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ウイニー王国のワガママ姫  作者: みすみ蓮華
2章 それぞれの事情
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ベルンで見る夢 1

 =====



 船を降りると、ぐらりと体が傾くような感覚に襲われる。

 肩掛け鞄をギュッと握りしめ、地面をしっかり踏みしめる。

 後ろを振り返るとメルも青い顔でフラフラと船から降りてきた。


 ダールから南西に位置するケザスは、ベルン連邦の中でも1番の貿易都市で、連邦にある国々から様々な物を仕入れ、更にそれをウイニーや他の国からやってくる商人・観光客に売る事で国庫を得ている。

 ベルンの商品を買うならケザスで探せば、まず間違いなく手に入ると言われるほどだ。

 そして、ベルン連邦でウイニー語とリエン語が通じるのはケザスだけだ。


「メル!どこかお店に入りましょう!あぁ、昨日のドレスも売らないと!建物の中が気になるわ!」

 喜々としてメルに話しかける。


 ケザスの建物はウイニーにあるどの建物にも似ていなかった。

 屋根は丸く、ドームのような形をしていて、とてもカラフルなパステルカラーの可愛いお家が立ち並んでいた。

 市民の衣装も、薄いレースのような柔らかな生地の軽装が目立った。

 ウイニーも知らないことで溢れていたけど、ここはもっと新しい発見がありそうだ。


 メルは昨日のドレスや燕尾服の入った大きなケースを抱えて、苦笑しながら私に言った。

「お嬢様、ドレスを売るのは賛成ですが、両替も忘れないようにしないと銀行閉まっちゃいますよ」

 メルの言葉で自分が浮かれていた事に気がつき頬を染める。


 この国の通過はウイニーのものと異なるコインだ。

 それがどんなコインかは流石に私も知らない。

 コインを集めるのが好きな私としては1番楽しみかもしれない。


「ごめんなさいメル。でも、とりあえずその大荷物なんとかしましょう?ついでにお店で銀行の場所を聞けばいいわ」

 私がそう言うと、メルもにこっと微笑んだ。


「おっし!じゃあ適当に店入ろうか!あの店なんてどうだ?雑貨屋っぽいからその荷物もちゃちゃっと売れるだろ?」

 ダニエルの一言で、今までの浮き足立つ気持ちがスッと何処かへ去ってしまった。


 私はニコッと笑って、ダニエルを見上げる。

「そうね、じゃあ、まずあの店で話を聞きましょうか。ダニエル。物騒だと困るから、貴方が先導しなさい」

「おう!任せろ。旅には慣れてるからな。怪しい奴が居ないかちゃんと見張ってやる」

 そう言うとダニエルは私の手を引いて、雑貨屋に移動する。


 雑貨屋と思われる店にはショーウィンドウにカラフルなスカーフが沢山かけられていて、まるで虹色のカーテンが掛かっているようだった。


 雑貨屋の扉に手をかけてダニエルが私の手を引いて中に入ろうとすると、私は「待って!」と立ち止まった。


「ん?どした?」

「店がちゃんとした店か調べてきてよ。下手に入って如何わしい店だったら、私、お父様に怒られてしまうわ」

 さも怖いと言わんばかりに、世間知らずなお嬢様を演じてみる。


 ダニエルは疑うこともなく、

「おう!良いぞ。ちょっと待ってろ。聞いてきてやっから」

 と、店の中に入って行った。


 ダニエルが店員に手を振りながら近寄って行くのが、ショーウィンドウの外から見えたその瞬間。


「メル!走るわよ!」

「えっ!?」


 と言って、私は一目散に走ってその場を立ち去る。

 するとメルも慌てて大きな荷物を抱えながら私を追いかける。

 適当な場所で角を曲がり、暗がりな場所を見つけると、近くの物陰に身を潜めた。


「お、おじょ、さ…」

「シッ!」


 とメルの口を塞ぐ。

 暫くすると、慌ててダニエルが表通りを走って通り過ぎるのが見えた。


 ふぅ…

 ダニエルが単純で良かった…


「行っちゃいました、ね?」

 と、メルはおそるおそる口を開く。

「巻けたのはいいけどこの街がどんな街か知らないし、お金も無いのと同じだからとにかくそのドレスだけでも売ってしまいましょう」


 私がそう言うと、メルは神妙に頷いた。

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