決意表明 2
=====
前回と同じように暫くすると城から迎えがやって来た。
メルとダニエルを置いて馬車に乗り込み、同じように城へ入る。
するとそこに待っていたのは、リヴェル侯爵,マリアン夫人以外に、見知った4人の人物が居た。
(う、嘘…何で居るの?!)
「おぉーーーーまあああぁぁぁーーーええぇぇ〜〜わああぁぁぁぁ!!!」
と言いながら、鬼の形相の金髪の青年が、カツカツカツとこちらに向かって近寄ってくる。
その青い瞳は怒りの炎がメラメラと燃え上がっている
いつもならすぐに方向転換をして逃げ出していただろう。
でも、今の私にそんな余裕は無かった。
「1ヶ月以上も音沙汰無しで!一体今まで何してたんだ!しかもベルンからダールに入ってくるってどういう事だ!ちゃんと説明して貰うぞ!」
「………」
レイの言葉にうまく反論できない。
顔は恐らく真っ青だろう。
「まぁまぁ、殿下。フラれて悲しいのは判りますが、それ位にして差し上げたら如何でしょう?」
「あのなぁっ!」
「ジゼルダ公…?」
レイの右後ろから顔を覗かせたのは、近衛兵隊長のロック・ジゼルダ公爵だ。
私達とは遠縁に当り、王位継承権はかなり後ろの方だけど、王の信頼も厚く私達が幼い頃は教育係もやっていた。
ジゼルダ公はお父様より少しだけ若い。
金髪はそろそろ白みが増してきている。
公の姿を見て少しだけ私はホッとする。
(偶然よ。だって、あの夢にはジゼルダ公は出てこないもの)
「お久しぶりですね。レティアーナ様。お元気そう……ではなさそうですが?まぁ、無事で何よりです」
ジゼルダ公は少しだけ片眉を上げたが、すぐにニッコリと挨拶してくれた。
公の言葉に慌てて左後方から顔を出したのはお兄様だった。
「元気じゃないだって?!ホントだ顔色が悪い!熱はないか?!ちゃんと食べてるのか?!殿下、リヴェル侯!申し訳ないですが、レティアーナをベッドに…」
「お兄様、…ワタクシは大丈夫ですから。チョット長旅で疲れているだけですわ」
更にお兄様の後ろから呆れ顔で出てきたのはクロエだった。
「ビセット、お前は私事になると冷静さを無くしすぎだ。もう少し精神面で精進しろ」
「う、申し訳ないです」
クロエはお兄様を叱った後、クルリとこちらを見て私に挨拶をした。
「姫、お久しぶりです。本当に顔色が優れないみたいですね。姫は無理をなさるところがおありですから……出て行ったと聞いて本当に心配したのですよ?あまり心配を掛けないで下さい。私も姫の兄君も仕事に身が入りませんから」
「殿下もな」
「おいっ!」
クロエの言葉にジゼルダ公が被せるように言うと、クロエはレイの反応を見て少しだけ苦笑した。
「私達も心配の数に入れて頂きたいですな。新聞で記事を見た時はまさかと思ったが、いや、本当に驚きましたぞ」
「ええ、ええ、レティアーナ様が野盗にでも襲われていたらどうしましょうかと思いましたわ」
ジゼルダ公の横からリヴェル侯爵夫妻が顔を出した。
皆の言葉に何とか頭を回転させる。
思考は多分追いついていない。
「あ、の…心配かけてごめんなさい。手紙は書こうと思ってたんだけど、その隙が…じゃなくって、暇がなくて…。あ、クロエ、バンダナありがとう。後、侯爵様、また突然来てしまってごめんなさい」
震えそうになる腕を必至で隠して答え切る。
私のあまりの顔色の悪さといつもと違う様子に流石にレイも怪訝な表情を向けた。
「お前、本当に顔色悪いな。長旅の疲れって顔じゃないぞ。先に休むか?」
「ううん。大丈夫。…ちゃんと説明するから」
「そう、か?」と眉を顰めたままレイは答える。
皆も心配して私を見ているのが判ったけど、私は最悪の結論に抵抗するのに必死だった。




