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ワガママ姫の正義論 6

 =====



 食事と片付けを終えると、

 テディはリュートを取り出し、ポロンポロンと弾き始めた。

 焚き火にとび色の髪が照らされて、少し幻想的な雰囲気を出している。


「テディってなんでも出来るんだね。戦いも強いし…どれくらい修行したらそんなに強くなれるの?私も強くなれる?」

 リュートを引きつつも「はて…?」とテディは答える。


「僕の場合は、わりと特殊な環境で育ったので、修行というより必要に迫られて…が正しいかと。そうですね、だいたい5年程?過酷な環境下に居ました」

 5年?!5年って子供の時からって事!?


「あの、テディって、今幾つなの?」

「歳ですか?18です」

 ええっ?!っと思わず声を上げる。レイの一つ下…全然見えない。


「ごめんなさい。同じくらいの歳かと思ってた…でも、それでも13歳位から戦ってたって事だよね?凄いなぁ…」


 某然として私が言うと、

「そんな事ないですよ」

 と少し顔を赤らめてテディが答えた。


「私はむしろ、もっと歳が上なのかと思っていました」

 とクロエは言った。


「そんなことを言われたのは初めてですね。大体皆さん、僕の事を子供だと思われるので」

 一瞬手を止めて、驚いた顔をしたテディだったけど、

 すぐにまたリュートを弾き始める。


「見た目は当てになりませんから…」

 とクロエが言うと、

 確かに。とテディは目を伏せながら笑顔で答えた。


「ちなみに失礼ですが、お2人はお幾つなんですか?」

 テディがそう聞くと、

「25です」とクロエは答えた。

 大人っぽいと思ってたけど、大人だぁ〜と私は感心する。

 クロエに続くように私も答える。


「私は16歳だよ。この間デビュタント済ませたばかり」

 と私が言うと、クロエもテディも「えっ?!」と硬直する。

 テディは演奏も完全に止まってしまった。


「何、その反応?」

 と私は少しむっとする。


「いえ………お若い、ですね…」

 とクロエは目を逸らし、テディはと言うと、

「………可愛らしいので、てっきり…」

 と手のひらで口を覆った。


 その2人の反応に、私はますます頬を膨らませ腕を組み、

 ぷいっと2人に背を向けた。


「ふん…だ!どうせ私はチビで魅力なんてないもん!」


 2人は顔を見合わせ、困ったように肩を竦めると、

「レティは十分魅力的ですよ」とか「まだわかりませんから」とか

 一生懸命取り繕うので、

 私はますます虚しくなって、「もう寝る!」と一言だけ言うと、

 2人を置いてテントの中に潜り込んだ。




 =====




 テントに入り、1人横になると、天幕をぼーっと見ながら今までの事を振り返る。

 家を飛び出してもう3日が経った。

 たった3日だというのに、随分長く旅をしている様な気がしてくる。


 青々とした麦畑に農民の生活、宿での食事に、王都とは違うフェンスの風景。

 今日は初めて盗賊にも会った。

 モンスターも出てきて初めて怖いと恐怖も感じたけど、

 不思議とクロエとテディが何とかしてくれるだろうと、

 何処か安心していた自分に気がつき、なんだか少し可笑しくなった。


 テディなんて今日初対面なのに。

 まるでずっと一緒に旅をしていたかのように、そこにいて当然みたいですごく変だ。

 クロエに会って、アルダと再会して、テディに会って、盗賊に襲われて…


 ……それから?


 ーー家を離れた不安よりも、旅の終わりに恐怖を感じる自分が居た。

 もう後2日か3日でダールに到着する。

 侯爵様にお会いして、テディと、クロエと別れて………全て、が終わるんだ。


 考えたくない…

 と私は目を瞑り、左腕で顔を覆う。

「帰りたくない…」

 まどろみの中で、神に救いを求める様に、私は呟いた。

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