表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/245

ワガママ姫の正義論 2

 =====



 今日のお昼は、商店街で買ったサンドウィッチだった。

 硬めのライ麦パンに、目玉焼きとベーコン、レタスとチーズが挟まっている。


「美味しい」ともぐもぐ口いっぱいに頬張っていると、

 クロエがクスクスと笑い出した。


「あ…ごめんなさい。はしたないよね」

 と私は顔を赤くする。


「いえ、姫はいつも幸せそうにお食事をなさるので、可愛らしいなと思いまして」

 確かに。とテディもにこにこ頷く。


「だっ…って、おいしいんだもん」


 何と無く決まりが悪くなって、顔を俯ける。

 今度は少しづつ、ちびちびと口に運ぶことにした。

 居心地が悪いので話題を振ってみる。


「そういえばクロエ、私に聞きたいことって、もういいの?」

 昨日あれから、結局街に着いても、演奏直後にあんな事があったので、

 すっかり忘れていたのだった。


「ええっと…」とクロエはチラッとテディを見た。

 テディはそれに気づき、


「あ、聞かれたくないことでしたら、席を外しましょうか?」

 と立ち上がった。


「ん。いいよ別に。テディはもうお友達だし」

 いいんですか?とテディは首を傾げ、またその場に座り込んだ。

 クロエも少し戸惑っているけど、おそるおそる口を開いた。


「ええと…これは、私の興味本位でしかないのですが…」

 なんとなく、言いづらそうにクロエは目を逸らす。


「うん?」

「姫が殿下を振ったという噂は…その、本当なのでしょうか?」

「え?」

 っと言ったのはテディで、私はというと、

「んぐっ?!」

 と口に含んでいたパンを、喉に詰まらせてしまった。


「げっほげほ!な、なんでそんな事聞くの?」

 涙目になりながら、お茶でパンを流すと、咳きをしつつ、クロエに問い返す。


「すみません。騎士にあるまじきとは、判っているのですが…ただ、初めてお会いした時、殿下と普通にお話しされていたので、噂は本当なのだろうか?と純粋に疑問に思いまして」

 違う違う!と手を思い切り左右に降ってみせる。


「話すと長くなるから端折はしょるけど、まず初めに、レ……殿下との婚約の噂がどっかから出てきて、この間の舞踏会で、確証じみた噂が拍車をかけてたから、振ったように仕向けただけの話よ。ちょっと、やり過ぎたかなとは、思うけど…元々そういう関係ではないの!」


 はぁ…?とクロエは生返事をする。

 うっ…なんか信じてなさげな…

 テディはなんだか、微妙な顔をしているし。


「でも、姫と殿下は仲が宜しいんですよね?」

 とクロエの眉間にシワがよる。頭には絶対クエスチョンマークが浮かんでる筈だ。


「良いか悪いかで言ったら…良い…のかしら?喧嘩ばっかりしているけれど。でも本当にそういうのじゃなくって、兄みたいな存在に近いと思うわ。小さい頃から机を並べて、悪戯して、喧嘩して、叱られて……そういう風に殿下を見ることは無理よ」

 と私は言い放つ。


「それにね、私はお父様やお兄様みたいに、自分で自分の相手を見つけたいもの。噂に流されるなんて御免だわ」

 なるほど。とクロエはようやく納得してくれたようだった。


 一方、テディは難しい顔をしていた。

「テディ?どうかしたの?」

 常にニコニコなのに。

 さっきもだけど、何か深く考え込む癖があるのかな?


「ええと…その、殿下自身は、レティの事をどう思ってるのでしょう?」

 んん?なんでレイ?


 今度は私の頭にクエスチョンマークが浮かび上がる。

 首を傾げてテディを見る。


「いえ、噂の最初の時点で否定しなかったのでしたら、満更でも無かったのかなぁと、思ったんですが」

 ああ…と納得する。


「んーどうだろう?それはないんじゃないかなぁ?殿下は恋愛に興味ない人だし、結婚相手は決められても文句なさそうな所があるし。あー…それに私はトラブルばっかり持ってくるから、出来れば御免蒙りたいって言ってたな」


 思い出してちょっとムッとする。

 するとクロエがぶっと噴き出し、「確かに」と小さな声で呟いた。


「クロエ減給」

 むぅっと、クロエを睨みつける。


「生活できなくなるので勘弁してください」

 と悪びれもせず、クスクスとクロエは笑いながら言った。


 そのやりとりを見ていたテディは、

 いつの間にかまたにこにことこちらを見て微笑んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ