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黄金の瞳 2【フィオ編】

 =====



 目を覚ますとまだ夜明けまでに少し早い時間だった。

 最近はなかなか寝付けずにかなり疲れが溜まっていたのだが、不思議と疲れは感じず晴れやかな位スッキリとしていた。


 テントを出ると火の番をしている兵士と目が合い敬礼をされる。

「フィオディール様随分とお早いですね。やはり最終決戦ということで緊張なさっているのですか?」

「緊張?そうだな、どちらかと言うと興奮に近いな。この手で漸く決着をつけられると思うと胸が高鳴る。朝など待たずに今すぐにでもあの首を落としに行きたいくらいだ」

「フィオディール様?」


 ふふっと笑みを漏らすと、兵士は何故か怪訝そうな顔で俺を見る。

 主に対してそのような目を向けるとはなんと不快な事か。


「お前、なんでそんな顔をする。もしやお前エルネストを倒すのに躊躇いでもあるのか?」

「い、いえっ!まさか!ただ、フィオディール様のご様子が普段とまるで違う様な…」

「何?」


 ギラリと睨みつけると兵士はビクリと身を縮こませ、

「何でもありません!気のせいでした!!」

 と、頭を下げて何処かへと消えて行った。


 全くおかしな事を言う。宴で飲み過ぎたに違いない。

 目を離した隙に他の兵も使い者にならない何て事になっていなければいいが…


 日の出までの時間はそのまま焚き火の前でほうじ茶を啜り時間を潰した。

 日が昇ればチラホラと兵達が起き出し朝食の準備に取り掛かる。

 暫くするとウルフや兄上も起床し自分の兵達に声をかけ朝食を取っていた。

 俺が朝食を終えた頃にゲイリーからの報告が届く。

 彼方の準備も万全で予定通り9時に突撃すると確認が取れた。


「兄上、ウルフ!」

 俺は作戦開始時刻を告げるため朝食を終えたばかりの2人に声を掛ける。

「どうした?フィオ。ゲイリーからの報告……フィオ?」

(マスター)?えっ?ちょっ…どうしたんスかその目!?」


 2人は俺の顔を見るなり驚いたような表情をこちらに向けてくる。

 2人の態度を怪訝に思い眉間にシワを寄せて2人を睨み付ける。


「目?目なんてどうでもいいだろう。ゲイリーから予定通り9時に鯨波への攻撃を仕掛けると連絡が入った。一刻程まだ時間はあるが、ここからだと到着には最低でも半刻は掛かるだろう。急ぎ出立の準備をさせろ」

「いや、お前何があった?何故目の色が金に変わってるんだ。言葉遣いも妙だぞ…」

 困惑気味に兄上は俺に問いかける。

 唐突に何を言っているんだこの兄は。俺の何が変だと言うんだ。


 辺りを見渡せば、他の兵も何処か困惑した様子で俺を見ている。

 一体なんだってんだイライラする!


「俺は至っていつも通りだ!下らない事で足を引っ張るな!とっとと支度をしろっ!時間は刻一刻と迫ってるんだぞ!?」


 俺が声を荒げると場の空気がピンと張り詰め静寂が漂う。

 ウルフと兄上は難しい顔で顔を見合わせると、兄上が俺に謝罪してきた。


「そうだな…俺が悪かった。急いで支度をさせる。フィオ、出発前にゲイリーに手紙を送りたいんだが後で送ってもらえないだろうか?」

「ゲイリーに?何故だ」

「いや、個人的な用事だ。頼めないだろうか?」


 兄上がゲイリーに?一体何の用があるというんだ。

 …まぁ後でゲイリーに聞けば済む話か。


「いいだろう。おいお前ら急げ!四半刻後には出るぞ!」

 仕度を急がせ兵は慌ただしく走り回る。

 村付近の山間から日が完全に顔を覗かせる頃には全兵の支度は整っていた。


「雪狐騎士団全員揃ったぞ」

「俺んとこも全員揃った」

 兄上とウルフの報告を受け俺は頷く。茶毛の馬に跨ると村中に響き渡る声で命を下した。

「これより王都へ向けて出立する!」


 沢山の馬と白兵の足音が地面を揺らす。

 雲ひとつない青い空の奥には石造りの見慣れた城が昔から変わらない佇まいでどっしりと俺たちの到着を待ち構えていた。

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