、悲しそうな何とも言えない顔で、お兄様が見つめてくる。


(ごめんなさいお兄様。心配かけてばかりだわ私…)


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